まいむのFQ二次創作
- 著・深沢美潮の「フォーチュンクエスト」シリーズの二次創作を公開しています。 トラップ×パステルOnlyで、全くの健全小説です。
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一途なのは・・・誰?
エベリンの劇場で、マリーナに誘われて恋愛モノのお芝居をみたパステルは・・・
「やだ~、こんなに感動したのって久しぶりかも!」
「よかったよね、俳優さんも、お話も!やっぱり話題になるお芝居はちがうわねぇ」
砂漠の大都市エベリンでも最大級の劇場は、たった今幕が引かれたところ。
客席は、まだ興奮の冷めやらない観客でいっぱいだった。
「主役もカッコイイし、ヒロインの女の人もきれいだったし・・・ああ、しかも、あそこでヤキモキさせるのがいいよね!!」
わたしが、握り締めていたハンカチで目元をぬぐいながら、思わず身もだえすると、同じように目を潤ませていたマリーナがわたしの顔を覗き込んで言った。
「でもパステル、あなたも小説家でしょう?ほら、わたしだったらこういう展開にするのに!とか、あったんじゃない?」
ピンク色の前髪の下の目は、さっきまでの感動と期待(!?)でキラキラ輝いてる。
輝いてるといえばマリーナの今日のお化粧もそう。
有名な劇場でお芝居を観る、ってことで、目元はラメ入りのアイシャドウ。唇だって、うるうるのグロスを塗っていてとってもセクシー。
もちろんわたしもマリーナに手伝ってもらってメイクアップしたけど、やっぱ元が違うよねー。私じゃこうはならない。
ドレスだって、背中も胸元も大きく開いた黒のロングドレス。ふわりと肩に羽織った羽毛のショールがこれまたゴージャス。
はぁぁ・・・マリーナだったら、あの舞台に立ってた美男美女の俳優さんたちに混じっても、違和感なさそう。
「やだなぁ、マリーナったら。わたし、恋愛モノなんて書いたことないもん!無理よ無理!」
マリーナに借りたスパンコールのミニバッグにハンカチをしまいながらわたしは首を振った。
こめかみから、結い上げた髪の後れ毛が落ちてきて、ほほにかかる。
「ふーん、あんなに面白い冒険談が書けるんだから、パステルだったらなんでも書けると思うんだけどなぁ」
「冒険は、経験したことだから書けるんだと思う。恋愛なんて・・・書けたとしても先の話かな」
マリーナはショールを肩にかけなおし、席から立ち上がって、わたしに手を差し出した。
「そんなことないと思うわよ、わたしは。ま、それはともかく、感動したら喉渇いちゃった。せっかくだから、そこのカフェでお茶でもしていかない?」
さて、どうしてわたしとマリーナがふたりきりでお芝居を観に来ているかというと・・・
例にもれず金欠のわたしたちは、シルバーリーブからエベリンの向こうの町まで、おつかいクエストに来てたんだよね。
その話はおいおいするとして、帰り道にマリーナやアンドラスのいるエベリンに寄り道したの。
そしたら。
「パステルー!ちょうどいいところに来てくれたわ。お得意様からもらったお芝居のチケット、今日までなのよ。アンドラスも仕事でいないし、せっかくだから、一緒に行かない?」
「そ、そんなぁ。お芝居なんて、子どもの頃のミュージカルしか見たことないよ。それに、ルーミィ連れて行くわけにいかないし」
わたしが躊躇っていると、クレイが助け舟を出してくれた。
「いいじゃないか、たまには女ふたりで楽しんでおいでよ。ルーミィは俺たちでみてるから。な、トラップ、キットン、ノル」
「ちぇー、おいらは知らねーぞ」
「大丈夫ですよ、まかせといてください!」
「いっておいで、パステル」
約1名、非協力的なやつがいるけど、みんな笑ってうなずいてくれた。
えー、そうかなぁ、じゃぁお言葉に甘えて・・・
お昼を食べたばっかりで満腹のルーミィはノルの背中で熟睡してるし、これなら大丈夫そう。
ということで、劇場にふさわしい格好をマリーナに揃えてもらって、そのお芝居を見に行くとこになったんだ。
暗くなり始めたエベリンの町。
劇場のまわりはまだ賑やかだったけど、わたしたちは少し離れた落ち着いた雰囲気のカフェに入った。
わたしはホットミルク。マリーナはココア。
もうそろそろ冬支度だから、温かい飲み物がとってもおいしい。
わたしたちはお芝居の感想を語り合って盛り上がった。
同じ町で育った二人が、すれ違い、離れたりしながら、最終的には結ばれる、というお話だったんだ。
主人公の男の人が、お見合いを断ったり、行商の旅に出たりしながらも、ずっとヒロインのことを想ってて、最後の最後にヒロインを、他の男との結婚式で奪うんだよね。
そして、自分の本当の気持ちに気づいたヒロインと、しっかりと抱き合って・・・幕!!
