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まいむのFQ二次創作

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おつかいクエストⅢ~注目の冒険者を取材せよ!~(1)

シルバーリーブの印刷屋の若旦那から、仕事を頼まれたパステル。
『今注目の冒険者』という特集の、記事を書いてほしいという内容で。
今回のおつかいクエストは・・・なんと、取材!?

※フォーチュンクエスト外伝 パステルの旅立ちを下敷きにしています。





  「おや、パステルさん! ご苦労様です!」
「すいませーん、原稿、遅くなっちゃって・・・」
「いえいえ、大丈夫ですよ!」
わたしは、原稿の束を抱えて、シルバーリーブの印刷屋さんに来ていた。
わたしの小説を連載させてもらってる、おなじみ『冒険時代』の出版元。
こんな小さな村の印刷屋さんから、結構な部数を出してるんだから、たいしたもんだよねー。
いや、別にその『冒険時代』に書かせてもらってる自分を、自画自賛するわけじゃ・・・ないつもりなんだけどね、えへへ。
「ちょうどよかった、パステルさん。お願いしたいことがあるんですよ」
原稿を受け取った若旦那が、にこにことわたしに笑いかける。
「ええっ、もしかして、ペースをあげろとか、そういうことですか!?」
締め切りだから書いて、と言われれば書けないことはないけど・・・
はっきり言ってわたし、執筆ペースは速くないと思うから。
思わず叫んだわたしに、若旦那は慌てて手を振った。
「いや、連載の話じゃなくて。ちょっと別のことを、お願いしたいんです」
「別のこと?」
「はい、今度ウチで特集を組むんですがね、それが『今注目の冒険者』っていうんです」
今注目の冒険者!?
それってもしかして、わたしたちを特集してくれるってこと!?
表紙に、バーンと載っちゃって、インタビューされちゃうとか、そういうこと!?
わたしが目をキラキラさせて若旦那を見ると、彼はにっこりうなずいてこう言った。
「そのインタビュー原稿をね、ぜひパステルさんに書いていただきたいんですよ!」
 
 
「けっ、あったりめーだろ! どこをどうやったら、おれらみてぇなのが注目の冒険者になるんだよ!」
その日の夜ご飯のときに、その話をみんなにしたわたし。
案の定というかなんというか・・・思いっきり、トラップに笑われた。
「でもさ、そんなふうに話持ちかけられたら、誰だって誤解すると思わない?」
わたしが口を尖らせると、うんうんとうなずいてくれたのはクレイだ。
「まあな、俺たちだって、そこそこのことはしてるし」
「ぎゃっはっは、相変わらずレベルは低いですけどねー」
キットンも、笑いながら同意してくれる。
「いんたびゅーって、なんら? おいしいのか?」
「ルーミィしゃん、たぶん、食べ物じゃないと思うデシ」
まぁ、このふたりは置いとくとして。
「でも、パステルに、ぜひ書いて欲しいっていうなら、それはいい話だと思う」
静かなノルの言葉に、わたしはじーんとしてしまった。
そう、そうなのよ!
がっくりしてたわたしに、若旦那が言ってくれた言葉。
 
「ああ、そうか、パステルさんたちも冒険者ですもんね! こんなお話、失礼でしたね。
いえ、忘れていたわけじゃないんですよ、そんなヒクツにならないでくださいよ。僕としては、パステルさんにはどうしても書き手になってもらいたかったんです。パステルさんの文章は人気がありますからね」
 
