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まいむのFQ二次創作

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真実の王女番外編~はなればなれ~(2)

キスキン国王女ミモザを王家の塔へ連れて行くために、ミモザに扮装したパステルと別行動をすることになったトラップとパーティメンバー。
果たして、無事にパステルと合流できるのか・・・?
※トラップ視点です。





 まず、ミモザはひとりでブーツが履けなかった。
椅子に座り、さあ、とでも言いたげな目つきで、おれたちに片足を突き出したのだ。
「お、おいおい・・・そりゃ、なんの冗談だ!?」
思わずおれが、ミモザの足を指差し、問いただす。
「冗談?わたくしは何も言ってはおらぬが・・・?」
このお姫さん・・・つまりこれは、ブーツを履かせろと、そういう意味か?
あまりのことにぐっと詰まっている隙に、クレイがおれを押しのけた。
「ブーツですね?」
「ああ」
クレイがさっとひざまずく。
おいおいおい、ちょっと待て!
「お姫さん、そりゃねーだろ。ブーツぐらい、自分で履けよ。おめえはこれから、おれらのパーティにまぎれて、追っ手の目をくらませなきゃなんねーんだぞ?ブーツもひとりで履けねぇような女、ソッコーでばれちまわぁ」
額に青筋たててくってかかるおれを、ミモザはもの珍しそうに見ると、うなずいた。
「それはそうだな。すると・・・どうすればいいんだ?」
いやだからその・・・ブーツの履き方を教えるんですかい。
おれはがっくりと肩を落とす。
その横で、ルーミィがおれとミモザを見比べながら、言った。
「みもじゃ、るーみぃがおしえてあげう!」
とはいえ、ルーミィが教えられるわけもなく、結局クレイが教えたのだが・・・
ブーツを履くというそれだけのことに、これだけ時間がかかるとは!
ちなみに、リュックサックをひとりで背負えなかったのは、言うまでもない。
 
