まいむのFQ二次創作
- 著・深沢美潮の「フォーチュンクエスト」シリーズの二次創作を公開しています。 トラップ×パステルOnlyで、全くの健全小説です。
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トキメキノコ事件
行方不明だったマリーナを無事に見つけ出し、シルバーリーブの家に戻ったパステルたち。
平和なひと時を楽しんでいたパステルだったが、ひょんなことからキットンの実験に協力することに・・・?
平和なひと時を楽しんでいたパステルだったが、ひょんなことからキットンの実験に協力することに・・・?
「しかし、マリーナもよかったですね」
シルバーリーブの、わたしたちの家。
穏やかな日差しが差し込む、ある日のこと。
キットンが、ぽつりと言った。
「え?なにが?」
横でクッションカバーを縫っていたわたしが顔を上げて聞くと、キットンも干した薬草の仕分けをしていた手を止めた。
「いや、クレイのことですよ」
はい?
「彼女のことです、サラのほうがクレイにふさわしいとかなんとか、思ってたんじゃないでしょうか。婚約も解消されたことだし、しかもマリーナも名家のお嬢様だったことがわかったわけですからね」
「キ、キ、キ、キットン、なんで、そんなこと!!」
わたしはびっくりして、思わずキットンの首を絞めた。
だって、マリーナがじっと胸に秘めてる想いを、どうしてキットンが知ってるのよ!
「ぐ、ぐるしい・・・なんでって、見てたらわかるじゃないですか!鈍感なパステルやクレイとは違って、わたしはですねぇ・・・」
う、うそ~・・・
わたしはキットンから手を離し、がっくりとうなだれた。
そうなんだ、クレイが鈍感なのはわかっていたにしても、わたしも決して鋭いほうじゃない。
でもキットンって、マイペースなようで、こうやって人のことよく見てるんだよね。
クレイみたいに、思いやって見守る、じゃなくて、観察してるかのような・・・
まぁ、それはそれで非常に納得のいくところなんだけど。
先日のガトレアパレスのパメラクイーンの一件で、マリーナは無事に両親と再会し、彼女がブセナ王朝の墓所を守ってきた一族の後継者だということがわかったんだ。
マリーナは両親と一緒に暮らせることになり、いつか落ち着いたら、クレイに告白するって言ってたんだよね。
そのことをキットンに話し、
「あ~あ、わたし、マリーナのためだったらなんでもするのになぁ」
とつぶやいたわたし。
するとキットンが、薬草を放り出してバッと立ち上がった!
「いいものがあります!!パステル!!」
ふわぁぁ、馬鹿でかい声!
呆気にとられるわたしを置いて、キットンはドタバタと部屋を出ていった。
なによぉ、いいものって、なにがあるっていうの?
わたしは妙な胸騒ぎを覚えながらも、キットンがぶちまけた薬草を拾い集めた。
せっかく整理してたのに、またぐちゃぐちゃだよ。
「これです、これですよ!」
そのうちに、ダッダッダッと騒がしく戻ってきたキットンが誇らしげに差し出したのは、ツヤツヤとしたピンク色のキノコ!
「ええ?いいものって、キノコなの?」
いつものことじゃない。
あきれ返るわたし。
キットンはもどかしそうに身をよじらせて、わたしの目の前にキノコを突きつけた。
「ただのキノコじゃありません!これはですね、トキメキノコといって、これを食べた人はトキメいてしまうという・・・いわゆる魔法のチャームに似たような効果がある大変珍しいキノコなんですよ!」
「トキメキノコ!?」
そう言われてみれば、トキメキっぽい(!?)なんとも可愛らしいピンク色だ。
でもキットン、なんで急にこんなものを持ち出してきたのよ?
「だからパステルは鈍感だというんです」
ぐふふ、と笑うキットンにムッとする。
気にしてるんだから、あんまり鈍感鈍感言わないでくれる!?
