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まいむのFQ二次創作

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真実の王女番外編Ⅱ~さよならじゃなくて~

キスキン国王女ミモザのために、共に王家の塔にのぼったトラップと、パーティ一行。
そこで彼を待ち受けていたのは、難しい罠でもなく、手強いモンスターでもなく、衝撃の事実だった・・・!

※トラップ視点です。
 普段より、トラップ→パステルのラブ度が高めになってます。
 ギアが、トラパスのためのダシになってます。ご注意ください。






 青天の霹靂ってのは、こういうのをいうんだろうか。
 それは、キスキンの塔で、大臣派のやつらと向かい合ったときだった。
 「おい、おまえ、恋人はどうした?ギアといったな。船の上で、プロポーズされていたではないか」
 「ぎゃぁぁぁぁー!」
 ハゲにちょんまげしたような頭の、変なおっちゃんにそう言われたパステルが、慌てた様子で絶叫した。
 プ、プロポーズ!!??
 おれは・・・絶叫どころじゃねえ。頭ん中真っ白で。そのときが戦いの場じゃなけりゃ、どうも取り繕えないくらい、動揺しちまった。
 そうか、ハナっからそんな気はしてたけど。やっぱり、そうなのか、あの野郎。
 そうなのか、パステル。
 おまえは・・・
 
 
 その後、オグマとサムラの召喚したウォーマンモスを、まぐれで倒したパステル。レベルアップ目前まで経験値が上がり、パステルは感極まって泣いた。
 これが、あいつにとって、最後の冒険だったってことか・・・
 クレイに差し出されたハンカチで、涙をぬぐっているパステルを、ヤツは優しげなまなざしで見守っていた。
 ちぇ、おれにはとてもあんな顔はできねーよ。
 昔っからそうだよ。からかったり、いじめたり、憎まれ口叩いたり。そんなことしかできなくて、泣かせてばっかりで・・・
 アイツだったら、そんなことねーんだろうな。
 ああやって、優しーくパステルを見守って。ま、おれから見りゃ、甘やかし過ぎな気もするが。
 あーあ、これで終わりっつーことか。
 ざまあねぇな、トラップさんよ。
 おれは寂しいような、すがすがしいような複雑な気分で、塔の上に広がり始めた、まぶしい朝日を眺めた。
 
 夜通し塔の中を駆けずり回って、へろへろだったおれたち。ミモザの手配で、城の客間を借りて、それぞれゆっくり休ませてもらうことになった。
 おれは、いつものようにクレイと同じ部屋を割り振られ・・・死んだように眠りこけるヤツを、見るとはなしに見ていた。
 こいつも、コカトリスに石化されかけたり、まぁいろいろあったもんな。無理もねぇ。
 おれだって、そりゃ疲れてるさ。
 でも、寝れるわけがねえっつーの。
 おれはベッドに寝そべって、天井のゴージャスなシャンデリアのクリスタルを、なんとなく数えていた。
 パステルが結婚して、パーティを抜けたら・・・おれも、ドーマに帰るか。
 オヤジたちの手伝いをするってのもアリかもしれねえ。
 ・・・いや、でも「まだ半人前のくせに戻ってきたのか」って言われそうだな。
 クリスタルを100まで数えて、おれはやっと気がついた。
 そっか、こんなにも、こんなにも、おれにはあいつが必要だったのか。
 
 いつの間にか、おれは眠っていたらしい。
 こそこそと話す声を聞いて、おれは目を覚ました。
 「あ、起きたのね。お疲れ様、トラップ」
 貴族のようにリッチな、グリーンのドレスを着たマリーナが、クレイの着替えを手伝っていた。
 「やっぱ、ちゃんとしたベッドで寝ると、スッキリするよなー」
 白いシャツのボタンを留めながら、ノンビリと笑うクレイ。
 け、おれの気も知らないで、相変わらずノンキなやつだ。
 「ほら、トラップも着替えてちょうだい。あなたたちは、キスキンを救った英雄なんだから、ちゃんとした格好してもらわなきゃ」
 マリーナが、ハンガーにかけた衣装を示す。黒いジャケットに、細身のパンツ。クレイと同じような白いシャツ。
 ああ、大魔術教教団に潜入するとき、こんな格好して、旅芸人の座長やったっけな。
 あのときは、あいつちっとも手品覚えらんなくて・・・
 「なにボーッとしてんだよ、ほら、早く着替えて、なんか食いに行こうぜ」
 「ってー、わあってるって」
 クレイにこづかれるまで、ぼんやりとあのときのことを思い出していた。
 おれらしくもない、なんつーか、ノスタルジックな気分だ。
 
