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まいむのFQ二次創作

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猪鹿亭トライアングル~34000キリ番リク~

ハプニングによって、家のコンロが使えなくなったパステルたち。
仕方なく(!?)猪鹿亭で食事をすることにしたけれど、その日の猪鹿亭は、いつもとちょっと様子が違って・・・!?





 
今日も、わたしたちは猪鹿亭に食事に来ていた。
え、なんだか最近、リッチなんじゃないかって?
・・・だったら、いいんですけどねー!
なんと、なんとですよ!
わたしたちの家の、コンロが壊れてしまったの!
この寒いのに、火を使わない冷たい料理じゃ、身体の芯から凍えちゃうじゃない?
だから仕方なく、貯金切り崩して、猪鹿亭にお昼ごはんを食べに来てるんだ。
 
 
 
「じゃ、おれとりあえず・・・」
「トラップ! ビールはダメ!」
「ちぇっ、ケチ!」
さっと手を挙げかけたトラップをわたしがはたくと、彼は恨めしそうにわたしを睨みつけた。
だって・・・食事だけでも結構な額になるのに。
ビールまで飲まれちゃ、あっという間に貯金もなくなっちゃう!
それに、こんな昼間っからお酒なんて!
眉を吊り上げるわたしをなだめるように、クレイが言う。
「まあまあ、明日明後日くらいには、コンロのセメントも乾くし。そしたらまた家で食事できるんだからさ」
「あーあ、それもこれも、誰かさんがコンロ爆発させるから・・・」
「・・・・・・」
わたしは、トラップの言葉に、返す言葉もなくうなだれた。
 
 
 
わたしたちの家のコンロは、下にオーブンがついてるタイプで・・・
昨日の夜ごはんのために、アツアツのスープの上にパイ皮を被せて焼く、ポットパイを作ってたのよね。
それを、オーブンに入れて、火をつけて。
・・・完璧だったはずなの。なのに!
もうすぐ焼きあがるよってときに、キットンがまた、薬がどうの薬草がどうのって大騒ぎしだして。
ルーミィがひっくり返しただの、トラップが吹き飛ばしただの、ゴチャゴチャ言ってる間に・・・
たはは、パイのこと、すっかり忘れちゃってたんだよねー。
んで、焼きすぎたスープとパイが爆発して・・・なんとコンロまでふっとんじゃったの!
あはははは、だから、わたしひとりが悪いんじゃないんだもん!
え?
一体、何を作ったんだって?
し、失礼ね!
ちゃんと、食べられるものを作ったわよ!!
 
 
 