なーんて。
そんなふうに言ってもらったら、もうやるっきゃないじゃない!
だから、快く引き受けてきたんだけど。
「ふーん、んで、どんなヤツなんだよ? その今注目の冒険者ってのは」
さして興味もなさそうな様子で、トラップが頬杖をつく。
「それがね、なんでも、独りでトレジャーハントをしてる冒険者らしいよ」
「トレジャーハント!?」
俄然、トラップの目が輝いた。
まあ、シーフっていう職業も、トレジャーハンターみたいなものだもんね。
名前は違えどやってることは変わらないし。トラップの実家のブーツ一家は、実際そうやって活動してるみたいだし。
「ってことは、シーフの技能も持ってんのか? なんて名前だよ、そいつ」
「あ、それ聞いてない」
そうそう、わたしったら、がっかりやら嬉しいやらで、肝心なところを効き忘れちゃったのよね!
わたしが言うのを聞いて、トラップはがっくり肩を落とす。
「・・・そりゃー、一度そいつの顔見てやらなけりゃ、気が済まねえ!」
妙なライバル意識を燃やして、トラップはあさってのほうを向いて握りこぶしを振りかざした。
「独りでってことは、ファイターとしての腕もあるんだろうな」
「そうでしょうね」
「そうそう、しかもね、わたしの1コ上だっていうんだから・・・すごいよね」
「へぇー」
「なかなかない機会だし、いいんじゃないか?」
わたしたちがわいわい盛り上がっていると、パンをほおばっていたルーミィが、もぐもぐしながら首をかしげた。
「ぱーるぅ、なんのはなしらぁ?」
「うん、あのね。クエストってわけじゃないんだけど・・・お仕事よ」
「おでかけするのかぁ?」
「そうよ、だからごはん終わったら支度しようね」
わたしが引き受けたのは、インタビューの原稿だけじゃなくて。
なんと、密着取材なの!
なんでも、その冒険者が遺跡のトレジャーハントに挑戦するらしくて。
若旦那の手配で、それに同行することになったんだ。
もちろん、わたし一人じゃなくて、パーティ全員でね。
あくまで取材だから、基本的に彼のあとについて回るだけなんだけど。
独りで遺跡に宝物を探しに行くトレジャーハンター・・・どんな冒険者なんだろう!?
 
 
わたしたちが、そのトレジャーハンターに会うためにやってきた、フィアルーマという町。
ここの近くに遺跡があるということで、この町の食堂で待ち合わせをしてるんだけど・・・
「おい、ここでいいのか?」
先頭をひとりで歩いていたトラップが、わたしを振り返る。
わたしは、印刷屋の若旦那にもらったメモを見ながら答えた。
「たぶん・・・そこの看板、何て書いてある?」
「踊る晩餐亭だってよ」
「あ、そこそこ!」
わたしがうなずくと、クレイがメモを覗き込んだ。
「で・・・なになに、赤いバンダナが目印、と」
「うん。トレードマークにしてるみたいね」
「とえーどまーく?」
わたしと手をつないでいたルーミィが、きょとんとして聞く。
「トレードマークって言うのはね、その人の、目印になるようなものよ。例えば・・・ルーミィのとがった耳とか、トラップの緑色の帽子とか・・・」
「クレイの竹アーマーもそうですね」
キットンと、その後ろでノルもうなずいている。
わたしも思わずうなずきかけたけど、クレイがキットンを睨みつけたのを見て、慌てて口をつぐんだ。
「キットン・・・なんか言ったか?」
「いえいえ、なんにも言ってませ・・・うぐぐ、ぐるじい」
クレイに首を締められるキットン。
ひゃー、危ない危ない、禁句だよね!
わたしたちがそんなことをやってると。
ひとりでさっさと踊る晩餐亭に入っていたトラップが、不機嫌そうな顔で扉から顔を出した。
「おめえら何やってんだよ! いたぜ、赤いバンダナの冒険者!」
 
