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まいむのFQ二次創作

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ベツジンジャー事件(2)

世にも珍しい薬草“ベツジンジャー”を手に入れたキットン。
飲んだ人がイメージした、別人に変身できるというシロモノだが。
もちろん、それを試してみないと気が済まないわけで・・・?

※キットン視点です。






 「誘惑対決ぅ!?!?!?」
 パステルとトラップの困惑した声が見事にハモりました。
 「ぐふふふ・・・これですよ」
 そこでわたしが掲げるのは、もちろんベツジンジャーをすりおろしたエキスです。
 「また変な薬かよ?」
 ゲンナリした顔のトラップ。失礼な!これは、これはとても貴重なサンプルなんですから!
 「どういうことよ、キットン」
 パステルもトラップも、トキメキノコもとい、トキドキノコの件がありますからね、ちょっと警戒してます。
 「これを飲んで、それぞれがそれぞれの思う、色気のある女性をイメージして・・・クレイを誘惑して、どっちがクレイの気を惹けるかっていう勝負ですよ」
 「チョイ待ち、どーゆうことだよ、おれに女装しろってことか?」
 わたしが舌好調で説明していると、トラップが口をはさんできました。
 「ああ、違います違います・・・げへへへ、これを飲むと、なんと別人に変身できるんですよ!」
 「ええええええーーー!」
 「まぁ、効果は数時間ですし、変身と言っても、まるっきり別人になれるわけではなくて・・・そのままの部分もあるみたいですが。胸なら、少なくとも今のパステルよりは大きくなるんじゃないですか?」
 「・・・なんか引っかかるところもあるんだけど・・・やる!わたし、やるわ!その代わり、わたしが勝ったら、トラップ」
 パステルは決意に満ちた目をトラップのほうに向けました。トラップはその迫力にたじろぎます。
 「な、なんだよ?」
 「わたしが勝ったら、もう色気がないとかなんとか、言わないでよね!」
 「でも例えパステルが勝っても、それはあくまで別人パステルのおかげですからね、パステル自身の色気というわけでは・・・うぐぐぐ、やめでぐだざい~!」
 ひ、ひどい。わたしはほんとのことを言ってるだけなのに、パステルに首を絞められました。
 「まぁ、おれが勝つからな、そんな心配はいらねーよ。色気タップリのねーちゃんを見事演じて、クレイちゃんをたぶらかしてみせるぜ!」
 トラップも、なんだかんだで乗り気です。こいつはただ単に、クレイをからかえるのが楽しいだけのようですが・・・
 それにしても、いい実験体が見つかったものです。しかも、同時にふたりも!
 これで、身近でその変身を観察することもできますし。
 いやいや、わたし、ツイてますです、はい。
 
 場所は変わってパステルの部屋。
 わたしは、ふたりのために、ベツジンジャーエキスにハチミツも入れて、ショウガ湯を作りました。
 それを、ふたりに差し出します。
 「さあ、これを飲んでください。自分のなりたい姿を、きっちりイメージするんです」
 真剣な顔でふたりはうなずき、小さなグラスの中身を飲み干しました!
 「う・・・!む、胸が苦しい!!」
 「なんか、体がギシギシするぞ・・・!」
 「おお、すぐに効果があるんですね!」
 おやおや、体の変化が伴うと、やっぱりちょっと苦しいようですね。
 声も変わるんでしょうか?骨格はどうなんでしょうね?
 わたしがわくわくして見守っていると、うめきながらかがみこんでいたパステルが先に身体を起こしました。
 「・・・もう、大丈夫みたい。なんか、変わった?」
 そうして顔を上げたパステル。
 おおおお、違います、確かに別人ですよ!
 まず、唇が違いますね。ぷっくりとして、何か塗ったかのようにしっとりとしています。
 目も変わりましたね。パッチリとしていたはずのパステルの目が、ちょっと切れ長になって、泣いた後でもないのに潤んでいます。
 わたしの引っ張ってきた姿見に、全身を映したパステル。
 「す、すごい!苦しいと思ったら、これよ、これ!重―い!」
 彼女は、胸に手をあてて大喜び。
 セーターの胸元が、明らかに膨らんでます。まるで、りんごをふたついれたかのよう。
 声も、ちょっとハスキーになってるみたいですね。
 ふむふむ、パステルは、髪の色はそのまま、背格好もそのままですね。
 「おおお、おれもだ!すげぇ~!」
 うわわわ、なんて声してるんですか!
 コロコロした甘い高い声!その状態でおれなんて言わないでください!
 顔をあげたトラップは、パステルとは逆に目がパッチリ。そして頬がちょっとふっくらして、ピンク色になったような気がします。
 「すげぇ~、すげぇ~!おおお、やわらけぇ~!」
 トラップはその可愛らしい声で、パステルと同じくらい(注:変身後です、もちろん)大きくなった胸を、ぼよんぼよんと揺らして騒いでいます。
 う~む、やはり、別人になるのは姿かたちだけですね。このバカっぷりは、トラップそのものです。
 「もう!やめなさいよ、イヤラシイ!」
 「ちぇ、いーじゃんかよ、自分のオッパイなんだから。じゃ、おめえが触らしてくれんのかよ」
 「じょ、じょうだんじゃないわよー!ひとりでやってなさいよ!」
 やれやれ、このふたりに、女性の色気のなんたるかを、語る資格はあるんでしょうかね。
 
