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まいむのFQ二次創作

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ハーレムへようこそ!?~2000キリ番リク~

おつかいクエストで、シェルルンの貝殻を探しにアビス海に出たパステルたち。
その帰り、とんでもないモンスターに襲われて・・・?
しかも、辿り着いた島は、懐かしい仲間(?)の集落だった!

※途中から、トラップ視点になります。
 また、「おつかいクエスト~魔法の貝殻を探せ!~」を先に読むことをオススメします。→こちらからどうぞ






 リングワンダ社の社長の依頼で、魔力を持つ貝シェルルン(正式名称ウタカタハマグリ)の貝殻を取りに海へ出たわたしたち。
 危ないところだったけど、無事シェルルンの貝殻を手に入れたんだよね。
 さぁ、あとはそれをエベリンまで届けようという、その帰り道。
 大変なモンスターと遭遇してしまったのだ。
 
 ヒュー・オーシから借りた、クジラ型の乗り物、エレキテルホエールのクーちゃん。
 彼(?)の背中で、わたしたちはのんびりと船旅を楽しんでいた。
 シェルルンの貝殻は、布で大事に包んで、用意してもらった箱にしまってある。
 「なんというか、ここまで平和だと、物足りないですね」
 キットンが、大あくびをしながらわたしに言った。
 クレイとトラップはめいめいに昼寝。ルーミィとシロちゃんは、シェルガーデン島で拾った貝や珊瑚を並べて遊んでいて、ノルは操縦席で、どうやら、空を飛ぶカモメと会話をしているみたい。
 わたしは、今回の冒険のメモ書きをしてたんだけど。その手を止めて、キットンに応えた。
 「まぁ、確かにそうだけど・・・そういうこと言わないほうがいいんじゃない?ほら、口に出すと災いのほうからやってくるって、言うじゃない」
 「そりゃ、そういうこともありますけど・・・こんなに静かな海で、何か起こるなんてこと・・・」
 「なにか、いる!」
 キットンの語尾をさえぎったのは、ノルだ。
 操縦席から身を乗り出して、海中を覗き込む。
 わたしとキットンも、クーちゃんの柵にしっかりつかまって、目を凝らして水の中を見た。
 なななな、なんか、いる!
 クーちゃんのちょうど真下。黒っぽい影のようなものが、ぴったりと付き従うように泳いでいる。
 長い長い身体・・・これは・・・もしかしてウミヘビ? シーサーペントだ!!
 「う、うそでしょ!?キットンが変なこというから!」
 「わたしのせいですか!?」
 わたしたちが小声で罵り合っていると、不穏な空気を感じたのか、ルーミィとシロちゃんが騒ぎ出してしまった。
 「なんだなんだぁ、ぱーるぅ、どうしたんらぁ?」
 「ルーミィ、シロ、こっちに来い」
 ノルが、ふたりを操縦席の下に隠れさせる。
 「いや、我々に気づいていないわけはないでしょう。おそらく、襲うか襲わないか、迷っているところなのでは?」
 「そんなこと言ってないで、早くモンスターポケットミニ図鑑で調べてよぉ!ほら、クレイ、トラップ、起きて!モンスターよ!」
 わたしは、クレイとトラップをたたき起こしながらキットンに言う。
 「しかし、シーサーペントだけでも何種類もいますからね。姿が見えないことには調べようがありませんよ」
 「ふわぁぁぁ、どうしたんだ?」
 「もうちっと寝かしてくれよぉ」
 「シーサーペントよ、わたしたち、狙われてるみたい!」
 寝ぼける男ふたりを揺さぶっていると。
 急にクーちゃんが左右に揺れ始めた!
 「きゃぁぁぁぁぁ」
 「どうしたんだ、クー!」
 わたしたちは必死で柵やパラソルにしがみついた。
 「シーサーペントです!やつが、波を起こしてるんですよ!」
 キットンが指差す先を見ると、潜っていたはずのシーサーペントが、波の向こうでうねうねと動き回っている。
 「あれがシーサーペントか!」
 クレイが、パラソルにしがみついたまま、感動した様子でうめいた。
 「だぁぁぁ、感心してる場合じゃねえって!あいつ、おれたちをからかって遊んでやがるんだ!」
 「クー、だいじょうぶか?」
 ノルが操縦席からクーちゃんに呼びかけるけど、クーちゃんはバランスを保つのに必死みたい。
 わたしはというと・・・さっき、シーサーペントを見たときから、何か引っかかってるんだよね。
 どこかで、そんな話を読んだような・・・
 そうだ、わかった!
 シーサーペント・・・勇者デュアン・サークの若い頃の話に、一度出てくるんだよね。
 確か、ラウドネス・ジューンと言って。聞くものの体中の水分を蒸発させる、ドライ・シャウトを使ってくるんだっけ。
 で、そのときデュアンがどうしたかっていうと・・・
 「シロちゃん!大きくなって、シーサーペントをおどかしてくれない?」
 わたしがシロちゃんに呼びかけると、彼は黒い目をクリクリさせてわたしを見た。
 「パステル、どうしたんだ?」
 クレイに、簡単に説明する。デュアン・サークが、身体の長さでナワバリ争いをするシーサーペントの習性を利用して、撃退したってこと。
 だから、シロちゃんに大きくなってもらえば・・・驚いて逃げてくれるかもしれない、と思ったんだけど。
 「ちょっと待てよ、こんなとこでシロがでかくなったら、クーが沈没しちまうだろ」
 トラップが口をはさんだ。
 「あ、そっか・・・じゃあ、飛びながら大きくなってもらったら?」
 「シロ、そんなことできるのか?」
 クレイが聞くと、シロちゃんは首をかしげた。
 「うーん、やってみたことはないデシけど・・・」
 わたしたちは、考え込んでしまった。
 もちろんその間も、クーちゃんは、荒波にもまれているわけで。
 そのクーちゃんが、突然咆哮をあげた!
 ぐごぉぉぉぉ―――ん!
 「ク、クーちゃん?」
 ビックリしたのは、わたしたちだけではない。ばしゃばしゃと波を起こしていたシーサーペントまでもが、驚いたかのように動きを止めた。
 波間にうねっていた身体の向こう側で、小さな頭をもたげてこっちの様子をうかがっている。
 「今のうちに逃げましょう!」
 キットンが叫ぶ。クーちゃんは景気づけに一発噴気をあげると、猛スピードで泳ぎだした。
 その噴気にますます驚いたんだろう。シーサーペントはしばらくばしゃばしゃと暴れていたが、追ってはこなかった。
 