 城の中庭は、盛大に篝火がたかれ、浮かれ騒ぐ人々の声で賑わっていた。ミモザの即位式まで、毎晩こうやって前夜祭が開かれるらしい。
 おれたちは、他のやつらと合流して、そこらへんの食い物を食い散らかしていた。
 ちなみに、キットンもノルも、おれと同じような正装。よくあいつらに合うサイズがあったよな。
 遅く起きてきたパステルとルーミィも、マリーナにドレスを用意してもらうらしく、また城の中へ戻って行った。
 おれは、ホットワインのカップに口をつけながら、それを見送る。
 
 「トラップ、ちょっといいか?」
 そのとき、おれの横手から声が掛かった。
 おれが、たぶん今、一番聞きたくない声。ギアの野郎だ。
 半目でちらりとみると、ヤツだけは普段の黒ずくめのレザーアーマー姿だった。お祭り騒ぎに参加するつもりはないらしい。
 「そんな目でにらむなよ。話がある」
 クイッとあごでおれをうながして、やつは勝手に歩き出した。
 ちぇ、おれがついてくことを、疑いもしねえあの背中!
 無性に腹が立つが、仕方ない。おれは、クレイたちに気づかれないよう、そっと喧騒を離れてギアを追った。
 
 人気のない、庭の片隅。静かに虫が鳴いている。
 そこで、ギアは立ち止まった。
 どうせ、話はプロポーズのことだろう。そう思っていたが、案の定だ。
 「あんな形で知れ渡ってしまったが・・・一応、あんたにはきちんと言っておいたほうがいいかと思ってね」
 「なんでだよ」
 「いや、別に。ちょっと気になっただけだ」
 取り付く島もないおれの態度に、ギアは苦笑した。
 「別に、パステルが誰と結婚しようが、おれの知ったこっちゃねーよ。なんでいちいちおめえに気ぃ使ってもらわなきゃなんねーんだ?おれんとこ来るくらいなら、とっととパステルんとこ、行けよ」
 おれはそれだけ一気に言い放つと、ポケットに手を突っ込んで、さっさときびすを返した。
 「フェアじゃないだろ?」
 「ああ?」
 投げられた言葉に、おれは思わず振り返る。
 ギアは、そんなおれにニヤリと笑いかけると、こうのたまった。
 「決めるのは、彼女だからな。あんたが、そこまでふてくされる必要は、ないだろ?引き止めるなら、今のうちじゃないのか?」
 ふてくされるって・・・ああ、そうか、そうだよ!
 ちくしょう、ほんっとーにムシャクシャすんな、コイツは。
 おれはカチンときて、言い返す。
 「そーだよ、決めんのは、あいつだよ。だからそれは、おれが口出ししてどうこう言うことじゃねーんだよ!」
 ヤツは、やれやれと言いたげな顔で、肩をすくめた。
 