猪鹿亭の喧騒の中で、トラップが叫ぶ。
「おーい、リタ! ちゅうもーん!」
しかし、呼べど叫べど、リタは姿を見せなくて。
「・・・どうしたのかな?」
わたしたちが首を傾げていると、必死の形相でルタがやってきた。
リタと同じオレンジ色の髪を短く切り、ぶかぶかのエプロンをつけている。
普段から、リタと一緒に猪鹿亭を手伝っているんだけど・・・
額には汗を浮かべ、エプロンも肩ヒモが落ちてしまっている有様で。
いつもの数倍、余裕がなさそうだった。
「どうしたの? 今日はずいぶん、忙しそうね」
注文の間にルタに尋ねても、メモを取るのに必死で顔もあげられないみたい。
ルタは注文をぶつぶつ繰り返しながら、やっとのことでメモを取り終わると、ふう、とため息をついた。
「あのね、お姉ちゃんが、風邪ひいて倒れちゃったんだ。だから今日は、僕ひとりなの」
「ええっ、リタが?」
「へー、リタでも、風邪ひくんだな」
「・・・トラップ、その言い方はなんだか失礼だぞ」
「りたー、かぜひいたんかぁ?」
「最近、寒いデシからね」
「そうですか、でしたら特製風邪薬の開発を急がなければいけませんね」
「・・・それって、さっき混ぜてたやつか?」
ルタの言葉に、わたしたちは一斉に声をあげた。
「だから、今日はこんなに大変そうなのね・・・」
改めてまわりを見てみると、お客さんのいないテーブルに空いた食器が散らかったままだし、向こうのほうでおじさんたちがメシはまだかと叫んでるし・・・
ううむ、ルタひとりじゃ、確かにしんどそう!
ランチタイムからこれじゃ、ディナータイムはもっとすごいことになるだろうな。
「・・・わたし、手伝うよ!」
わたしが思わず立ち上がって言うと、ルタがびっくりして叫んだ。
「ええっ、ほんと?」
「うん! 食器片付けたり、注文とったりするくらい、わたしでもできるよ! 手伝わせて?」
「パステルが手伝ってくれれば、助かるけど・・・」
ルタは、ほっとしたように笑ってくれたけど。
うちのパーティの連中はというと・・・
「だぁぁ、やめとけやめとけ! 皿落っことして割って、メチャクチャにするに決まってる!」
「おれも手伝えたらいいんだけど・・・午後はバイトだしなぁ・・・」
「おれも、バイトだ・・・」
「ぱーるぅ、ルーミィもてつだうお!」
「・・・ルーミィしゃんは、パステルおねーしゃんの応援するといいデシよ」
「わたしは薬の調合をしないといけませんからねぇ」
「・・・・・・」
ひとり、失礼なこと言ってるヤツは放っておくにしても。
キットンもともかく、頼りになるクレイとノルがバイトってことは、わたし一人なんだ・・・
なんだか、急に心細くなってきたかも。
で、でも!
リタにはいつもお世話になってるし・・・このままじゃ、ルタがかわいそうだし。
「大丈夫! なんとかなるわよ!」
わたしはヤケクソの笑顔で、ガッツポーズをとった。
 
 
 
そして、その日のディナータイム。
「パステル嬢ちゃんー! こっち、注文―!」
「は、は~い! ただいま!」
リタのエプロンを借りて、猪鹿亭を駆け回る。
え、店の中を、駆け回れるはずがないって?
ところがどっこい、ほんと、それくらいの忙しさなのよ!
目が回るほど忙しいって、こういうことを言うのね。
それに、『安い・早い・うまい』をウリにしてる猪鹿亭だからね、元々の活気が違う。
安いから、みんないっぱい頼んでくれるし。厨房から料理ができあがってくるのも、早いし。
それを、ほかほかのおいしいうちに、お客さまに持っていかなくちゃならない。
改めて、リタを尊敬してしまう。
彼女だったら、これくらい余裕でさばけてしまうんだろうな。
はぁ~、気安く手伝うなんて言っちゃったけど・・・これは大変だわ!
わたしが、空いたテーブルを片付けながら、ぜえぜえと息をついていると。
「おいパステル! んなとこでサボってんじゃねえ!」
そう叫んだのは、トラップだ。
 
なんでトラップがここにいるのかって?
そうなのよ。
どういう風のふきまわしか、せっかく自分のバイトが休みなのに、わたしと一緒にウエイトレス(男の子だからウエイターっていうのかな?)やってくれてるんだよね!
クレイたちが、食事を終えてバイトに行ったり、家に帰ったりする中・・・
わたしが、リタのエプロンを締めていると、トラップも、予備のエプロンを借りていたのだった。
驚いて「どうしたの?」って聞いたら、「おめぇが、猪鹿亭に迷惑かけて、出入り禁止になったら困るからな!」なんて言ってたけど・・・
助かったー!
よかったよかった。
トラップって身軽だし。それに、要領もいい。
トレイにいっぱいに料理を載せて、ひょいひょいとテーブルの間をすり抜けて、お客さんのところへ持って行って。
その帰りに、空いたお皿を下げてくるの。
いや、わたしだって、もちろんがんばってるよ?
ただ・・・頭ではわかってるんだけどね。
あっちで呼ばれ、こっちで呼ばれ・・・ってやってるうちに、何をしなきゃいけなかったのか、忘れちゃうんだよねー。
たはは・・・とほほ。
 