「あ~あ、わたしもあんなふうに、一途に想われてみたいなぁ~」
思わずこぼれでたわたしの一言に、マリーナが右の眉を上げる。
「想われてないの?いるじゃない、あなたのまわりに」
危うくミルクを噴きそうになった。
「う、うそー!!いないって、どこの誰よ!」
わたしが慌てて言うと、マリーナはわたしの顔をじっと見つめて笑う。
ええー、なに、それ。
まるで、誰かいるみたいじゃない??
「だって、ガイナを出たときは、まだそんな年じゃなかったし・・・今はこんなだし・・・」
そうよね、ガイナにいたころは、みんな友達って感じで、男の子も女の子もごっちゃになって遊んでたから。
親友のダイナと、誰がカッコイイだの、誰と誰は特に仲がいいだの、そんな話をしたことはあるけど・・・あのころの遊び友達が、わたしを一途に(!!)想ってるとか想ってたとか、そんなことは考えらんない!
ひとりひとりの顔を思い浮かべつつ、ぶんぶんと首を振る。
かといって、今は・・・ねぇ。
カッコイイけど鈍感なクレイに、あっちこっちで女の子に声掛けて遊んでるトラップに、妻帯者のキットン。
ってことは・・・
「ノル?」
ブーーー!!
「きゃぁぁ、マリーナ、しっかり、しっかり!!」
なんと、あのマリーナが盛大にココアを噴いたのだ!!
いやいやいや、わかってる!
ノルでないことはわかってる!
普段寡黙なノルだけど、パーティのみんなを見る目はとても優しくて。
だから、みんなに家族のような愛情を持ってるんだってことはわかってる!
でも、他のメンツを考えると、ノルくらいしか可能性がないじゃん!
わたしは頭の中でぐるぐる考えながら、ハンカチを出してココアを拭いた。
マリーナも、咳き込みながらテーブルの上を片付ける。
飛んでこようとした店員さんを手で制しながら、彼女はもう一度笑った。
「まぁまぁ、ノルももしかしたらってこともあるかもしれないけど・・・ちゃんといるわよ」
そして、ちらっと窓の外を見る。
・・・?
わたしがその視線を追いかけようとすると、マリーナは立ち上がった。
「すっかり暗くなっちゃったわね。みんなが心配するだろうから、そろそろ行きましょうか」
ほんとだ!
すっかり話し込んじゃったみたい。
みんな、おなかすかせて待ってるだろうなぁ。
ルーミィ、大丈夫かしら?
「マリーナ、今日はありがとう!なかなかこんな機会ってないし、すごく楽しかった!」
「ううん、いいのよ。わたしもパステルと行けてよかった。それにしてもごめんね、ほんとだったらうちに泊めてあげたいんだけど・・・」
「そんなぁ、マリーナが謝ることじゃないよ!むしろ、いつも泊めてもらってほんとありがとう!」
そうなの、今日はマリーナの古着屋さん、衣がえ中でごちゃごちゃなんだって。
普段自分が寝起きしてる部屋のほうまで古着で足の踏み場もないらしくって・・・
メイクも着替えも、わたしたちが今夜泊まる宿のほうまで持って来てくれたんだ。
ここまでしてくれて、ほんと、いい子だよね!
カフェから外に出ると、もう空気はひんやりとしていて、空には星が瞬いていた。
もう人通りもずいぶんと少なくなって・・・あ、あれれ?