「これを食べた人は、このキノコの粉末を振りかけた相手にトキメくんですよ。つまり・・・」
そこまで言われて、ようやくわかった。
「つまり、クレイにキノコを食べさせて、粉をマリーナに振りかければいいのね!?」
「そういうことです」
・・・でも、それって、余計なお世話っていうんじゃ・・・
でも、マリーナ、ああは言ってたけど、クレイもモテるからなぁ。
シルバーリーブでは相変わらずファンの女の子がキャーキャー言ってるし。
今日だって、クレイがバイトに行く前にわざわざ女の子が迎えに来たんだよ?
バイト先が近いから、一緒に行きましょうって。
でもでも、やっぱりそんな、インチキみたいなこと・・・
わたしが頭を抱えてうんうんうなって悩んでいると、
「パステル、このキノコが本当に効果を発揮するのかはわかりませんよ。だからまず、実験をしないと」
イヤ~な予感に顔を上げると、キットンがにやらぁ~~~っと満面の笑みでわたしの肩を叩いた。
「さっき、マリーナのためだったらなんでもするって、言いましたよね?」
「やだやだやだぁ~~~っ、それって、実験台ってこと!?」
「大丈夫です、身体に害はありません!ちょっとトキメくだけじゃないですか。トキメキって、素晴らしいじゃないですか。そもそもパステルにトキメキという感情が・・・うぐぐ、首をじめないでぐだざい~~」
なんでこんなことになったのよぅ。
わたしは、キットンとトキメキノコを何度も何度も見比べた。
ぼさぼさのキットンの頭と、可愛らしいキノコを見ていると、なんだかキノコのほうが信用できそうな気がしてくるから不思議だ。
トキメキ・・・確かに、悪くは、ない。
わたしの脳裏を、ジュン・ケイやギア、クレイのお兄さんのアルテア、イムサイがよぎる。
「わかったわよ。それを、食べればいいのね?」
「おおお!やる気になってくれましたか!そうです、これは生で食べられますからね」
トキメキノコを手に取ると、ふわふわとまるでマシュマロのような感触。
ちぎって一口食べてみると、ほのかに甘い。
「・・・おいしい」
「それはよかった!で、この粉末をですね・・・」
キットンがポケットから出した紙に包まれた粉末を見て、わたしは重要なことを思い出した!
「ちょっと待ってよキットン、わたし・・・わたし・・・誰にトキメけばいいの!?」
ぽけっと首を傾げたキットン。
「ああ、そういえばそうですね。どうしましょうか」
どうしましょうか、じゃない!!
もう一度首を絞めてやろうかと手を伸ばしかけて、慌てて引っ込める。
うっかり粉がキットンにかかったら、わたしキットンにトキメかなきゃいけないのよ!?
やだぁぁ、そんなの、やだぁぁぁ!
「しょうがない、実験は中止!キットン、どれくらいでキノコの効果が切れるのか知らないけど、それまでその粉どこかしまっといてよ」
「えええええええ、そんな、もったいない!」
「いやよ、わたし!こんな状況で、トキメキ体験したくない!」
「あわわわ、粉がっ!!」
「きゃぁぁあ、こぼさないで!」
わたしとキットンがもみ合っていると、バーン!と部屋のドアが開いた。
「おめーら、うっせぇ!」
昼寝をしていたはずのトラップが、不機嫌最高潮の顔で、わたしたちをにらみつけた。
粉の入った紙袋を取り合ったまま、固まるわたしとキットン。
その紙袋を目に留め、トラップが部屋に入ってくる。
「そりゃ給料袋か?へへぇ~、くれんの?」
にやっと笑い、手を差し出してひらひらさせる。
なんで、こんなことになるのよぉ~!
トラップにトキメくのだって、やだぁぁぁ!
「だめだめ、違うったら、あっち行ってよぉ~!」
「そうですよ、もったいない!!」
「んだよ、いいじゃねーか、ちょっとでいいんだよ、ちょっとで!」
もう、紙袋争奪戦!
わたしたちの手から、ちょうど紙袋が離れたときだった!