今もそうで。
思わずテーブルの間で途方にくれていると、よろよろと歩いているルタに目が留まった。
何人前だろ? 大きな土鍋に入った煮込み料理みたいで。
あ! ふらついた!
「ルタ、だいじょぶ?」
「あ、パステル・・・」
慌てて近づいて声をかけると、ルタは困った顔でわたしを見上げる。
「貸して、わたしが運んであげるよ!」
「だ、大丈夫だよ!」
「もー、エンリョしないの! わたしのほうが、まだ力あると思うし」
「・・・ありがとう」
よいしょっと土鍋を受け取ると、ルタは少し頬を染めて、恥ずかしそうにうなずいた。
かーわいい!
こないだ海に行ったときには、水着を人魚に盗られて困ってたわたしに、タオル貸してくれたし・・・
なんだか、かわいい弟って感じ?
ルーミィのこともそうだけど、ほら、わたしって、結構誰かの面倒見たりするの好きじゃない?
トラップには、「自分の面倒もまともに見れねーくせに、人の世話焼いてんじゃねぇ!」ってよく言われるけど。
だから、ルーミィやルタに頼ってもらえるのが、嬉しくてしょうがないんだよね。
「パステルちゃーん、遅いぞー」
そのテーブルに着くと、おじさんたちが一斉にブーイングを浴びせてきた。
みんなシルバーリーブの顔見知り。八百屋さんだったり、雑貨屋さんだったり、いつも気軽に世間話をするような間柄だ。
でも、今は従業員とお客さまの関係だからね。
「す、すみません・・・」
わたしとルタは、並んで頭を下げる。
おじさんたちは、笑いながらいいよいいよと手を振ってくれた。
「パステルちゃんはともかく、ルタじゃ頼りねぇなぁ」
「そそ、やっぱリタじゃないとな! 色気はないけど、やっぱあれでも看板娘の名はダテじゃないな!」
その言葉にハッとしてルタを見る。
ルタは・・・顔を赤くして、うつむいていた。
「そ、そんな! ルタだって、がんばってるんですよ!」
わたしは、思わずエプロンの裾を握りしめて、声を張り上げてしまった。
「すごく優しいイイコだし・・・今日だって、リタの分まで、こんなに汗かいて走り回って・・・こんな小さい体で・・・!」
おっと、いけない! 涙が出てきそう。
歯を喰いしばっておじさんたちをにらみつけると、おじさんたちは気まずそうに頭を掻いて顔を見合わせた。
「いや、まあ、そりゃーそうだけどよぅ・・・」
「ま、そうだなぁ。ウチのガキなんて、まだその辺遊びまわってるモンなぁ」
「そうだそうだ、えらいよな、ルタは!」
わたしがホッとしてルタに微笑みかけたそのとき・・・大声が猪鹿亭に響いた。
「だぁぁ、ちょっと待ってろっつーの!」
「んだとぉ、トラップ! お前、客に向かってなんてクチきいてんだ!」
びっくりして振り向くと。
両手いっぱいにお皿を持ったトラップが、お客さまとやりあっていた。
あっちゃぁ・・・
「おめーみてぇなマナーの悪いオヤジ、客なんかじゃねえ!」
んもう、わたしには、お皿を割ったら猪鹿亭に出入り禁止になるとか言ってたくせに!
お目付け役のつもりで来てくれたのかも知れないけど、これだもんなぁ・・・
「ちょ、ちょっと、トラップ!」
タンカ切ってるトラップの首根っこを、ぐいと引っ張る。
「うっせー!」
「うっせーじゃないでしょ、もう! ・・・お客さま、ほんと申し訳ありません! すぐお持ちしますから!」
わたしは、ふくれっつらのトラップを引きずって、お客さまに謝ったのだった・・・
もう! 余計な仕事、増やさないでよね!
 
