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まいむのFQ二次創作

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ベツジンジャー事件episodeⅡ~クレイの復讐~

ベツジンジャーにより変身したトラップ・パステルに、からかわれたことを実は根に持っていたクレイ。
キットンから、ベツジンジャーを分けてもらったクレイは、いよいよ復讐作戦を開始する・・・!
人のいいクレイが、無事に復讐を果たすことはできるのか!?

※クレイ視点です。
 「ベツジンジャー事件」を先に読むことをオススメします。






 その日、おれはバイトに行くと言って、普段どおりに家を出た。
 「クレイちゃん、がんばってー!」
 「くりぇいー、ばんがうんだおー!」
 パンをほおばっているトラップとルーミィがおれに手を振る。ノルもにこにこと笑って軽く手を上げた。
 「あ、ほら、クレイ。これ、お弁当。今日はクレイの大好物ばっかりよ!」
 う、うう・・・パステル・・・
 差し出された弁当箱を受け取ると、追いやったはずの良心が、チクリと痛んだ。
 「みんな今日はお休みなのに・・・クレイだけバイトなんて、なんだか申し訳ないわ」
 「い、いや、そんなことないよ。じゃ、じゃあ、いってくる」
 ぎこちなく玄関を出たおれを、訳知り顔のキットンが、にやにやと見送っていた。
 
 なんでおれが、慣れないウソなんかついて、バイトに出るふりをしたかっていうと・・・
 あれだ。
 ベツジンジャー!!
 こないだあれを使って別人に変身したパステルとトラップに、散々からかわれたからだ。
 くそー、女性に化けて、おれを、おれをからかうなんて!
 これまでトラップにはひどい目に遭わされてばかりだし、ここらへんで一度、逆襲してやろう!と思い立ったのだ。
 しかし、おれには演技力というものがない。
 いきなりトラップをだますというのはハードルが高いだろうな・・・
 考えた挙句、まず手始めに、パステルに仕返しをしようと、思い立ったわけだ。
 パステルだって、おれのことを不幸だ不幸だと・・・うう、パステルに悪気がないことはわかってるんだけど。
 ・・・いや、これは些細ないたずらだ。だから、いいんだ!
 
 他のメンバーに見つからないよう、こっそりベツジンジャーをもらいに行くと。なにやらノートにごちゃごちゃと書き留めていたキットンは、妙に嬉しそうに顔を上げた。
 「はいはいはい、まだ残ってますですよ。何に使うんですか?え?ナイショ?・・・ぐふふふ、いいですよぉ、かまいません。ただ、使ったあとは、ぜひぜひわたしに、その効果を教えていただきたいもんですがねぇ」
 前髪に隠れてるはずのキットンの目が、妙な光を放っているような・・・
 うう、なんだか背中がぞくぞくするぞ。
 おれは手短にベツジンジャーの使い方を聞くと、そそくさとキットンの部屋を後にした。
 