「ぱぁ~る!るーみぃ、おなかぺっこぺこだおう!!」
のどかな声と共に、今度バァーン!と開いたのは・・・窓だった。
緑の匂いを運んでくる柔らかな風が、紙袋を舞い上げる。
そしてその紙袋は逆さになり・・・トラップの上に、その中身を・・・!
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
わたしとキットンの絶叫が響いたのは言うまでもない・・・
「ああ?なんだ、この粉」
キラキラした薄ピンクの、トキメキノコの粉末を浴びてしまったトラップ。
思わずムンクの叫び状態のわたしとキットンの前で、ばさばさと服をはたいている。
「だぁぁぁ、くすぐってぇ!キットン、てめぇ、こりゃなんの粉だよ!!」
あらら、服の中にまで入っちゃったのかしら。
もぞもぞと身体をくねらせ、後ろで髪を束ねていたリボンをほどいた。
キラキラと粉が舞い、サラサラの赤い髪が肩にかかる。
「ったくよぉ・・・」
ひとしきり頭をかきむしったトラップが、顔にかかる髪の間から鋭い目をわたしたちに向けた。
・・・ドキっ
え?
トラップが、乱れた髪をかきあげる。
・・・ドキドキドキっ
ええええ?
なにこれ、なんか、もしかして・・・いわゆる、トキメキ?
実験台成功ってヤツ?
「キットン!てめぇ、まぁた怪しい薬作ったんじゃないだろうな!」
「うげげげ、バズデル、だずげでぐだざい~」
あわわ、キットンにつかみかかるトラップを、まともに見れない。
思わず視線をそらすと、窓の外からわたしたちを眺めるルーミィと目が合った。
「ぱーるぅ、なにあってうんだぁ?るーみぃ、おなかぺっこぺこなんだおう」
「あああ、あ、そ、そうよね、ルーミィ、ほ、ホットケーキ、焼いてあげるっっ!」
わたしは、あわててキッチンへと向かった。
もちろん、トラップのほうを見ないままね。
「わぁーい、わぁーい、ほっとけーき、ほっとけーき」
キッチンでルーミィのためのホットケーキを焼きながら、わたしはぼんやりと考えていた。
いくら、普段髪を下ろしているトラップを見慣れないとはいえ、あんなやつにドキドキしてしまうなんて!
これはもう、トキメキノコの効果があったとしか思えない!
わたしは心の中で握りこぶしを作りながら、ホットケーキのタネをフライパンに流しいれた。
そうそう、夜ご飯のパスタにかけるつもりの、マトマソースにも火を入れておこうかな。
「だめだめ、違うったら、あっち行ってよぉ~!」
「そうですよ、もったいない!!」
「んだよ、いいじゃねーか、ちょっとでいいんだよ、ちょっとで!」
もう、紙袋争奪戦!
わたしたちの手から、ちょうど紙袋が離れたときだった!
「ぱぁ~る!るーみぃ、おなかぺっこぺこだおう!!」
のどかな声と共に、今度バァーン!と開いたのは・・・窓だった。
緑の匂いを運んでくる柔らかな風が、紙袋を舞い上げる。
そしてその紙袋は逆さになり・・・トラップの上に、その中身を・・・!
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
わたしとキットンの絶叫が響いたのは言うまでもない・・・
「ああ?なんだ、この粉」
キラキラした薄ピンクの、トキメキノコの粉末を浴びてしまったトラップ。
思わずムンクの叫び状態のわたしとキットンの前で、ばさばさと服をはたいている。
「だぁぁぁ、くすぐってぇ!キットン、てめぇ、こりゃなんの粉だよ!!」
あらら、服の中にまで入っちゃったのかしら。
もぞもぞと身体をくねらせ、後ろで髪を束ねていたリボンをほどいた。
キラキラと粉が舞い、サラサラの赤い髪が肩にかかる。
「ったくよぉ・・・」
ひとしきり頭をかきむしったトラップが、顔にかかる髪の間から鋭い目をわたしたちに向けた。
・・・ドキっ
え?