 
 
「はぁぁ・・・」
「ふぅぅ・・・」
やっと終わった!
結局、トラップがブチ切れたのが3回。
私が割ったお皿が3枚。
・・・ルタが、お客さんにからかわれたのが、3回。
猪鹿亭のオーナーであり、リタとルタのお父さんであるドミンゴ・ドミニさんは、「よくやった」と言っておこづかいをくれたけど・・・
本当に、こんなのでお手伝いになったのかな?
ディナータイムを終えて、わたしとトラップが、従業員用の休憩室でぐったりしていると。
ルタがお茶を淹れて持ってきてくれた。
「お疲れさま。パステル、手伝ってくれてありがとう」
「おいルタ、おれは?」
お礼を言ってカップを受け取るわたしの横から、トラップが首を突っ込んでくる。
ルタは、そのトラップにもお茶のカップを差し出した。
「・・・トラップも、ありがとう」
「なんだよ、そのオマケみてぇな言い方は」
トラップが、悪態をついて、お茶をガブリと飲む。
「もう、当然でしょ! あんな騒ぎ起こしといて!」
「んだよ、おめぇだって、皿割ってただろーが!」
「や、別に・・・それはいいんだけど」
「いいの!?」
「いいのかよ!?」
わたしとトラップが思わず言うと、ルタはモゴモゴと口を動かして、わたしのそばにちょこんと座った。
どうしたんだろ?
何か、言いたいことがあるみたい。
「どしたの?」
「あのね、僕・・・」
しばらくもじもじしていたルタは、思い切ったように顔を上げて。なんとこう言ったのだった。
「僕、パステルみたいなお嫁さんが欲しいな」
「ブハッ!!!!」
「・・・ちょっと、なんでトラップが吹きだすのよ!」
わたしは、背中を丸めてゲホゲホ言ってるトラップを睨みつけた。
もう、トラップのせいで、驚きそびれちゃったじゃない!
「ル、ルタ・・・いきなり何を言い出すのかと思えば・・・」
しどろもどろで尋ねると、ルタは顔を赤くして、わたしを見上げた。
「・・・ほら、さっきもそうだったけど。僕、頼りないってよく言われるんだ。あんまり、しゃべるのも明るくするのも得意じゃないし・・・」
う、まぁ、確かにね。
ルタは・・・リタがあんまり元気すぎるからか、その影に隠れて静かにしてるほうが好きみたいだし。
リタが、後から産まれてくるルタの分まで元気を奪っちゃったんじゃないか、なんて言ってたくらい。
「だから、パステルみたいに、明るくて元気なお嫁さんが欲しいんだ」
「ああ、そういうことね」
そっか、ちょっと分かっちゃったかも。
シスコンっていうと言い過ぎだけど、たぶんそれに近い感情なんだろうな。
そんなこと言ったら、きっとルタは怒るんだろうけど。
うーん、やっぱり、かわいい!
「おめぇ、ガキのくせに・・・なーにが、お嫁さんが欲しい・・・だ!」
むせていたトラップが立ち直り、おもむろにルタの頭をポカッと叩く。
わたしは思わずルタを抱きしめた。
「あ、こら! ルタになんてことするの!」
「うう・・・」
ルタは、叩かれた頭をさすりつつ、トラップを見上げる。
「僕、ガキじゃないもん。こんなことでムキになるトラップとは違って、ね」
あはは、ルタったら、言う言う!
さしものトラップも、ぎりぎりと歯ぎしりして悔しがった。
「う、うぐぐぐ・・・なんてクソナマイキなガキだ!」
ルタは悔しがるトラップを無視して、わたしに向き直った。
「ね、パステルは?」
ルタにじっと見つめられて、なんだか心の奥がほんわかしてしまう。
「えー、わたし?」
なんだかプロポーズみたいで、くすぐったいけど・・・
いつか、ルタが大きくなったときに、わたしのことを初恋のお姉さんだと思ってくれたら嬉しいかも。
わたしは、にっこりとルタに笑いかけた。
「わたしも、ルタみたいに優しい男の子、好きだよ」
ルタも嬉しそうににっこりした。
「そうだ! パステル、お姉ちゃんのお見舞い行ってあげてよ」
「そうだね! リタ、大丈夫かな?」
「うん、さっき見に行ったときは、起きてたよ。でも、風邪がうつらないように気をつけてね」
ルタに見送られて、リタの部屋へ向かう。
休憩室のドアを閉めた途端、部屋の中で、トラップの叫び声が聞こえたような気がしたけど・・・気のせいかな?
 
