まいむのFQ二次創作
- 著・深沢美潮の「フォーチュンクエスト」シリーズの二次創作を公開しています。 トラップ×パステルOnlyで、全くの健全小説です。
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真実の王女番外編~はなればなれ~(1)
キスキン国王女ミモザを王家の塔へ連れて行くために、ミモザに扮装したパステルと別行動をすることになったトラップとパーティメンバー。
果たして、無事にパステルと合流できるのか・・・?
※トラップ視点です。
事の起こりは、おれが、パステルそっくりの女に声を掛けたことだった。
キスキン国の王女ご一行を騙り、キットンのいわれのない借金を返すために、ストロベリーハウスから金を騙し取る作戦が成功した直後だ。
打ち上げをしようと、しょっちゅう通っていたエベリンの食堂、メインクーン亭へ行ったときのこと。
明るい金色の髪をひとつに縛った後姿。
見慣れたその背中を、おれはいつものようにどついた。
「おい、パステル!ぁに、そんなとこでぼぉっと突っ立ってんだよ」
「は?」
ゆっくりと、振り返るパステル。
おれを見た灰色の目が、不思議そうに瞬く。
あれ・・・?
なんか、違わねぇか・・・?
「お、おい、そんな顔するなよ。おれ、なんかしたっけか?」
おれは慌てた。
が、言ってるそばから、心当たりがありすぎて、普段びくともしない心臓のすみっこらへんがちくりと痛む。
確かに、今回の一件では、けっこうこいつに辛く当たった。
ギアとかいう野郎のこともあるし、なんつーか、うじうじ悩んだりしてるこいつを見て、腹がたったっつーか・・・
わかってんだよ、こいつだって、精一杯やってるってのは。
「いや、その・・・」
くそっ、言葉が、出てこねぇ!
そんなおれを、パステルは、怪訝そうに覗き込んだ。
「すまないが、人違いのようだ。わたくしは、・・・いや、なんでもない」
人違い!?
おめー、そこまでいうか!?
ショックで思わず呆然としてしまったおれの背中に、クレイが声を掛けた。
「おい、中に入ってるぜ」
「え?あ、ああ、それがさ・・・」
こいつ、ひでぇんだぜ。
言おうとして振り返ったおれの視線の先には、もうひとり、いたのだ。
パステルが。
「あ、あれ?パステル・・・おめぇ。なんで二人いるんだ?」
あのとき、少しでも時間がずれていれば、あのお姫さんと会わなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
こんな展開になったのは、全部、ミモザに声を掛けたおれのせいなんだろう。
自業自得って、やつだ。
おれは、人知れずため息をつくしかなかった。
パステルだけ、パーティと別行動になるとは。
「パステルは、アルメシアンさんと行くの」
そう言い放ったのは、もはや作戦部長といっても過言ではない、マリーナ。
昔っから頭のきれるヤツだとは思っていたが、アンドラスと組んで詐欺師をやるようになってから、いっそう磨きがかかっている。
「ええぇーーー!?」
叫ぶパステル。
そりゃそうだよな、追っ手がかかってるっていうのに、おれたちと別で、しかもこんなすっとぼけた風体のアルメシアンとかいうおっさんと行動しろっつーんだからな。
追っ手の目をくらますためにマリーナが考え出したのは、パステルとミモザを入れ替えようという作戦だった。
このおれでも最初は気づかなかったくらいだ、そっくりのパステルの存在を知らない追っ手は、見事にだまされてくれることだろう。
ただ、それはつまり、パステルが危険にさらされるって、ことだ。
パステルは、不安そうな目でアルメシアンを見て、マリーナを見て、と行ったり来たりしている。
「なに、わたしだって、これでも騎士団員だったこともあるんです。お嬢さんのひとりやふたり、ちゃんと守ってさしあげますよ」
「マリーナ・・・」
「パステル、なんて顔してるの。だいじょうぶよ。わたしたちで、ちゃんと護衛してあげるから」
「え?そうなの?マリーナたちも一緒に行くの?」
「そうよ。そうね。わたしは貴族の娘で、アンドラスはそのお付きの者ってことにして。わたしはミモザ姫の良き友人ってわけ。そうすれば、一緒に旅をしていてもおかしくないでしょう?」
「なーるほどね」
パステルが、ようやく笑った。
おれも密かに胸をなでおろし、改めてマリーナを見直す。
しかし、そこに、恐る恐る、といった様子でミモザが割り込んだ。
「できれば・・・マリーナ、そしてアンドラス。そなたたちには、一足先にキスキン国へ向かってほしいのだが・・・」
「いいですよ。わたしたちは何をすればよろしいんでしょうか」
なんでも、病気の母が城にいるらしい。
まわりの者がどんどん心離れしている今、ひとりで残してきたのが心配でならないようだ。
だから、マリーナとアンドラスに、母親を守って欲しいという。
やれやれ、そんなこと聞いてまだダダをこねられるほど、うちのパーティのお人好し女はバカじゃない。
つーかそもそも、こんなこと引き受けちまうお人好しをバカっていうんじゃねぇの?