トラップが、乱れた髪をかきあげる。
・・・ドキドキドキっ
ええええ?
なにこれ、なんか、もしかして・・・いわゆる、トキメキ?
実験台成功ってヤツ?
「キットン!てめぇ、まぁた怪しい薬作ったんじゃないだろうな!」
「うげげげ、バズデル、だずげでぐだざい~」
あわわ、キットンにつかみかかるトラップを、まともに見れない。
思わず視線をそらすと、窓の外からわたしたちを眺めるルーミィと目が合った。
「ぱーるぅ、なにあってうんだぁ?るーみぃ、おなかぺっこぺこなんだおう」
「あああ、あ、そ、そうよね、ルーミィ、ほ、ホットケーキ、焼いてあげるっっ!」
わたしは、あわててキッチンへと向かった。
もちろん、トラップのほうを見ないままね。
「わぁーい、わぁーい、ほっとけーき、ほっとけーき」
キッチンでルーミィのためのホットケーキを焼きながら、わたしはぼんやりと考えていた。
いくら、普段髪を下ろしているトラップを見慣れないとはいえ、あんなやつにドキドキしてしまうなんて!
これはもう、トキメキノコの効果があったとしか思えない!
わたしは心の中で握りこぶしを作りながら、ホットケーキのタネをフライパンに流しいれた。
そうそう、夜ご飯のパスタにかけるつもりの、マトマソースにも火を入れておこうかな。
これはわたしの自信作。
キットンの特製スパイス(これは何回も使ってるから、保証済み)を入れて、昨日からコトコト煮込んでるのよね。
キットンの特製スパイス(これは何回も使ってるから、保証済み)を入れて、昨日からコトコト煮込んでるのよね。
「ちくしょお、キットンのやつ、なんだったのか教えろっつーの。こちとら被害者だぜぇ?」
キッチンに入ってきたのは、なんとトラップ。
顔を向けられないけど、相変わらず服をバサバサやってる気配がする。
「なんだったんだよ、あれ。しまいにゃ、キットン、腹抱えて笑い出すんだぜぇ?気持ちわりぃったらねーよ」
あああ、もう、あっち行ってよぉ!
今のわたしに、近づかないで!
説明するわけにもいかないわたしは、ひたすらにマトマソースをかき混ぜる。
トラップはぶちぶちいいながら、ひょいとわたしの手元をのぞきこんだ。
「おお、うまそーじゃん」
耳元でするトラップの声に、一層わたしは身を硬くする。
「へへ、毒見、毒見」
まだ、火にかけてから間もないからね、指を突っ込んでも熱くない。
普段だったら、「お行儀が悪い!」ってペシッとやるところだけど、今日のわたしはぼんやりとそんなトラップを見ていた。
赤いマトマソースのついた指を、トラップがペロリと舐める・・・
ドキーン!
なに、これ!
なんでこんな仕草を、色っぽいとか感じなきゃいけないのよ!
わたしの顔にさぁっと血がのぼる。
「うめぇよ、これ」
もう一度指をナベに突っ込もうとする。
「ああん、とりゃーぷ、るーみぃも!るーみぃも!」
「ああ、ほらよ。・・・ところでパステル、なんか焦げ臭くねぇ?」
ルーミィのためにスプーンを出してあげてるトラップに言われ、わたしはハッとした。
ホットケーキ!!
あわててお皿を取り出し、あわわわ、しまった!!
ガシャーン!
手が滑ったと思ったら遅かった。
石畳の床の上で、お皿が粉々に砕け散る。
「だぁぁ、おめぇ、なにやってんだよ!・・・だぁら、動くな!ちょっとじっとしてろ!」
トラップは、わたしを押しのけると、半焦げになったホットケーキを手際よくお皿にのっけた。
「ほれ、ルーミィ。こっちはあぶねぇから、向こうで大人しく食ってな」
「わぁぁい、ほっとけーき、ほっとけーき」
キョトンとしてマトマソース付きのスプーンをくわえていたルーミィは、ホットケーキ(半焦げだけど)のお皿をうれしそうに掲げると、ダイニングのほうへ行った。
「・・・おい、パステル!なにぼぉっとしてんだよ!」
怒気をはらんだトラップの声。
彼は、床の破片を、ひとつひとつ拾い集めていた。
「ご、ごめん、トラップ!わたし・・・」
わたしもしゃがみこんで、破片を拾う。
気をつけないと、手を切っちゃいそう!
