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まいむのFQ二次創作

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ベツジンジャー事件(1)

世にも珍しい薬草“ベツジンジャー”を手に入れたキットン。
飲んだ人がイメージした、別人に変身できるというシロモノだが。
もちろん、それを試してみないと気が済まないわけで・・・?

※キットン視点です。






 ぐふふふ、ぐふ・・・
 え、いきなりなんなんだって?
 いえね、ちょっと、珍しいものが手に入ったんです。
 ベツジンジャーって知ってます?
 知らない?そりゃ、そうでしょう。かくいうわたしも、お目にかかるのは初めてですからね。
 ある特殊な場所に、しかも100年に一度という珍しい気象条件のときにしか生えないって言う、それはそれは珍しい植物なんです。ジンジャーというだけあって、ショウガ科の植物なんですね。
 わたしは、ズールの森にベツジンジャーの生えやすい条件の場所を見つけて・・・もしかしたらと時々様子を見に行っていたんです。
 そしたら・・・!先日の、冬にしては生暖かい、シャワーのような雨の後に・・・!
 生えていたんです、あのベツジンジャーが!
 その、シュッとした葉っぱを見たときは、本当に小躍りしてしまいました。
 いや、まさか、100年に一度あるかないかの奇跡にめぐり会えるとは!
 わたしはそのベツジンジャーを、大事に根っこから掘り起こして、自分の部屋に持ち帰りました。
 
 さて、そのベツジンジャー。
 資料によれば、根っこをすりおろして飲むと、飲んだ人間の思うとおりの、別人になれるという・・・まるで魔法のような植物なんですね。
 なんせ資料だって100年以上前のもの。しかも、他に使用した例がないって言うんですから・・・まぁ信憑性は薄いんですけど。
 せっかく手に入れることができたんですからねぇ。
  もちろん、使ってみないわけにも、いきませんよねぇ、ぐふふふ。
 
 わたしは、さっそく実験台・・・じゃなかった、被験者を探すことにしました。
 まずは、同じ部屋で、木を削ってなにやら作っているノルに聞いてみましょう。
  「別人?なにになりたいか?」
 ノルが器用に削っていたのは、どうやらフォークのようです。
 その手を止めて、彼はわたしをキョトンと見つめました。彼は巨人族ですからね、床にあぐらをかいて座っていても、わたしと目線の高さが同じです。
  「おれ・・・鳥になりたいな。鳥になって、空を飛んでみたい」
  「それが、人じゃないとだめなんですよ。そこまで変えられるのは、魔法・・・しかも相当高度なものでしょうね。誰か・・・ほら、例えばクレイやトラップになってみたいっていうんでも、いいんです」
  「う~ん・・・」
 ノルは首を傾げています。どうやら乗り気じゃないみたいですね。
 ・・・まぁ、わたしとしてもあまりノルを実験台にしようという気にはなりません。
 わたしは、作業を止めてしまったことを詫びて、部屋を出ました。
 
 クレイとトラップの部屋に行くと、クレイが一人でロングソードを磨いていました。
  「おぉ、キットン。ズールの森に行ってきたんだって?今夜はキノコづくしか?」
  「ええ、まあ。キノコもけっこう採れましたよ。・・・ところでクレイ、なにか・・・こんな人になりたい、別人になってみたいっていうの、ありませんかねぇ」
 わたしが尋ねると、クレイはハッとしたように顔を上げました。
  「そ、それは・・・おれは・・・」
 なにか脈アリですよ。
 わたしは期待したのですが、ちょっと口ごもった後で、クレイはこう言いました。
    「ガンガンモンスターを倒せるような・・・そんなファイターになりたいよ」
  「あああ、それは無理ですねぇ。外見は変えられるんですが、内面はどんな魔法でも無理、クレイ次第ですよ。まぁ、催眠術師でも連れてこればなんとかなるかもしれませんが・・・ぎゃっはっはっはっは・・・あれ?クレイ、どうかしましたか?」
 おやおや、クレイが落ち込んでしまいました。なにやらぶつぶつ言っています。
 わたし何か言いましたっけ?
 まぁよくあることですからね、放っておきましょう。
 いえ、冷たいわけではないんです。人間はですね、悩んで悩んで、大きくなっていくんですからね。
 