 
 
「リタぁ、だいじょぶ?」
「あれ・・・パステル・・・?」
リタの部屋へ行ったわたし。
彼女は、タオルを額にあてて、ぐったりと横になっていた。
熱があるせいか、顔が赤くて、目もトロンとしている。
いつもぱっと明るくて、キラキラ輝いてるようなリタが、こんなふうだと・・・なんだか別人みたい。
「父ちゃんに聞いたよ、パステルが、店手伝ってくれたんだって?」
「いやぁ・・・ははは。たいしてお役には立てなかったけど。リタってすごいのね、いつもあれだけの仕事を軽々とこなしてるんだから」
「何言ってんのよ・・・ウエイトレスくらい、たいしたことじゃないわよ。冒険者やってるパステルのほうが、よっぽどすごいじゃな・・・げほん、ゲホゲホ・・・」
「リタ!」
うわ、やっぱり辛そう!
わたしは、咳き込むリタの背中をさすってあげた。
「ん、ごめん。だいぶ楽になったんだけど、まだ・・・」
「そっか! 休んでるところにお邪魔しちゃって、ごめんね。明日もわたしとトラップで手伝うから、任せといてよ」
「へ、トラップも?」
「そうなのよ。明日は雪が降るかもね!」
「ふーん・・・じゃあ、もうちょっと寝込んでたほうがいいかしら?」
「えええ? なんでよ?」
ニヤリと笑うリタに、思わずわたしが声を荒げたときだった。
「パステルー! どこですかぁー?」
窓がビリビリするくらいの、大声。
あれは、キットンだな。
どたどたという足音と共に近づいてくる。
わたしは、リタに一度うなずきかけると、部屋から顔を出した。
「あ、パステル! 探したんですよ!」
「探したんですよ、じゃないわよ! 病気のリタが寝てるっていうのに、そんな大声出さないでよ」
わたしが怒っても、キットンはまったくおかまいなし。
ぐふふと笑って、カバンから小さなビンを取り出した。
「できましたよ、キットン特製、風邪薬です!」
 
 
 