「ト、トラップ??こんなとこで、どうしたの?」
見慣れた緑の帽子と赤毛の後姿。
トラップが、両手をジャケットのポケットに突っ込んで、通りをブラブラと歩いていた。
「なんでぇ、おめぇ、こんなとこにいやがったのか」
「トラップこそ・・・なにやってんのよ、いつもみたいにギャンブルでもやってるのかと思ってた」
トラップは、傍に駆け寄ったわたしをつめた~く見下ろして、言い放った。
「クレイが、迎えに行けって言うから、来てやったんだよ。きっと劇場から宿まで帰ってこれねぇだろうからって」
ああー、そうか、忘れてたけど、普段はマリーナに泊めてもらってたから、今回泊まる宿は初めてなんだよね。
確かに、初めての劇場から初めての宿までなんて、わたしが辿り着けるはずもない。
情けないけどね。
「さっすがクレイ!!」
思わず手を叩いてしまった。
追いついてきたマリーナがトラップを見て言う。
「あら、わたしが送っていってあげたのに。わざわざご苦労様ね、トラップ」
それを聞いたトラップが、急に赤くなった。
およよ、ドレスアップしたマリーナに見惚れたのかな?
「ばっ、か・・・!違げぇよ、クレイがこのバカを迎えに行けって言うから・・・しかたなくだな・・・」
「やだぁ、そんなの悪いよ!大丈夫、マリーナは衣がえで忙しいんだし、トラップも来てくれたし・・・あ、ドレスは明日返しに行くね!」
わたしはトラップを無視してマリーナの手を握り締めた。
その横で、ふてくされたトラップが帽子を目深に被りなおしている。
「おら、行くぞ!」
「待ってよトラップ!じゃぁね、マリーナ!」
マリーナは笑ってわたしを見送ってくれた。
ちょっと寂しそうな、ちょっと意味ありげな目で。
ああ、でもその雰囲気も、とってもセクシーだったのだ。
「もう、トラップ、もうちょっとゆっくり歩いてよ!」
「ああ?・・・んだよ、いつも以上にトロくせぇと思ったら、そんな靴はいてやがるのか」
ドレスに似合うように、マリーナが貸してくれた靴。
キラキラしてて、足首にシルクのリボンがついててむちゃくちゃ可愛い。
ただ、結構・・・ヒールが高いんだよね。
普段ぺたんこのブーツで生活してる私には、これでトラップについてくなんて無理。
ただでさえ歩くのの早いトラップに、また置いていかれちゃう!
「ったく、しゃぁねぇなぁ・・・」
言いながらトラップは立ち止まって、わたしを頭のてっぺんからつま先までじろじろっと見た。
ううぅ・・・恥ずかしい。
「なによ、どうせ似合わないとか言うんでしょ」
わたしは、自分の身体を隠すようにしてトラップをにらみつけた。
ダークレッドのシルクのドレス。裾は前のほうは短めで、後ろ側は長いっていうちょっと変わったデザインなんだ。
ノースリーブだから、黒のベロアのミニボレロを羽織っている。
鏡で見たときは、ずいぶん自分のイメージと違ってびっくりした。
マリーナが、「オトナのお芝居を観に行くんだからこれくらいの雰囲気にしなきゃね」なんて張り切ってたっけ。
「いんや、べっつに~?」
トラップは、ニヤリと笑って、それでもわたしが追いつくのを待ってくれた。
いつもは馬子にも衣装とかってからかうのに、今日は優しいじゃん?