 ヤツと連れ立って戻るのもシャクで、おれはしばらく遠くから中庭の灯りを眺めていた。
 そうこうしてるうちに、パステルが、マリーナとルーミィ、シロと戻ってきた。
 いつものボロじゃなく、水色の、ボリュームのあるレース付のドレスに着替えて。
 暗がりからその姿を見たおれは、妙に眩しさを覚えて目を細めた。
 別に、美人でも、なんでもねーけど。いつもあいつは、ああやって人の目を引くんだよな。
 一時期の、いかにも悩んでます!といった顔ではなく、すっきりとした表情。マリーナと笑い合っていたが。
 ハッとしたように立ち止まるふたり。マリーナがルーミィの手を引いて離れていくと、そこに近づいていったのはギアだった。
 おれは息を呑む。
 おい!おれの見てるとこで、あいつに触んじゃねぇ!おいこら、肩に手をかけんな!!
 しかし、すっと後ろに下がって、ギアの手をよけるパステル。
 ・・・?
 それを不思議に思っていると。おれの目の前を、何かがダッダッダッと横切って行った。
 「ああー!パステル、きれいじゃないですかぁー!」
 おれはげんなりした。いや、ホッとしたとも言う。
 串焼きを手に持ったまま、キットンがヤツらのところへ駆け寄っていく。
 「きゃ!ちょ、ちょっと。やめてよ、汚れるでしょ、ドレスが」
 パステルが悲鳴をあげて逃げ回っているうちに、ギアはそっと離れて行った。
 おれのほうをちらりと見て、肩をすくめてみせて。
 ・・・なにが言いたいんだよ!
 とは思ったものの、確かに、このままきちんと話もしないままってのも、よくない気がするよな。
 別に、引きとめようとか、そんなんじゃねーけど。
 昔、おれがまだまだガキだった頃。マリーナの友達に、気になるヤツがいた。そいつが引っ越していくとき・・・おれは些細ないたずらで、思いっきりそいつを泣かして・・・それでもう二度と会うこともなく、終わったんだよ。
 思えば、あれがおれの初恋ってやつ?
 ・・・あれは、よくなかった。さすがのおれも、日ごろの行いを反省したっけな・・・
 おれは、戻ってきたマリーナとこそこそしゃべっているパステルの、両肩に手を置いた。
 さっき、あの野郎が手を触れたとこだ。
 ちくしょう、消毒だ、消毒!
 「うわぁ!びっくりした。な、なんだ、トラップ!」
 パステルが、驚いて飛びあがる。
 けっ、ざまあみろ。
 「なんだよ、そっちこそ。オオゲサに驚いて。何の相談してたんだよ」
 「ええー?べ、べっつにぃー」
 明らかにウソついてやがるな、こいつ。どうせ、マリーナと、ギアの話でもしてたんだろう。
 「ふん、まぁいいんだけどさ。それよかパステル、ちょっと来いよ」
 「どこに?」
 「いいから、来いって」
 おれは、ひんやりとしたパステルの手をひっぱって、城の中へズンズン歩いて行った。
 
 こうやって、こいつの手を引いて歩くことも、もうないんだろう。
 よく、エベリンとかコーベニアとか、慣れない町で迷子になったこいつの手を、ひっぱってたよな。おれが探しに行って、見つけて。
 途方にくれてるパステルを、見つけて。
 こいつのホッしたような泣き笑いの顔を見るたび、一番安心してたのは、ほんとはおれだったんだよ。
 おめえは、知らないだろうけどな。
 
 このへんで、いいだろ。人気のなくなった辺りで、おれは立ち止まる。
 「座れよ」
 階段にパステルを座らせて、おれも隣に座った。
 問答無用で連れてきたからか、なにも言わないおれに不安を感じているのか、パステルは相当緊張しているらしい。
 おれは、ここまで来たはいいものの、どう切り出したらいいかわからなくなっていた。
 いや別に、こいつのことどう思ってるかとか、そういう話をするわけじゃねえって!期待してんじゃねえよ!      
 「何?何の話?」
 「あのさ」
 パステルと、思い切って口を開いたおれの声が重なる。
 うわ、タイミング悪り。
 気まずかったが、パステルに先を促されて、おれはひとつ咳払いをすると、覚悟を決めて言った。
 「あのさ、ちょっと聞いておきたいんだけど」
 自分で言うのもなんだが、すっげぇ声が硬い。
 「う、うん」
 パステルが、身構える様子が、見なくても分かる。
 「おまえ、ギアと結婚するつもりなのか?」
 「ブ、ブハッ、ゲ、ゲホ・・・ウ、グフ・・・」
 先制パンチを食らって驚いたのか、いきなりパステルが吹き出した!
 「きったねー!」
 おれは叫んで飛びのく。
 だぁぁぁ、なんてムードのないやつなんだ!
 驚くにしたって、もっと女らしい驚き方があるだろっつーの!
 しかしまぁ、それがこいつらしいとこだし。おれも話しやすくなった。
 「だってさ、あの・・・変なおっちゃんが言ってたじゃんか。おめぇにギアがプロポーズしたって。だとしたらさ、おめぇが断る理由ないし。だったら、パーティ抜けんのかなって。それならそうでこっちにも心づもりってもんが必要だろ?」
 おれも、覚悟決めなきゃなんねぇし。
 現実的なこと言うなら、パーティ解散ってことはないにしても・・・ルーミィをどうするのか、とか。
 まさか、ギアとふたりで、そのまま残るなんてことはさすがにないだろうけど・・・あ、それ、すげーイヤかも。
 「あ、あのねぇー。どうして、わたしが断る理由ないって決めつけるの?」
 パステルは、おれの顔を覗き込んで、呆れたような声で言った。
 「ええー?だってさ。あんな腕の立つ、しかもかっこいい奴。男のおれから見たってけっこういい線いってると思うぜ。それにひきかえ、おまえなんてどこといって取り柄もないしさ、出るとこ引っこんで・・・引っこむとこ・・・う、うぐぐ」
 言ってる途中で、パステルに首をしめられた。
 「ご、ごろざれるー!」
 今のは、紛れもない本心だ。いや、だから、パステルの取り柄がどうこうじゃなく、おれがギアに適わないのは分かってんだってことだよ。
 ヤツはオトナだし、おれみたいにパステルをいじめて困らせて、泣かせるようなことはしないだろう。
 戦士としての腕も確かだから、パステルが危険な目に遭うこともないだろうし・・・おれたちといるときとは違って。
 ふくれっつらでおれの首をしめていたパステルは、その手を離すと、なんだか寂しそうな顔で言った。
「ふん、何よそれ・・・それよりさ。トラップはそれでいいわけ?わたしがいなくなっちゃっても」
「は?」
 いいわけないだろ!
 思わずそう言いそうになった。
 おれがまじまじとパステルの顔を見返すと、パステルはいいにくそうに目をそらした。
「つまりー、わたしが結婚しちゃって、パーティ抜けても、それでもいいっていうの?心づもりがあるなんてさ」
「ああ、それか」
 おれはホッと一息ついて、笑った。
 さあ、言うぞ。
 ちゃんと、こいつを送り出してやるために。
 おれだって、ガキじゃないんだよ、もう。
「だってさ。そりゃしかたねーじゃん。おめぇがそうと決めたんだったら。誰にも止める権利なんかないと思うぜ。ギアなら、おめぇを幸せにしてくれそうだしさ」
 一気に言うと、スッキリした。
「・・・そっか」
 パステルは、神妙な顔をしてうなずいた。
「ああ」
 おれもうなずいて、しばらくふたりでそのまま座っていた。
 こんなに長い間、黙って座ってるなんてこと、今までにないけど。
 パステルのいる左側から、ほんのりと温かさが伝わってくる・・・
 石の階段の冷たさも、全く苦にならなかった。
 