 わたしがダイニングへ行くと、大きなテーブルの上で、ルーミィとシロちゃんがチラシの裏に落書きをしていました。もちろんシロちゃんは、見ているだけですがね。
  「あー!きっとぉん、みてみて!こえ、るーみぃとしおちゃんだお!」
 わたしはどれどれ、とその絵を覗き込みます。
 クレヨンで、手と足のついた何かと、ふわふわしてしっぽの生えた何かが描かれています。
  「上手に描けてますよ。こっちがルーミィで、こっちがシロちゃんですね。何をしているところなんですか?」
 わたしが聞くと、ルーミィはイスの上でふんぞり返って言いました。
  「鬼ごっこだお!」
  「そうですかそうですか。ところでルーミィ。ルーミィは、もし変身できるとしたら、誰になりたいですか?」
  「へんしんかぁ?」
  「そう、誰か、別の人になれるとしたら」
 ルーミィは頭をふりふり考えています。首をひねりながら、ふとテーブルの上でお座りをしているシロちゃんのほうを見て、叫びました。
  「しおちゃん!しおちゃんになりたいお!ふわふわのまっしろになって、るーみぃもぶれしゅすうんだお!あついのゴォーってふくんだお!」
  「キットンしゃん、ボクは、お母しゃんみたいに立派なホワイトドラゴンになりたいデシ!」
 うーん、どっちも無理ですねぇ。
 人間を他の種族に変えたりするほどの力は、ベツジンジャーにはありません。
 そもそも、ルーミィはエルフです。エルフやドラゴンには効くんでしょうか?いずれは試してみないといけませんね。
 それに、今のルーミィにふわふわの耳としっぽがついたら、犯罪ですよ。変質者に誘拐されても文句は言えません。
  「きっとぉん、しおちゃんになれうんか?」
  「キットンしゃん!」
 あわわ、変な期待を持たせてしまったみたいですね。
 目をキラキラさせたふたりに詰め寄られて、わたしがおろおろしていると、勝手口のドアが開きました。
  「ただいまー!ルーミィ、いいこにしてた?」
  「ぱぁーるだぁ!、おかえりあしゃい」
  「おかえりなさいデシ!」
  「だぁぁ、重かったぁ。ったく、ここぞとばかりに買うなよなぁ」
  「あら、いいじゃない。かよわい女手ひとつじゃ、ろくに買い物もできないのよ」
  「けっ、どーこが!」
    「ごくろうさまでした、買出しですか?」
    「そうそう、今ね、冬のバーゲン中なのよ。雑貨屋さんとか、服屋さんとかでもセールやってて・・・いっぱい買っちゃった。ほら、ナベもこないだ壊れちゃったし」 
どうやら、パステルがトラップを付き合わせて買出しに行っていたようですね。
いや、まぁ、トラップのご機嫌そうな顔を見ると、無理やりって雰囲気ではなさそうですがね。
   なにはともあれ、助かりました。
「はい、ルーミィ、シロちゃん、おみやげよ」
  「わぁーい、くっきぃ、くっきぃ!」
  「ありがとさんデシ!」
  パステルは賑やかにルーミィと話しながら、買ったものを片付けていきます。ルーミィもシロちゃんも、さっきのことはすっかり忘れて、クッキーに夢中です。
  トラップは、袋を漁って、ビールの小瓶を引っ張り出すと、そそくさとダイニングを出て行こうとしました。
  「ああ、ちょっと待ってください、トラップ。パステルも。聞きたいことがあるんですよ」
  「なんだぁ?」
  小瓶に口をつけたままひょいと振り返るトラップ。パステルも、手を止めました。
   「もしですよ、別人になれるとしたら、どんな人になりたいですか?あくまで、外見の話です。あと、動物にもなれません」
  そう、これまでは聞き方があまりに漠然としてたんでしょうね。ちょっと限定してみました。
    「そーんなしょーもねえこと考えて、どーすんだよ」
  トラップはハナっから考える気もなさそうですが。ちょっと考えたパステルは。
   「じゃあわたし、グラマーなオトナの女の人になりたいかも」
  ブハッ!!!
   「ぎゃぁぁぁぁ!」
 わたしとパステルは、あわてて飛びのきました。トラップが、ビールを噴いたんですよぉ。
  「まったく、いつもいつも、なんなんですか、トラップは!」
  「ぐ・・・げほげほげほ・・・パステルがヘンなこと言うからだろ!」
  「なによ!いっつもいっつも、わたしのこと色気がないとかガキだとかいうじゃない!さっきだって・・・」
  「おめえが毛糸のパンツ丸出しでスッ転ぶからじゃねえか!」
  「だって寒いんだもん、しょうがないじゃない!」
  「そーいうところが、色気がねえって言うんだよ!」
  「うぐぐぐ・・・だいたい、なんでトラップにそんなこと言われなきゃなんないのよ!」
  「それは・・・もごもごもご」
  「そもそも、色気があるってどーいうことなの?基準は?見本見せてごらんなさいよ!」
 わたしは、突然始まったふたりの痴話げんかに(いつものことですが)、呆れてモノも言えませんでした、が!
  「それですぅぅぅぅぅ!」
  突然のわたしの絶叫に、ぐだぐだ言い合っていたふたりが、口をあけたままこっちを見ます。
 わたしは、ふたりに指をつきつけ、頭に浮かんだ名案を高らかに宣言しました!
  「ふたりでお色気勝負しましょう!パステル対トラップ、クレイ誘惑対決ですぅぅ!」


 
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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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