「いたっ!」
言ってるそばから、やってしまった!
指先に、血がにじむ。
「ばっかじゃねぇの!?おい、ちょっと見せてみろ!」
「だ、だいじょうぶ、ちょっと切っただけだから」
「いいから!」
有無を言わせず、トラップはわたしの手をひっぱった。
・・・至近距離。
もう、わたしのトキメキゲージは急上昇!!
「この程度なら、ナメときゃ治るな」
はぁっ、と、あきれたようにため息をつくトラップ。
わたしは、さっきのトラップのように、血のにじんだ指先をちらりと舐めて、破片拾いをしようと・・・
「あああああ、パ、パステルーーーー!!!パースーテールーーー!」
またもやキットンの叫び声!しかも次第に近づいてくる。
ダダダッとキッチンに駆け込んできたキットンは、わたしの前に座り込むと、こう言った。
「すみません、あれ、トキメキノコじゃなくてトキドキノコでした!」
トキドキ!?
それって・・・時々ってこと!?
「はい、そうなんですぅ。なんでも、時々、毒性を発揮する、という・・・」
「うっそ、なにそれ!」
うげげ・・・わたし、食べちゃってるじゃん!
「そのようすだと、毒はだいじょうぶみたいですねぇ。いやぁ、よかったよかった」
ほっと胸をなでおろす。
・・・ってことはだよ?
「じゃ、じゃあ。トキメキっていうのは・・・」
「ないです、そんな効果は。すみませんねぇ。しかし、実験というものはすべからく・・・」
「ああ~、もう、びっくりさせないでよ、ねぇ、トラップ・・・ト、トラップ!?」
安心して、トラップに微笑みかけようとしたら、なんとそのトラップが青い顔をして口元を押さえていた!
「ま、まさか、毒が!」
う、うそぉぉ!あの悪運の強いトラップに毒が当たっちゃうなんて!
「解毒剤、持ってきますです!」
キットンがキッチンを飛び出していく。
わたしは、お皿の破片のないところまでトラップを引きずると、そっと床に横たえた。
うわぁ、顔が真っ青。
恨めしそうな目でわたしを見上げるけど、いつもの減らず口を叩く元気もないみたい。
わたしは申し訳なくなって、トラップの頭を自分の膝にのせてあげた。
固い石畳じゃ、かわいそうだもんね。
かといって、ベッドまで運んであげたくても、クレイもノルもバイトでいないし。
トラップはぶちぶちいいながら、ひょいとわたしの手元をのぞきこんだ。
「おお、うまそーじゃん」
耳元でするトラップの声に、一層わたしは身を硬くする。
「へへ、毒見、毒見」
まだ、火にかけてから間もないからね、指を突っ込んでも熱くない。
普段だったら、「お行儀が悪い!」ってペシッとやるところだけど、今日のわたしはぼんやりとそんなトラップを見ていた。
赤いマトマソースのついた指を、トラップがペロリと舐める・・・
ドキーン!
なに、これ!
なんでこんな仕草を、色っぽいとか感じなきゃいけないのよ!
わたしの顔にさぁっと血がのぼる。
「うめぇよ、これ」
もう一度指をナベに突っ込もうとする。
「ああん、とりゃーぷ、るーみぃも!るーみぃも!」
「ああ、ほらよ。・・・ところでパステル、なんか焦げ臭くねぇ?」
ルーミィのためにスプーンを出してあげてるトラップに言われ、わたしはハッとした。
ホットケーキ!!
あわててお皿を取り出し、あわわわ、しまった!!