 
「おい、起きろって、トラップ。せっかく用意してもらった朝ごはん、無駄にする気かよー」
  「うるせーなぁぁ・・・」
 さっぱりとした白いシャツ姿のクレイが、おれを揺さぶっている。
 おれは、ふかふかの枕に顔を埋めて、しっしっとクレイを追い払った。
 昨日の夜は、思う存分酒飲んだり、キスキンの踊りとかいうのを調子に乗って踊ったりで、結局ロクに寝てねーんだよ。
 あいつには言いたいこと言ってスッキリしたし、城の女たちとしゃべるのは、それなりに楽しかった。
 胸に刺さったトゲのような寂しさは、消えようもないけどな。
 パステルも、一見いつもと変わらない様子で、マリーナやルーミィとはしゃぎまわっていた。
 そういや、あれっきりギアを見かけてねーな・・・
  「ギアは朝早くにダンシング・シミターと発ったっていうし・・・なんだか、おれらだけ、ものすごい朝寝坊みたいじゃないか」
 おれを起こすのに疲れたような、そのクレイの一言で、一気に目が覚めた。
  「へ?そうなのか?」
 ダンシング・シミター?あの、変なおっちゃんのことだろ?
「? ああ、今朝早く、ふたりで旅立ったらしいよ」
 おれはベッドの上に起き上がって、ぽかんとクレイの顔を見た。
  「んじゃ、パステルは?」
 きょとんとしたクレイ。おれがなんでそんなことを聞くのか分からないらしい。
  「プロポーズのことか?今更何言ってんだよ、昨日言ってなかったか?ギアとの話は断って、これからもおれたちと冒険してくって」
  「昨日!?・・・おれ、なんも聞いてないぞ」
  「おっかしいなぁ、ノルもキットンもパステルから聞いて、よかったよかったって、3人で言い合ってたんだぞ。あ、そうか、お前また、女の子追っかけまわして遊んでたから、パステルとゆっくり話す時間もなかったんだろ」
 あ・い・つ・・・!!!
 わざとおれにだけ、言わなかったってか?
 ちくしょー、おれの決心を、覚悟を、返せ!
 おれは再びベッドに倒れこみ、フトンを頭から被った。
  「おい、だーかーら、起きろって言ってるだろ!トラップ、トラップ!」
 うるせー、今、顔が出せるか!
 悔しいけど、なんつーか、その、・・・嬉しいんだよ!
 こんなニヤケ顔、見られてたまるかっつーの!
 
 おれはフトンの中で、声には出さずに叫んだ。
 ギアの野郎め・・・ザマーミロってんだ!
 
 
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HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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