 
が、問題は、もっとやっかいなところにあった。
 
乗合馬車を降り、その夜泊まった宿での出来事だった。
さすがに王女らしい優雅な手つきでの食事を終えて、おれらと一緒に食後の茶を飲んでいたミモザが言った。
「そろそろ、湯を使わせてもらおうと思うのだが・・・」
「ああ、そうですね。さすがにお疲れでしょう、宿の主人に浴場の場所を聞いてきましょうか」
どうしても丁寧な言葉しか使えないクレイが応じる。
おい、他の客がいねえからいいけどよ、明らかにパーティの仲間に接する態度じゃねえぞ、それ。
すると、ミモザは申し訳なさそうに、こう言った。
「その・・・わたくしは、ひとりで湯浴みをしたことがないんだ・・・」
なんだと??
これには、男連中全員言葉を失って顔を見合わせる。
当然だ、おれらにどうしろっていうんだ!!
クレイは顔を赤らめて口を開いたり閉じたり。キットンは「そりゃそうですねえ」と言ってぐふぐふ笑っている。ノルはというと、ちっこい目を見開いて、困った顔。
 おれだってできるか!そんなこと。
色っぽいセクシーねえちゃんならともかく、パステルにそっくりな王女だぞ。
おれは椅子を蹴倒して立ち上がった。
「おめぇは、今、パステルなんだ。パステルが、んなこと言ったらおれは即座にはり倒す。だぁら、おめぇもはり倒すつもりだ。それがいやなら、自分のことは自分でしろ!」
おれの剣幕に、ミモザは縮こまった。
朝のブーツの一件で、自分のことは自分でしなくてはならないと、わかってはいたんだろう。
パステルそっくりに、顔を泣きそうにゆがめ、しゅんとうつむいた。
「そうだよな・・・すまない・・・国を出てからも、アルメシアンが手伝ってくれていたし・・・その・・・服も、ひとりで脱いだことがなくて・・・」
なんでも、アルメシアンとはミモザが生まれたときからの付き合いらしい。
城にいたときは侍女が手伝っていたのを、ここしばらくはアルメシアンがやってたとか。
年頃の女が、それでいいのかよ?と思いつつも、それ以上何も言えず、でかいため息をひとつついて椅子にドカッと腰を下ろした。
普段だったら、おれに「王女様に失礼だろ!」とか言うクレイも、困惑した顔で黙ったままだ。
「ル、ルーミィ・・・」
「んあ?」
ノルが、食後のフルーツをほおばっているルーミィに、恐る恐る声を掛けた。
口の周りをベタベタにしたルーミィが、きょとんとした顔を上げる。
「ルーミィ、ミモザ王女と、一緒にお風呂に入れるか?」
「いいおう!」
ハッと顔をあげたクレイが、ノルに付け足す。
「例えば、その、着替えとか、お手伝いもしてあげられるかな?」
「してあげう!」
ルーミィは、椅子の上に立ち上がって、胸(腹?)を張った。
一応こいつは女だが・・・こんなちび助になにができるんだ・・・?
「るーみぃ、みもじゃのおてつだいできうおう!みもじゃはおひめしゃまだかあ、おてつだいさんがいつもやってくえうんだお?るーみぃおてつだいさんするおう!」
なるほど、パステルが普段読んでやってる絵本かなにかに、そういう話が出てくるんだろう。
「みなしゃん、だいじょうぶデシ。最近、ルーミィしゃんはひとりでお着替えできるようになったデシから。ミモザおねえしゃんのお手伝いも、きっとできるデシ」
黙っておれたちのやりとりを聞いていたシロが、太鼓判を押す。
「そっか、シロ、おめえもついてってやれよ。おめえは男だけどまだコドモだしドラゴンだし、普段パステルに風呂入れてもらってんだから、平気だろ」
おれは言ってから気がついた。
ルーミィだけじゃなく、シロもあいつと一緒に風呂入ってんだ!
「はいデシ!」
「すまない、よろしく頼む」
ますます申し訳なさそうなミモザの手を引くと、ルーミィはぽてぽてとダイニングを出て行った。
残されたおれたちは、そろってふかーいふかーいため息をついたのだった・・・
 
 
夜更け過ぎ、いつものように剣の手入れに余念のないクレイと、ベッドに寝そべりうとうととしていたおれの部屋に、ルーミィがやってきた。
ことんことん、という小さなノックの音。
クレイがドアを開けてやると、毛布とシロを引きずった(いや、シロは自分で歩いていたが、まるでヌイグルミを引きずっているようだった)ルーミィが寝ぼけまなこでぽつんと立っていた。
「くりぇえ・・・ぱぁーるいないとねれないお」
母親に置いてきぼりにされたこどもそのものだ。
追っ手の目をくらますため、ルーミィとシロはミモザと同じ部屋に割り振られていたのだが・・・
風呂も一緒に入り、ミモザに懐いているように見えたルーミィも、さすがに夜は寂しくなったらしい。
ちょっくらからかって、元気づけてやっか?
おれは、ベッドにあぐらをかいて、膝をぽんぽんと叩いて言った。
「んじゃちび助、おれと一緒に寝るか?」
クレイが、「珍しい!!」と言わんばかりの驚いた顔でおれを見る。
冗談のつもりで言ったのだが、ルーミィはベッドによじのぼると、おれの膝にくっついて身体を丸めた。
シロも、同じように丸くなる。
まさか、クレイならともかく、おれの膝で寝るとは・・・
あったけぇ・・・
その温もりに戸惑いながらも、おれはルーミィとシロに毛布をかけてやった。
いつもはオモチャにしか思えないちび助が、不思議と、愛しく思えてくる。
クレイが、ベッドの脇にやってくると、ルーミィのふわふわした髪を撫でた。
「やっぱり、パステルがいないと、寂しいな」
「・・・ああ」
そのクレイの静かな物言いに、おれは、いつになく素直な気分になって、肯いた。
 