 シルバーリーブにマリーナがいれば、何かうってつけの古着を貸してくれたんでしょうけど。
 あいにく、彼女は砂漠の大都市エベリンの住人。今回は、セール中の服屋で、ふたりの衣装を見繕いました。
 我々のような貧乏パーティにそんな余裕があるのかって?
 ううう、わたしの、自腹ですぅ・・・トラップに、こう言われまして。
 「おめーが言い出した作戦なんだから、おめーが出すのがとーぜんだろ!」
 わたしは別人になる様子が観察したかっただけなんですが・・・成り行き上しょうがないですね。
 それでも、ふたりが(主にトラップが)着の身着のまま家出をしてきた姉妹を演じたおかげで、セール価格よりもさらに安くしてもらったんですが。
 ちなみに、ふたりのことを知っているはずの服屋の店員も、まったくトラップとパステルに気づきませんでした。
 クレイに近づくための口実も、さっきの演技と同じ家出姉妹。
 オトナっぽくなったパステルは姉。ロリータ声になってしまったトラップは妹。
 「結婚相手を見つけるために家出をしたところ、辿り着いた小さな村で白馬の王子様に出会う・・・そしてふたりでひとめぼれするってわけだ」
 ひらひらのエプロンドレス。いつもと同じ赤い髪をツインテールにしたトラップが、あぐらをかいて力説します。
 あーあ、そんなふうにまえかがみになったら、胸がこぼれおちそうですよ。しかも、タイツ履いてるとはいえ、ミニスカートで胡坐をかいちゃいけませんって。
 「そうね、お婿さんを連れて帰れば、イヤな婚約者と結婚せずに済むってのは、どう?」
 トラップの案に賛成するパステル。彼女は普段束ねている髪を、そのままおろしています。胸元を大胆に出したセーターとタイトなミニスカート。
 ふたりの考えは、どうも偏っているようです。今が冬でよかったですよ。夏だったら、一体どんな格好になっていたことやら・・・特にトラップなんて、下手したら上半身ハダカでアピールしそうです。
 女性の色気というものはですね、肌の露出をすればいいってもんじゃないんですよ!そう思いません?なんというか、奥ゆかしさや、優しさといったものが自然ににじみ出てこそ・・・
 「さ、行きましょ、キットン」
 「へっへっへ・・・待ってろよ、クレイちゃん」
 わたしの憤りは置いといて、今はこのベツジンふたりの対決をしないといけませんね。
 まず、わたしがクレイにふたりを紹介するところから始まります。
 でへへ、クレイ、ご迷惑をおかけしますね。
 ぐふふ・・・どんな展開になるのか、楽しみですね・・・ぐふふふふ。 
 