パステルは、キッと虚空をにらむと、立ち上がった。
「マリーナ、アンドラス。二人とも、すぐに出発してよ。わたしは、アルメシアンさんと一緒に行くから。平気、平気。だって、追っ手っていったって、さっきの人たちでしょ?そんなに強そうじゃなかったもん」
「でも、さっきはいなかったのですが、追っ手の中に、どこかからやってきた傭兵で、それはもう腕の立つ男がいるんです。彼ひとりで、あの追っ手たち全員を合わせたより上でしょう。彼は侮れませんぞ」
アルメシアンの言葉を聞いて、またヘナヘナと座り込む。
おれは、思わず口を開いていた。
「しょうがねーなぁ。おれが行ってやるよ。クレイやノルは本物のお姫さんを護衛しなきゃいけねーだろうし」
いや、この話が出たときからずっと、言うきっかけをうかがっていたのかもしれねえ。
ふと、おかしな気持ちになった。
このバカが心配なわけじゃない、なにか嫌な予感がした。
そんなおれの内心にはまったくおかまいなく、パステルは目を見開いておれの顔をマジマジと見た。
「ほんとに!?」
「なんだよ。その驚いた顔は。おれじゃ不満ってのか?」
いつものような軽口が自然と出る。
「ううん、そうじゃない!そうじゃないけど・・・」
一瞬、パステルの顔が曇る。
たぶん、ここ数日のおれの態度を思い出してるんだろう。
そうだ、それもある。
謝るっつーわけじゃねぇけど、このままってわけにもいかねぇんだよ。
それを、取り戻さねえと。
「だめよ。だから、さっき言ったでしょ?パーティを崩しちゃダメなんだってば。そんなことしたら、相手の不信を買うだけよ。でしょ?」
密かに決心したおれを、マリーナの無情な声が打った。
「そっかぁ・・・」
あからさまに落ち込むパステル。
マリーナの目が、パステルを通り越しておれを見据えた。
さしずめ、トラップ、そんなことくらいあなたならわかってるでしょってとこか?
おれはいつもの仕草で、肩をすくめる。
しゃあねぇ、こいつだって冒険者だ、なるようにしかならねーだろ。
おれは嫌な予感を抑えこんだ。
「んじゃ、まぁ。パステル、がんばるしかねーってことで」
「ふぇーん・・・」
眉を下げて半泣きのパステル。
まぁ、こいつにはいい修行になるんじゃねぇの?
いつもいつもまわりに頼ってばっかで、こないだだって、せっかく励ましてやってたおれの気も知らねえで、ギアの野郎に・・・
「そうだ!」
マリーナが突然手を叩いた。
不安そうな顔を上げるパステル。
しかし、マリーナはパステルを見ていない。
そのでかいキラキラ輝く目でおれを見ていた。
「いい人がいたじゃない?打ってつけの人が・・・」
おいおいおい、この非常事態に、その目のイヤ~な光は、なんなんだよ??
「ああ、いいよ。おれもパステルたちと行こうかと思っていたし」
んで、おめえも簡単にOK出すなよ!
ってか、パステルたちと行こうかと思っていたしって、なんだよ!
パステルは思っても見なかったであろう、ギアの登場に、顔を赤らめている。
そりゃレベルもケタ違いだし、確実なボディーガードだろうよ!
ストロベリーハウスの一件では確かにあいつの協力が必要だったし、キットン族のダンジョンでだって、なんだかんだいってパステルが世話になってる。
ただな、おれはあいつのスかした態度が気にいらねぇ。
なんつーか、あいつがおれらのパーティの近くにいると、とにかくムシャクシャすんだよ!
あ?そうじゃないだろって?
バカ言え、おれだって、わかってんだよ。
要は、おれはあいつがパステルにかまうのが、気にくわねーんだよ。
だからっつっても、別に、あんなガキに惚れてるとか、そーいうんじゃねえ。
ただな、だから、なんつーか・・・むむむ・・・
ちくしょう、マリーナのやつ、おれがギアのこと嫌ってんの気づいてるくせに、なにが打ってつけの人、だ!!
憤然とするおれを尻目に、話はどんどんすすんでいく。
結局、マリーナとアンドラスが今夜出発し、パステルたちが明日の朝早く、おれたちパーティとミモザがその後で出発することになった。
パステル出発の時。
案の定エルフのちび助ルーミィが、パステルにしがみついてダダをこねていた。
「やーだ、ぱぁーるといっしょがいーい!」
そりゃまあそうだろう、ズールの森でパステルに拾われて以来、あいつが親代わりだもんな。
姉のように、母親のように、面倒を見てやっている。
おれはともかく、クレイやノルや、キットンといった連中もルーミィの遊び相手をしてやったり、いろいろしているがパステルの比じゃない。
自分のことも満足にできねーくせに、面倒見はいいんだよな・・・
ってか、パステルがいない間、ちび助の世話は誰がするんだ!?
メシはともかく、風呂とか、寝るときとか。
そういやそうだ、ちび助は、いつもパステルと一緒に風呂に入り、一緒のベッドで寝てるんだっけか・・・
な、何考えてんだ、おれ!
おれはモヤモヤと浮かんだ絵を、あわてて頭から追い出した。
パステルは、自分も寂しいんだろう、泣きそうなのをぐっとこらえてルーミィに笑ってみせている。
「すぐまた会えるからね、それまでの辛抱だってば」
「ったくよお。一年も二年も別れるわけじゃねーんだから。たかが一週間かそこらだろ」
おれは、パステルとルーミィ、ふたりの頭をぽんぽんと叩いて言ってやった。
別に、自分に言い聞かせてるとか、そんなんじゃねーって。
パステルは、泣き笑いの顔そのままでおれを見る。
そのパステルに、おれは心の中で声をかけた。
「がんばれよ」
ところが、がんばらなきゃいけないのは、あろうことかおれたちのほうだったのだ。
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