 
それでもなんとか、乗合馬車での旅は続いた。
おれたちのほうには追っ手もかからず、マリーナの作戦はどうやら成功したようだ。
今夜のうちには、待ち合わせをしている宿に着く。
あいつ、ちゃんと着いてんだろうな・・・?
馬車の窓側に座り、姿勢を正したまま外の流れる景色を眺めているミモザの横顔をちらりと見る。
こうして見てっと、ぜんぜん違う。
当たりめーだ、パステルはパステルだ。
あいつだったら、こんな状況で背筋伸ばしたまま座ってられるわけがねえ。
幸せそーによだれたらして居眠りして、そんでおれにどつかれて起きるんだよ。
「もー、いきなりなによ、トラップ!」ってな。
寂しいっつーのかな、こういうの。
おれは、乗合馬車の中を見回した。
ノルは体がでかいんで、いつもどおり御者台に座らせてもらってる。
クレイは、ルーミィとシロと3人でしりとりだ。
キットンは、指をなめなめモンスターポケットミニ図鑑をめくっている。
そこに、パステルだけがいねえっつうのは、やっぱり、違和感がある。
ミモザは、おれがぼんやりと眺めているのに気がついたらしく、こっちを向いて微笑んだ。
「迷惑をかけたな、いろいろと」
あ?
「しかし、パーティというのはいいものだな。わたくしはずっとひとりで育ったようなものだ。そなたたちのような仲間というものが、うらやましい」
おれは照れくさくなって、視線をそらす。
「ったく、そんないいもんじゃねーよ」
「いや、パステルにも、悪いことをした。しかしおかげで、フロリサンに無事着けそうだ」
そこまで言ってミモザは、おれから視線をそらすように再び窓の外に目をやった。
「パステル・・・」
「あいつらなら、心配ねえって。レベルは低くて頼りなくても、一応冒険者なんだからよ。・・・ま、ギアも、いるしな」
「そうか、そうだな」
そう言って再び微笑むミモザの顔は、やっぱりパステルとは似ても似つかなかった。
 
 
アルメシアンの知り合いがやっているフロリサンという宿は、街道沿いにあった。
おかげで、乗合馬車を降りてすぐ目の前という好立地。
夜半近かったが、宿にはまだ煌々と明かりがついていた。
おれたちが順番に馬車を降りていると(なんせ大所帯だ)、ドアを派手に開けて、パステルが飛び出してきた。
「みんな!!」
「ぱぁーるぅ!!」
ノルに抱かれてうつらうつらしていたはずのルーミィが馬車から転がり出て行く。
そりゃーそうだろうな、なんだかんだ1週間も離れ離れだったんだ。
ふたりは抱き合ってくるくると回っている。
だよな、やっぱこいつでなきゃ。
1週間の間に自分のことをほとんどひとりでできるようになったミモザも、別に悪い女じゃねえ。
まぁ、れっきとしたお姫さんなわけだから、おれたちのパーティにずっといるはずはねえんだけどもさ。
こいつじゃなきゃ、しっくりこねえよな、やっぱり。
おれたちと無事に合流できて安心したのか、いつになく嬉しそうなパステルを見ながら、おれは思った。
とりあえず、こいつの落ち込んだ顔は見たくねえ。
おれに怯えるようなパステルは、見たくねえよな。
ここんとこ、イライラして、キッツイことばっか言ってたからな・・・
いつもノンキでバカなこいつが、くら~い顔して考え込んでたのは、たぶんおれのせいだからな。
「ほれほれ、積もる話は中でしようぜ。おれはもう腹が減ったし、体が冷えて倒れそうだ!」
ルーミィを抱えたパステルがおれを見る。
たった1週間離れてただけなのに、懐かしいもんだな。
心の中で、ニヤリとする。
しばらくは、思う存分からかって遊んでやろ。
だから今だけ、ちょびっと、優し~いトラップ様だ!
おれは、パステルの肩に手をかけ、囁いた。
「ごくろうさん」
 
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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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