 
「ほれ、あいつがそうだってよ」
トラップが指差す先。
「おーっ、あんたたちが、『冒険時代』の取材でやってきたっていう記者さん?」
なんだなんだ、トレジャーハンターっていうから、どんなゴツイ冒険者かと思えば・・・
ずいぶん気さくに、わたしたちに手を振るその冒険者は。
赤いバンダナで覆った黒い短い髪。小柄な体に、薄汚れたレザーアーマーをつけて。
日焼けした顔の中でクルクルと動く黒い瞳が印象的な、元気いっぱいの普通の男の子だった。
あれ? この子・・・
わたし、どこかで、会ったことない?
かすかなデジャブを感じながら、わたしは自己紹介をした。
「あ、はい。一応、わたしが記事を書かせてもらう、パステル・G・キングです」
「あー、知ってる知ってる! おれも時々読んでるんだぜ、『冒険時代』!」
にこにこと笑ってうなずく彼。
「面白いよー、あれ!」
「ほ、ほんとですかぁ!」
う、嬉しい!
何が嬉しいって、自分の書いたものを褒められるのが、一番嬉しいよね!
「んなことどうでもいいだろ! んで、おめー、名前なんつーんだよ」
わたしが思わずウルウルしていると、しびれを切らしたトラップが、口をはさんだ。
あ、あなたねぇ・・・どうでもいいってことは、ないでしょ!
「悪い悪い。おれ、カシアス・ロッパっていうんだ! 知っての通り、なりたてだけどトレジャーハンターやってる」
カシアス・ロッパ!!??
「えええええーっ、うっそぉ!」
カシアス・ロッパって、わたしが冒険者になるきっかけになった・・・あのカシアスなの?
そうか、だからどこかで会ったことがあるような気がしたんだ!
思わず叫んだわたしに、みんなが注目する。
当のカシアスも、黒い目をまんまるにして、わたしを見つめていた。
「カシアス! わたし、あなたに一度会ってるのよ! ええと・・・覚えてないかな、3年くらい前に、乗合馬車の中で、あなたに冒険者の手引きをもらったの! わたし、それがきっかけで冒険者になったんだから!」
「え、ええ!?」
わたしの言葉に、カシアスはびっくりして考え込んだ。
「そ、そういえば・・・あの、べそべそ泣いてたやつか!?」
「うっ・・・そ、そうよ!」
べそべそ泣いてたって・・・わたし、やっぱりそんな風に見られてたのね。
ま、ほんとのことなんだけど。
わたしが両親を亡くしてすぐのときだ。引き取ってもらうはずのおばあさんの家を飛び出して・・・泣きながら乗った乗合馬車。そこで出会ったのが、冒険者になりたてのカシアスだったんだ。
わたしがうなずくと、カシアスはぱっと顔を輝かせて、わたしの両手を握りしめた。
「いやー、まじかよ! すげぇな、お前! ちゃんと冒険者なれたのかよ!」
そのまま、ぶんぶんと上下に振る。
なんだか・・・『今注目の冒険者』っていうイメージがガラガラと音を立てて崩れたんですけど・・・
それでも、こうして再会できるっていうのは、嬉しいよね!
しかもお互い冒険者として。
でも、あそこでカシアスに出会ってなかったら・・・ほんとにわたし、今頃どうしてたんだろう?
「カシアスだって、すごいじゃない!」
わたしたちがはしゃいでいると。その取り合っていた手の上に、ぽん、と新たに手が置かれた。
「わぁった、わぁったって。とりあえず、メシでも食いながら話そうぜ」
はっとして見ると、最高に不機嫌そうなトラップが、半眼でわたしたちを睨みつけていた。
 