 さて、これを飲めばいいんだな。
 家を出て、森の中に隠れる。
 キットンから渡された小瓶には、ベツジンジャーで作ったベツジンドリンク(キットンによる命名だ)が入っている。
 下のほうに沈んでいるのが、ベツジンジャーをすりおろしたものらしい。
 おれは、よく混ざるように、その小瓶を振りながら考えた。
 やっぱり、仕返しするなら、同じパターンでやり返したいよな。
 となると、パステルの好みそうな男に変身しないとな・・・
 パステルの好みって、どんなだ?
 ギアには多少なりとも惹かれたんだろうけど、結局プロポーズ断ったし・・・
 さすがにリアルすぎてかわいそうだしな。
 他に、参考になりそうな人間は・・・
 おれは、ハッと思いついた。
 ジュン・ケイか!
 実は女性だということは判明したけど、たぶん彼女がパステルのストライクゾーンなんだろう。おれは、彼女との冒険を覚えてないけど・・・なんせ・・・オウムになってたから・・・
 こないだエベリンで再会したときの様子を見ると、そうなんだろうな。
 よし、ジュン・ケイだ!
 おれは、彼女をイメージしながら、ベツジンドリンクを飲んだ。
 うんうん、背は高いけど、あんまりガッチリしてない感じだよな。で、髪は短くてツンツンしてて・・・細面で、ちょっとクールな雰囲気で・・・
 お、おおおお?
 体が、顔がムズムズするぞ?
 頭を抱えたおれの指先から、髪がすり抜けていく。どうやら髪が縮んで、短くなっているらしい。
 あ、終わった、かな?
 違和感がなくなると、おれは一通り体中をチェックしてみた。
 確かに、ちょっと細身になったかな?まぁ、あいつらと違って、性別変えてるわけじゃないからな、そこまで体つきは変わらないか。
 あらかじめ森に隠しておいた荷物から、こっそりパステルの部屋から借りてきた手鏡を出して、覗き込む。
 「う、わー。ほんとに別人じゃないか!」
 思わず、声が出た。声も変わっている。ちょっと高めの、硬い声質になっていた。
 手鏡に映ったおれは、頬がすっきりとして、目が切れ長になっていた。おお、確かに、ジュン・ケイの面影に近い、クールな雰囲気が出てるぞ。
 うん、これならいけそうだな。あとはおれの腕次第だ。
 パンパン、と頬を叩いて気合を入れると、おれは荷物からアーマーを取り出して、身につけた。
 昨日、バイト先の武器屋から借りてきたものだ。ご主人が、昔冒険者だったときに使っていたもので、店の片隅で眠っていた。おれが暇を見つけては磨いていたおかげで、古びてはいるが、金属の輝きを失ってはいない。
 ほら、さすがに竹アーマーじゃ・・・すぐおれだってばれちまうし・・・
 
 全身別人に変身したおれは、切り株に座って家の様子をうかがった。
 いつもの習慣で、パステルは朝ごはんが終わって一休みしてから、買い物に出かける。
 今日はノルもキットンも家にいるから、おそらくルーミィを連れて行くことはないだろう。
 まさか、トラップがパステルの買い物に付き合うことはないだろうし。
 そんなことを思っていると、案の定パステルが買い物かごを下げて、一人で出てきた!
 「じゃあねー、ルーミィ、いいこにしてるのよー」
 鼻歌を歌いながら、息をひそめるおれの前を横切っていく。
 よしっ、チャンスだ!
 おれは、もう一度家のほうをチェックして、誰も出てこないことを確かめてから、パステルを追いかけた。
 
 「あの、そこのキミ。ちょっといいかな?」
 声をかけると、買い物メモを手にしながら市場を歩いていたパステルが、振り返った。
 一瞬、ハッとした顔をする。
 まぁ、本人が言うのもなんだけど、今のおれはかなりの美男子に仕上がってるわけだからな。
 が、彼女はすぐそれを笑顔で取り繕うと、おれを見上げた。
 「はい、なんでしょう?」
 おれは、手に持っていた冒険時代をパラパラとめくって言う。
 「この雑誌に書いてる・・・パステル・G・キングさんって人を知らないかい?この村に住んでるって聞いたんだけど」
 そう、これがおれの作戦だ!!
 パステルの小説のファンのふりをする!これなら、パステルに声をかける一番の理由になるし、普段から冒険時代には目を通してるし、なんせおれは登場人物のひとりだ。ボロも出にくいだろうという、苦肉の策だ。
 で、彼女に怪しまれないうちに、さくっと立ち去ればいい。
 おれの目的はあくまでトラップで、パステルは練習なんだからな。あまりかわいそうなことはしたくない。
 そんなおれの内心とは裏腹に、パステルは飛び上がって喜んだ。
 「そ、そ、それ、わ、わたしです!」
 「え、そうなのかい?おれ、ぜひキミに、いつも楽しみにしてるよってことを、伝えようと思って・・・」
 「あ、ありがとうございます!うわー、わたし、こうやって、読者の方とお会いするのって、初めてなんですよ。もちろん、そこの猪鹿亭のリタとか、これまでに一緒に冒険した人たちは、読んでくれてるみたいなんですけど・・・わー、う、うれしい!」
 パステルは、両手を握りしめて舞い上がっている。
 彼女をだまそうとしていたおれのほうがタジタジだ。
 全くおれだってこと、気づいてないみたいだし・・・
 捨てたはずの良心が、またチクチクと痛み始める。
 「じゃ、じゃあおれはこれで・・・これからもがんばって・・・」
 「待ってください!せっかくなんで、どこかでお茶でも・・・あ、わたし、おごりますから!」
 立ち去ろうとしたおれの手を、パステルがハッシとつかんだ。
 