 「はぁー、よかったぁぁぁ」
 「どうなることかと思ったぜ」
 猛スピードで泳ぎ続けるクーちゃんの上で、わたしたちはほっと一息ついた。
 「おそらく、あれはシーサーペントの子どもですね」
 キットンが、図鑑をめくりながら言った。
 あれで子どもなの!?もし大人だったら・・・ひとたまりもなかったかもしれない。
 「頭がつるっとしてましたからね。彼らは、成体になると、頭にそれぞれの特徴がでてくるんです。角があったり、ヒゲが生えたりね。おそらく、我々をオモチャとでも思ってたんでしょう」
 はぁぁぁ、危うく、オモチャ代わりに沈没させられるところだったわけね。
 わたしは、子どもの頃にお風呂で遊んだアヒルのオモチャを思い出した。
 そういえば、沈めてみたり、波を起こして揺らしてみたり、したっけ。
 背中のゼンマイを回すと、足をバタバタさせて泳ぐんだよね。
 そして、ふと気づいた。クーちゃんが、スピードを落とす気配が全くないことを。
 「ねぇ、ノル。このままじゃ、クーちゃんが壊れちゃうわ。もう普通のスピードに戻しても、大丈夫なんじゃない?」
 わたしがノルに言うと、彼は操縦席に向き直り・・・操作盤をいじった。
 しかし、クーちゃんのスピードに変化はない。
 ノルはこっちを振り返ると、困ったようにつぶらな目をまたたいて、言った。
 「クー、よほど怖かったみたいだ。暴走してる」
 「暴走!?っつーことは・・・方角は?」
 トラップががばっと立ち上がって操縦席に飛んでいってマップを覗き込んだ。
 そしてそのまま頭を抱える。
 「・・・だめだ!狂っちまってる!」
 「クーちゃん、くうったんかぁ?」
 「ぼうそうって、なんデシか?」
 ルーミィとシロちゃんが面白そうにわたしの顔を見上げている。 
 とほほ・・・わたしたち、いったいどうなっちゃうの!?
 