ところが。
「お嬢様は不慣れなお靴をお召しのようですから、お手をひいて差し上げましょうか?」
なーんて、言うもんだから、うやうやしく(!?)出された手をペシっとはたいてやった。
「ちぇー、なんだよ、せっかく迎えに来てやったのによ。この仕打ち!」
「それは・・・ありがとう」
ふたりで灯りのともるエベリンの道を歩く。
「んで、どうだったんだよ、話題のお芝居とやらは」
そうだそうだ、さっきのマリーナの話を聞いてみようっと。
「うん、それがね・・・ねぇトラップ、わたしのまわりで、一途な人って、誰だと思う?」
「へ?一途?・・・キットンのことじゃねぇの?やっぱ所帯持ちだしなぁ。いくら今はどこにいるかわかんねぇって言っても」
「うーん、まぁ、そう考えるのが自然なんだけど・・・それが、違うみたいなのよねぇ。いくらキットンが一途だからって、その相手はスグリじゃない?」
わたしが言うと、トラップは鼻で笑った。
「あったりめーじゃん」
「そうなのよ。でもマリーナは、その人はわたしのことを想ってるっていうのよ」
うーん、やっぱおかしいよね。
考え考えしながら話すわたしの横で、トラップが噴きだした!
「ブハッ!!」
「ブハッ!!」
「きゃぁぁ、なによー、トラップまでマリーナと同じ反応して!」
かがみこんでゲホゲホ言ってるトラップの背中をさする。
ええー、どうしてどうして?トラップも誰かわかってるってこと?
「あいつっ・・・!なんで・・・!」
「誰よ、トラップ!そんな人、どこにいるっていうのよぉ~」
咳のおさまったトラップは、必死で腕をつかむわたしの手を邪険に払いのけると、こう言い放った。
「教えてやんねー」
そしてそのまま、近くの建物に駆け込んでいく。
「ちょっと、トラップー!!」
見上げるとそこは、数時間前にチェックインした宿だった。
「ああ、お帰りなさいパステル、ラブラブ全開のお芝居というのは、どうでしたか?」
帰るなり、どでかいキットンの声に迎えられて、一気にわたしの中の(ラブラブな?)余韻が消え去った。
もう、ただでさえ、トラップのせいで消えかかってたのに!
やっぱり、わたしの現実ってこうなのね・・・
肩を落とすわたしの足元に、ルーミィが駆け寄ってきてまとわりつく。
「ぱぁーるぅ、きえいだぉ。でもるーみぃ、おなかぺっこぺこだおう!」
ルーミィを追いかけてきたクレイが、わたしに微笑みかけて言った。
「さっきからこればっかりなんだ。ちょうどいいところで帰ってきてくれて助かったよ」
あらら、やっぱり・・・
「ありがとう、クレイ」
「いや、いいよ。ちょうどトラップもカジノから帰ってきたみたいだし、メシ食いに行こう。着替えておいでよ」
「そうね、このままの格好じゃ・・・あれ?クレイ、トラップって・・・」
「なに?あいつだったら、パステルが出かけてすぐ、カジノに行ってそれっきりだったんだよ」
「そうなんらー、とりゃーぷ、あそんでくえなかったお」
「トラップあんちゃん、ずっといなかったデシ」
ルーミィやシロちゃんも口をそろえて言う。
????
あれ、でもさっきトラップ・・・?
「ぎゃっはっはっはっはっはっは」
突然、っていうかいつものことだけど、キットンの馬鹿でかい笑い声が宿に響いた。
振り返ると、窓の桟を台代わりにして薬を調合していたキットンが馬鹿笑いしてる!
傍であやとりをしていたノルまで肩を震わせて・・・
え?なになに?
その横のベッドでは、トラップが帽子を顔にのせたいつものポーズで寝そべっていた。
「あっ、トラップ、あなた・・・」
「ぐふぐふぐふ・・・ぐ・・・げほげほげほっ・・・!」
言いかけたわたしの言葉を、またもやキットンの笑い声がさえぎる。
「ぱぁーるぅー、はやく、きがえてくるおー!!!」
ルーミィがわたしの手をひっぱる。
あああ、もうっ、なに言おうとしてたのか、忘れちゃったじゃない!!
「はいはい、わかったから!ルーミィ、そんなにひっぱらないで!」
わけわかんないよ、もう。
と目でクレイに問いかけると、クレイも困ったような目で首をかしげた。
わたしのまわりの一途な人・・・誰なのよ、もうっ!
その後で、クレイがわけもわからないままトラップに首を絞められていたことを・・・わたしは、知らない。
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プラグイン
60000Hit,Thanks!!
ただいまキリリク停止中
はじめに
プロフィール
HN:
まいむ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
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