 結局おれは、パステルと向き合って、猪鹿亭のテーブルについていた。
 リタが飲み物を持ってきて、興味深そうにおれの顔を眺めていく。
 「お客さん、見ない顔ねぇ。パステルのお知り合い?」
 パステルが、照れながらリタを叩いた。
 「知り合いっていうか・・・わたしの、書いてる小説あるじゃない?あれを読んで、わたしを訪ねて来てくれたんだって!」
 リタが驚く。
 「ええー、じゃあ、パステルのファンってこと?」
 「いやー、そんな、ファンだなんて!でへへへ」
 照れまくるパステルの向かい側で、おれは無言でカップに口をつけた。
 なんだか・・・ドツボにはまってる気がするのは、おれだけか・・・?
 「で、どこまで話したんですっけ?」
 「えっと、忘れられた村の、忘れられたスープの話ですね」
 猪鹿亭まで歩きながら、パステルは、実はいろいろな事情があって、小説には書かれていない真実があるということを、おれに話していたのだ。
 おれが言うと、パステルはポン、と手を叩いて再び話し始めた。
 「あのとき、実は、大事なことを一つ伏せてたんですよ!」
 「大事なこと?」
 「そうそう、うちのパーティのリーダー、クレイってわかりますよね?」
 「・・・え、ええ、もちろん・・・」
 おれだよ!とはもちろん言えない。
 「クレイがね、マラヴォアに魔法をかけられて、オウムになっちゃったんです!」
 ・・・それを言うか!!
 パステルぅ、おれの名誉のために、その事実は小説に書かなかったんじゃなかったのか?
 それを、それを、ここでただのファンの一人であるはずの、この男に・・・言うなって!
 おれは、がっくりとうなだれた。
 パステルは、おれのそんな様子に気づかず、楽しそうに話を続けている。
 「もー、ブラックドラゴンのダンジョンに行くのに、肝心のファイターがオウムになっちゃってるなんて!クレイって、いつもそうなんですよ、ファイターなのに、ここぞというときに・・・そういえば、あなたも、ファイターなんですよね?あ、そういえば、わたしまだお名前聞いてなかったっけ」
 「え、お、おれ・・・?」
 あー、しまった。そこまで考えてなかったぞ。
 「えーと、ジュ、ジュン・・・じゃなくて、その・・・」
 やばい、これまでか!
 口ごもるおれを、パステルは首をかしげながらニコニコと見ていたが、やがてハッとしたように顔色を変えると、うなずいた。
 「そっか、そうですよね、いいです、匿名で!わたし、こうして応援してくれる人がいるってだけで、充分ですから!」
 何をどう納得したのか、パステルは激しくうなずきながら、テーブルの上のおれの手を両手で握りしめた。
 そのときだった。
 「おい、パステル、なぁにこんなとこで油売ってんだよ!」
 横からサッと近づいて、パステルの頭を小突いたのは、トラップだ!
 パステルが頭を抱えてトラップを見上げる。
 「いったぁーい」
 「ふん、おれに掃除押し付けて、ちっとも帰ってこないと思ったら、こんなとこでデートかよ?なんだよ、そいつ」
 そう言って、じろりとおれをにらみつける。
 その、目!
 なんだなんだ、なんでこいつこんなに怒ってんだ?
 「違うってば、トラップ。この人、わたしの小説を読んで、わざわざシルバーリーブまでわたしを訪ねて来てくれたのよ!」
 「んだぁ?おい、てめぇ、ほんとかよ」
 おれは、トラップの迫力に気圧されて、カクカクとうなずく。
 「ふぅん、怪しいやつだな。ちょっと来いよ」
 「え?え?お、おい、ちょっと・・・」
 あれよあれよという間に、おれは猪鹿亭の裏口に引っ張られていった。
 「待ってよ、トラップ、トラップったら!」
 パステルの制止する声も、トラップにさえぎられる。
 「うるせぇ、おめえはちょっとそこで待ってろ!」
 