ガシャーン!
手が滑ったと思ったら遅かった。
石畳の床の上で、お皿が粉々に砕け散る。
「だぁぁ、おめぇ、なにやってんだよ!・・・だぁら、動くな!ちょっとじっとしてろ!」
トラップは、わたしを押しのけると、半焦げになったホットケーキを手際よくお皿にのっけた。
「ほれ、ルーミィ。こっちはあぶねぇから、向こうで大人しく食ってな」
「わぁぁい、ほっとけーき、ほっとけーき」
キョトンとしてマトマソース付きのスプーンをくわえていたルーミィは、ホットケーキ(半焦げだけど)のお皿をうれしそうに掲げると、ダイニングのほうへ行った。
「・・・おい、パステル!なにぼぉっとしてんだよ!」
怒気をはらんだトラップの声。
彼は、床の破片を、ひとつひとつ拾い集めていた。
「ご、ごめん、トラップ!わたし・・・」
わたしもしゃがみこんで、破片を拾う。
気をつけないと、手を切っちゃいそう!
「いたっ!」
言ってるそばから、やってしまった!
指先に、血がにじむ。
「ばっかじゃねぇの!?おい、ちょっと見せてみろ!」
「だ、だいじょうぶ、ちょっと切っただけだから」
「いいから!」
有無を言わせず、トラップはわたしの手をひっぱった。
・・・至近距離。
もう、わたしのトキメキゲージは急上昇!!
「この程度なら、ナメときゃ治るな」
はぁっ、と、あきれたようにため息をつくトラップ。
わたしは、さっきのトラップのように、血のにじんだ指先をちらりと舐めて、破片拾いをしようと・・・
「あああああ、パ、パステルーーーー!!!パースーテールーーー!」
またもやキットンの叫び声!しかも次第に近づいてくる。
ダダダッとキッチンに駆け込んできたキットンは、わたしの前に座り込むと、こう言った。
「すみません、あれ、トキメキノコじゃなくてトキドキノコでした!」
トキドキ!?
それって・・・時々ってこと!?
「はい、そうなんですぅ。なんでも、時々、毒性を発揮する、という・・・」
「うっそ、なにそれ!」
うげげ・・・わたし、食べちゃってるじゃん!
「そのようすだと、毒はだいじょうぶみたいですねぇ。いやぁ、よかったよかった」
ほっと胸をなでおろす。
・・・ってことはだよ?
「じゃ、じゃあ。トキメキっていうのは・・・」
「ないです、そんな効果は。すみませんねぇ。しかし、実験というものはすべからく・・・」
「ああ~、もう、びっくりさせないでよ、ねぇ、トラップ・・・ト、トラップ!?」
安心して、トラップに微笑みかけようとしたら、なんとそのトラップが青い顔をして口元を押さえていた!
「ま、まさか、毒が!」
う、うそぉぉ!あの悪運の強いトラップに毒が当たっちゃうなんて!
「解毒剤、持ってきますです!」
キットンがキッチンを飛び出していく。
わたしは、お皿の破片のないところまでトラップを引きずると、そっと床に横たえた。
うわぁ、顔が真っ青。
恨めしそうな目でわたしを見上げるけど、いつもの減らず口を叩く元気もないみたい。
わたしは申し訳なくなって、トラップの頭を自分の膝にのせてあげた。
固い石畳じゃ、かわいそうだもんね。
かといって、ベッドまで運んであげたくても、クレイもノルもバイトでいないし。
ごめんね、巻き込んで。
変なものに頼ろうとするから、バチが当たったんだよね。
マリーナだって、嬉しいはずがないよね・・・
ううう、反省。
わたしは額にかかるトラップの髪をそっとよけてあげながら、ふと首をかしげた。
トキメキノコじゃなかったんなら、さっきの、落ち着かない気持ちは一体なんだったんだろう・・・?
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プラグイン
60000Hit,Thanks!!
ただいまキリリク停止中
はじめに
プロフィール
HN:
まいむ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
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