 
「じゃあ、まず・・・冒険者になったきっかけとか、聞かせてもらえないかな」
食事をしながらのインタビュー。
本当は、1対1でやったほうがいいのかと思ってたけど・・・
トラップが、「んなもん、メシ食いながらでいーんじゃねぇの?」って言うし、カシアスも「みんなでわいわいやろうぜ!」って言ってくれたから、結局そのまま食堂ですることにしたんだ。
「きっかけ? うーん、おれんちはさ、ちっちゃい村で、農家やってんだけどさ。ま、そこが、よくモンスターに襲われるわけよ。っていっても、たいしたモンスターじゃない。ザコだけどな。んで、そいつら追い払ったり、戦ったりしてるうちに、冒険者としてやってくのも悪くないなって思ったんだ」
「ふーん、なるほど・・・」
「職業としてはファイターだけど、最近、トレジャーハンターとして冒険始めたところなんだ」
「あー、そうなんだ!」
「失礼、せっかくだから、冒険者カードを見せてもらってもいいかな?」
口を挟んだのは、クレイだ。
「ああ、いいよ!」
カシアスがポケットから取り出したカードを、みんなで覗き込む。
「レ、レベル12!!??」
「すごいな、きみ・・・まだ17歳だろう?」
「まぁ、そうだけど・・・レベル上がってくのって面白いし、モンスター倒すのも、楽しいしさ。気づいたら、こうなってた」
ひえー、これまでに出会った、ジュン・ケイやギアもすごいと思ったけど・・・
あの汚ない格好のいたずら小僧みたいだった(失礼!)カシアス・ロッパが、レベル12の冒険者になってるなんて。
すごい、すごいよ!
わたしは感動しながらも、手元のノートにカシアスの言葉を書き取っていく。
お仕事ですからね、きちんとインタビューしなきゃ!
「でも、そんなにファイターとしてがんばってたのに、どうして、トレジャーハンターになろうと思ったの?」
わたしが尋ねると、カシアスは、テーブルの上に身を乗り出した。
「それがさ! こないだ、ダンジョンで面白いモン見つけてさ! 魔法石なんだけど・・・それがエベリンで高く売れてさ。ただモンスターやっつけるよりも、こっちのほうが面白そうだと思って」
「ほほう、魔法石ですか!!」
それを聞いて興奮したのはキットンだ。
「どんなものなんでしょうね?」
「いやー、売っちまったからわかんねぇけど。今、エベリンでものすごく流行って、どんどん掘り出されてるみたいだぜ? その石のおかげで、なんだか注目の冒険者だとか、言われるようになってさ」
「はぁー、そうだったんだ!」
わたしが感心していると。
隣で、ぶすっとした顔でビールジョッキを傾けていたトラップが、低い怖い声で言った。
「てめぇで見つけたお宝がどんなもんかも把握してねーようなヤツが、トレジャーハンターだぁ? ったく、笑わせるぜ!」
「トラップ!」
まるっきり、ケンカふっかけてるとしか思えないその口調!
わたしとクレイが慌てて止めたけど、遅かった。
カシアスはきゅっと眉を吊り上げて、トラップを睨みつける。
「あんた、なんなんだい? さっきから、態度悪いよな」
トラップは、わざとらしくため息をついて、カシアスに指を突きつけた。
「トレジャーハンターだっていうから、どんなヤツかと思ってみりゃ。おれぁな、盗賊団ブーツ一家のトラップさまだ。お宝に関しちゃ、命懸けてんだよ! それを、おめぇみたいなド素人に、貴重なお宝をいじくられたとなりゃ、黙っちゃいられ・・・って、おい!」
トラップが、言葉の途中で、素っ頓狂な声で叫ぶ。
なな、なんと、なんと。
ムッとした顔でトラップの口舌を聞いていたカシアスが、急に、突きつけられた指に飛びついたのだった。
このまま殴り合い・・・!?と思いきや。
カシアスは、キラキラと目を輝かせて、トラップの手を握りしめている。
ええええ??
これには、不機嫌だったトラップも、腰を抜かさんばかりに驚いた。
「な、なんだよ、おめぇ。気持ち悪ぃな、離せって!」
「ブーツ一家!! あの盗賊団ブーツ一家の方なんッスか!?」
 気味悪がって振りほどこうとするトラップの手に、カシアスはしっかりとしがみついて叫んだ。
「トラさん、お願いッス! おれに、ワナを見抜く技を教えてください!」
 
ファイターとしてはかなりの冒険をこなしてきたものの、トレジャーハンターとしては駆け出しのカシアス。
ワナを調べたり、カギ開けをしたりするのは、苦手らしく。
先日も、ワナにかかって痛い目をみたんだそうだ。
うーん、見たところ、技術どうこうっていうよりも・・・おっちょこちょいとか、楽天家というか・・・そういう性格が災いしてるような気も、するんですけど。
え、わたしが言える立場じゃないって?
あはは、その通り・・・なんですけど。
「いやぁ、ギルドで習うっていうのも考えたんスけど、おれシーフじゃないんで入れてももらえないし」
もう、インタビューそっちのけ。
カシアスは、めいっぱいニコニコしながら、トラップに夢中になっている。
「すげえ、あのブーツ一家のトラさんに教えてもらえれば、百人力ッスよ!」
「誰も教えるなんて、言ってねーだろ! それに・・・なんなんだよ、そのトラさんって!」
「トラップさんだから、トラさんに決まってるじゃないッスか!」
まるで、子犬がじゃれついてるかのような光景。
トラップも、まるでメゲないカシアスに呆れ顔なんだけど。
あはは、トラップのあの顔!
ブンむくれながらも、なんだか悪い気はしないみたい。
「いいじゃないか、どうせ明日は遺跡のトレジャーハントに挑戦するんだろ? 遺跡だったら、ワナのひとつやふたつ、あるだろうし。ちょっとくらい、教えてやれば」
クレイがとりなすと、トラップは複雑そうな顔で、ぼそぼそと言った。
「ったく、ワナ外しっつーのはな、ちょっとやそっとで覚えられるような、カンタンなもんじゃねーんだよ!」
「ありがとうございまっす!」
ぺこんと頭を下げるカシアス。
「だーかーらー!」
トラップは、頭をかきむしって叫び・・・あきらめたように、どすんとイスに座ったのだった。



(2)へ続く
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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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