「・・・ねえ、ほんとにこれで治るの?」
「治りますとも! バプロンの実と、ルルー草、エスタ・クイーブの根・・・それに、ゴンタックエキスが入ってるんですから!」
「・・・へ、へぇ、そうなの」
そんなこと言われても、わたしとリタはもちろんちんぷんかんぷん。
様子を見にやってきたルタとトラップも、興味津々で見守っている。
リタは、薄気味悪そうに、どろっとした液体の入ったビンを振り振りしていたけど・・・
意を決して、それを一息に飲み干した。
「う、うげー!」
「はい、お姉ちゃん、お水!」
不味そうに顔をしかめるリタに、すかさずルタが水の入ったコップを差し出す。
「・・・どう?」
「あ、あれ? うん、うんうん・・・なんだか、治った・・・かも」
「えええっ、本当に!?」
リタは、額に手を当てたり、頭を振ってみたり、わざと咳をしてみたりしていたけど・・・
大きくうなずいた。
「すごい、体が軽くなった! キットンの薬って、すごいのね」
「でへへ、いや、まあ、それほどでも・・・あるんですけどね」
キットンがでれでれと頭をかきむしって、カバンからもうひとつ小瓶を出した。
「今夜ゆっくり休めば、明日にはいつもどおり動けるようになると思いますよ。ほらこれ、栄養補給ドリンクも差し上げます」
それを受け取ったリタのそばへ、ルタが甘えるように寄り添う。
「お姉ちゃん・・・」
ルタの頭をぐいぐいと撫でて、リタはニッと笑った。
「まったく、なんて顔してんのよ!」
いいなぁ、姉弟って!
わたしは、まるでリタが不治の病から生還したかのように、すっかり感動していた。
なのに・・・
「あーあ、ったく。んじゃあ、明日はメシ代タダにしてくれよな!」
情緒もへったくれもない、トラップの声。
「いいのよリタ、さっきドミンゴさんから、おこづかいもらってるんだから!」
でも、リタは苦笑しながら、うなずいた。
「それでもいいわよ、明日のごはんくらい。ほんと、助かったし。ね、ルタ」
でも、ルタは複雑そう。
ちょっと残念そうに首を傾げて、わたしを見た。
「そっか・・・じゃあ、もうパステルは一緒に働いてくれないの?」
「もう! なんてこと言うのよ、この子は! わたしより、パステルのほうがいいってこと!?」
ルタの言葉を聞いたリタが、オオゲサな身振りで天井を仰ぐ。
うふふ、そんなことないよ、リタ。
ルタは、やっぱりお姉ちゃんが大好きなんだと思うよ。
なごやかなムードの中で、トラップがひとり血相を変えて、ルタに食ってかかった。
「じょーだんじゃねえ! おめぇ、さっき言ったこと忘れたのかよ!」
「忘れてないよ? トラップが勝手にそう言ってるだけだもん。僕知らない」
「ぐ・・・」
「え、なになに? 何の話?」
ふたりでごそごそ話してるけど、なんだろ?
私がふたりに尋ねると、ルタが教えてくれようとしたけど・・・
「あのね、トラップが、パステルはおれの・・・・・・あいたっ!」
トラップにはたかれて、頭を抱えてしまった。
「あ、ひどい! ルタに何するの!?」
わたしがすかさずトラップを睨みつけると、トラップはブンむくれた顔でそっぽを向いた。
「このガキが、余計なこと言おうとするからだよ!」
「余計なことってなによ! ・・・なんかやましいことでもあるんじゃないでしょうね?」
トラップの頭をバシッとはたいてやる。
「いってえな! この暴力女!」
「今のは、ルタのかわりの仕返しよ!」
バシバシと叩き合うわたしとトラップは、背後でリタとキットンがこそこそと言い合っているのに、全く気づかなかった。
 
 
 
「そういえば・・・さっき、わたしがここに来たときにですね。猪鹿亭の中から・・・おれのモンだから、どうのこうの・・・なんて叫び声が聞こえましたけど・・・」
「わたしも、パステルがお見舞いに来てくれるほんの少し前に・・・お前はお前の一番を見つけろとかなんとか、聞こえた気がする・・・」
「ははあ、つまり・・・」
「・・・そういうことね」


 
****************


 
あとがき
 
大変長らくおまたせいたしました。
なおみさんよりいただきました、34000キリリクです。
『息子とパステルを取り合うトラップ』ということでしたが、結婚後設定は書かないことにしているので・・・
なおみさんの配慮に甘えて、ちょっと変えさせていただきました。
 
一応、息子テイストで読んでもらえるように、ルタと取り合ってもらったんですが・・・いかがでしょうか。
ううむ、弟キャラも、書いてて結構楽しいです。
きっと、リタはルタのことを内心ものすごく可愛く思ってるんだろうなとか、考えながら書いてました。
 
今回の遊びは、風邪薬。
私は、バプロンの実と、カツコン糖を愛用してます(笑)
 
最近、猪鹿亭ばっかりです!
そろそろ、ちゃんと冒険に行かせてあげたい!
しかし、冒険に行かせるとなると、これまたなかなか私の準備も必要なわけで(苦笑)
できるだけ早く公開できるように、がんばります。
 
あ~、一度、キットンも封印しないとなぁ。これではマンネリになってしまいますね。もう遅い?
 
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60000Hit,Thanks!!

ただいまキリリク停止中

はじめに

当ブログはFQの非公式ファンサイトです。
公式各所とは一切関係ございません。

無断転載などはやめてください。

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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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