 厨房の喧騒をBGMに、おれはなぜかトラップと向き合っていた。
 イッタイ、ナンデ、コンナコトニ・・・
 「おい、おめえ、どういうつもりであいつに近づいたんだよ」
 おれがクレイだってことはまったく気づいてないみたいなのに。なんで、トラップはこんなに腹を立てているんだ?
 「い、いや、おれは、ただあの小説を書いた作家に会ってみたかっただけだよ」
 おれの必死の弁明も、トラップはまるで聞いちゃいないようだ。
 「ふうぅん、んで、手まで握って?」
 「あれは、彼女が、急に・・・!」
 「んだって?パステルがか?」
 「・・・おれがファンだって聞いて、感動したみたいだ」
 「ほんとかぁ?おめぇ、なーんか隠してるくせぇな。なんにせよ、あいつに変なちょっかい出したら、ただじゃおかねえからな」
 へえ、トラップは、なんだかんだいってパステルのことを心配してるんだな。おれはちょっと感心した。
 怪しい男にたかられてるとでも思ったんだろう。
 パステルはお人よしだから、ほいほい人にご馳走したりするしなぁ。 
 「分かったら、二度とおれの前に顔を出すんじゃねぇ!」
 「は、はい!」
 額に青筋たてたトラップに怒鳴られて、おれはほうほうの体で逃げ出した。
 まぁ、うまいこと逃げられた、と思ってもいいんだろうか?
 あのままパステルにつかまってるよりは、よかったかもしれない。
 おれはそのまま森へ戻り、元の姿に戻るのを待ったのだった・・・
 
 その日の夜、おれは再びコッソリとキットンのところへ行った。
 キットンは諸手を挙げておれを出迎える。
 「おおお、ベツジンジャーはどうでした?変身の具合は?身体に異常はありませんか?どんなふうに変身したんですか?」
 「いや、別人になるのはうまくいったんだけどさ、やっぱりおれにはこういうことは向かないって思い知ったよ」
 質問攻めのキットンの前で、おれはボリボリと頭をかいた。
 おれには、できん!
トラップの演技力や、罪悪感のなさは、尊敬に値するよなー。変な意味で、あいつを見直した一日だった。
 「おやおや、クレイは一体何をしようとしたんです?」
 おれは、今日の出来事を話した。
 「ぎゃーっははははは、それはそれは・・・ぐふふ、ぐふ、げふ・・・だははははは」
 おれの話を聞くなり、キットンは大声で笑い出した!
 「お、おい、キットン・・・?」
 床の上を転げまわって笑っている。
 おいおいおい、なにがそんなにおかしいんだ?
 「つ、つまり、クレイは、トラップに復讐したかったわけですよね?だったら大丈夫ですよ、じゅうぶん復讐になってます、それ・・・ぎゃはははっはは」
 ひーひー言いながらおれの肩を叩くキットン。
 なんなんだよ、ちっとも分からないぞ。
 ・・・今日ので、トラップに対する復讐になったのか?
 確かに、トラップ相当怒ってたしなぁ。あそこまで機嫌の悪いトラップは、付き合いの長いおれでも、あんまり見たことないぞ。
 そうか、じゃぁ、それで・・・いいのか。いいのか?
 おれはなんとなく腑に落ちないまま、笑いの止まらないキットンを眺めていた。
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HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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