「クレイ、ちょっといいですか?あなたにお客さんがきてますよ」
 部屋のドアをノックすると、何も知らないノンキなクレイの声が返ってきました。
「お客さん?おれに客って、なんだぁ?」
 すると、急にトラップがわたしを押しのけました。
 「ああ~ん、クレイさまぁ~!お会いしたかったですぅ~!」
 こ、これがトラップなんて、大笑いですよー!
 ツインテールをなびかせて部屋に飛び込むと、ヤツはいきなりクレイに飛びつきました。
 「ちょ、な、なんですか、あなたは!」
 「いやーん、クレイさまったらぁ~」
 混乱するクレイに、トラップはボインボインと胸を押し付けています。
 ぎゃはははは、ク、クレイの戸惑ったあの顔!真剣な風を装いながらも、その胸の感触に鼻の下が伸びてますよ!実はトラップだってことも知らずに!!
 ぐ、ぐふふ・・・げふ・・・ふ、噴き出してしまいそうです。
 そんなわたしを隠すように前へ出たパステル。
 「あの・・・わ、わたくしたち、わけあって、家出をしてきたんです。わたしは姉のパス・・・パルラス、そちらは妹のトラ・・・ネスと申します」
 おお、ちょっと噛みましたけど、パステルにしては上出来な演技ですよ。これは、わたしも負けてられませんね。
 「彼女たちは、家を飛び出して、お婿さん候補を探す旅をしているんですよ。で・・・」
 わたしの言葉を、トラップが引き継ぎました。
 「この村でクレイさまを見つけて、もー、ひとめぼれしちゃったって、わけでぇ~す!」
 そして、胸の前で手を組み合わせて、首を傾げます。
 ト・・・トラップ、しかしあなた、普段オトナの女性がいいって言ってるくせに、パステルとか、今のブリッコバージョンとか、変な趣味もあるんですねぇ。
 「ト、トラ・・・ネスは黙ってなさい!もう、わた・・・わたくしの伴侶となるお方は、クレイ・・・様しか有り得ないんです。どうか・・・どうか、わたくしと結婚してください!」
 パステルはパステルで、深窓の令嬢の雰囲気で押しているようです。なるほど、イメージはドーマのクレイの元婚約者、サラでしょうか。それとも、トラップハウスのマックス・ザ・トラップでしょうか。女の嫉みというか、怨念を感じるのは気のせいでしょうかね?
 「なによぉ~、おねーさまみたいな色気ナシよりも、あたしみたいなプリティグラマーのほうがいいに決まってるじゃない!」
 「なんですって!わたしの・・・じゃなかった、わたくしの今のこの格好の、どこが色気ナシなの・・・なんですの?」
 腰をクネッとさせて、アピールしているようですが・・・あんまり極端で、それじゃラジオ体操ですよ。
 「ねぇ~、クレイさまぁ~、ほらぁ、あたしのほうがセクシィよねぇ?」
 「そうやって体の安売りするのって、ものすっごく低レベル!ですわ!ねぇ、クレイ様もそう思いませんこと?」
 トラップが胸を寄せあげて迫れば、負けじとパステルが上目遣いで髪をかきあげてうなじを見せます。
 「え、あ、その~、あなたはとても可愛らしいし、その、あなたのほうはとてもきれいで・・・どちらも、それぞれに魅力がありますよ」
 囲まれたクレイは顔を真っ赤にして、ふたりから目をそらすのに必死です。
 ふたりの口げんかが、いつもの調子なのにも気づくそぶりはありません。さすがクレイですね~。 
 「クレイ、だから、ふたりのどっちがいいか、選んでくださいよ」
 わたしが言うと、クレイは我に返ってふたりを引き剥がしました。
 「ま、待てよ。そんな選べるわけないじゃないか。あなたがたも、冷静になってください。見ず知らずのおれが、いきなり結婚相手を選べるわけないじゃないですか」
 「ぎゃはっはっは、まぁ、そりゃそうですよねー・・・あいたっ」
 思わず笑ったわたしの頭を、トラップがポカリと叩きました。
 その様子を見て、ひっかかったのか、首をかしげるクレイ。
 「じゃ、じゃあ・・・どっちが、色気があるかっていったら、どっちですか!?」
 このままじゃ勝負がつきませんからね、パステルが、切羽詰ってクレイに詰め寄りました。
 しかし、それは逆効果でした。クレイはますます不審げになっていきます。
 「・・・それは、何か意味があるんでしょうか?」
 「いや、その・・・お色気コンテストに出るんです!」
 パステルー、そりゃないですよ!
 「ぶはっ・・・ぐふふふ、ぎゃはははは」
 ついにわたしが噴き出したのをきっかけに、トラップもパステルも、笑い出してしまいました。
 「くーっ、クレイのあの顔!」
 「もー、信じられない!」
 おなかを抱えて笑い転げるふたりの女性を呆然と見ていたクレイ。
 「あ、あれ・・・!?お、おい・・・トラップに、パステルか!?」
 ふたりはハッとして、お互いの顔を見合わせます。すっかりいつもの顔に戻ってます。
 「おおお、胸が、しぼんでいきますよ!!」
 わたしはふたりの身体を指差して、思わず叫びました。
 意外とタイムリミットが早かったですね。ふむふむ、服の支度をしていた時間を含めても、せいぜい3時間ってところでしょうか。
 「お、おまえら~~~!!」
 「きゃぁぁ、クレイさまぁ、ごめんなさーい!」
 メイド服のトラップをクレイが追いかけまわす傍ら、パステルは名残惜しそうに胸をなでています。
 あーあ、結局勝負はつきませんでしたね。わたしは、ベツジンジャーの効果がしっかりと見られたので、全くかまわないんですけどね。
 さぁ、この人たちは放っておいて。自分の部屋に戻って、結果のレポートをまとめましょうか。
 「まったく!まったく!なんて・・・なんて恥ずかしい!パステルもだ!はしたない!おれは情けない!」
 「あ、おれだとも知らずにでれでれしちゃった自分が情けないって?・・・ぎゃぁぁぁ、クレイ、悪かったって!」
 「クレイ、ごめーん!」
 トラップとパステルの叫び声が聞こえましたけど、ま、気のせいでしょう。
 副作用もないようですし、
 「キットォーーーン!」
 それを考えると、比較的使いやすいですね。
 「こら!ひとりで逃げんなー!」
 別人になるまでのタイムラグもほとんどありませんでしたね。
 「ベツジンジャーっていって・・・」
 そうそう、骨格は変わらないみたいですね。でも、胸を大きくできるってことは、例えばちょっと太ったり、痩せたりってことは可能かもしれません。
 「元はと言えば、キットンが・・・」 
 ふむふむ・・・え?誰か何か呼びましたか?
 わたしは忙しいんですよ、これからレポートまとめるんですから。
 
 後日、クレイがこっそりわたしの部屋にやってきて、ベツジンジャーを分けてくれるように言ったのは、また別の話です。
 ぐふふふ・・・何に使うんでしょうね?
 そのときはまた、いいレポートが書けそうですよ、でへへへ。
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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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