 
 しかし、思っていたよりも早く、クーちゃんの暴走は止まった。
 つまりは、燃料切れよね。普段は、泳ぎながら海の微生物を食べて燃料補給をしてるんだけど、暴走中にそこまでの余裕はなかったみたい。
 燃料補給をしながら、省エネモードでゆっくりと泳ぐクーちゃんの背中で、わたしたちは、やれやれと胸を撫で下ろしたのだった。
 「おっ、マップも復活したぞ!」
 いろいろ操縦盤をチェックしていたトラップが声をあげてバンザイをする。
 さっきまで暗く沈んでいたマップ画面には、方角を示す記号と、距離を示す方眼用紙のような線が復活していた。
 その画面の真ん中に、クーちゃんと思われる、三角形が光っている。
 「あれ?これ、島か何かじゃない?」
 「本当だ」
 わたしが指差したのは、上向きに光る三角形の、ちょうど真上。丸っこい図形が描かれていた。どうやら、このまま行けば島に辿り着けるらしい。
 「じゃあ、その島で少し休むか。さすがに、一度陸地にあがりたい気分だな」
 クレイの提案に、わたしたちは一も二もなく賛成した。
 
 
 ところがその島。
 普通の島じゃなかったのよね。
 まわりは断崖絶壁に囲まれていて、とても上陸できる雰囲気じゃない。
 一箇所だけ、ぽっかりと洞窟が口をあけていて、まるで要塞か何かのようだ。
 洞窟は、海から直接入って行けるようになっていて、真っ暗な奥のほうまで海面が続いているようだった。。
 「どうします・・・?」
 「いかにも、なにかありそうな島だな!」
 「何かって・・・何よ」
 「そんなもん、お宝に決まってんだろ!行こうぜ、ぜってぇ何かある!」
 「トラップ、ちょっと待て。今おれたちは、クエスト終えて帰るところなんだぞ?こんなとこで、余計な寄り道をするわけには・・・」
 わたしたちが、洞窟の前にクーちゃんを浮かべて、こそこそと相談をしているときだった。
 「お前たち!ブクブそこでブクブク何をしている!」
 断崖絶壁の上から、奇妙な声が響いた!
 
 思わず身をすくめたわたしたち。
 そーっと声のするほうを見て、驚いた。
 どうも聞いたことのある話し方だと思ったら、いつぞやの半魚人ではありませんか!
 例の、シェルガーデン島の冒険のときに出会った海賊のキャプテン・ブラック。その手下として働いていたのが、彼ら半魚人、ボッシュだったのだ。
 体つきは人間みたいで、サイズもわたしたちと同じくらいなんだけど。魚みたいな顔に、皮ふはウロコで覆われてて、指の間には水かきがついてるのよね。
 上からわたしたちを見下ろしていたのは、弓を構えた半魚人だった。他にも、数人顔を出している。
 「もしかして、ここは彼らの島なんでしょうかね」
 キットンがぼそりとつぶやいた。
 「ねぇ、あなたたち!わたしたちのこと覚えてない?ほら、キャプテン・ブラックと一緒に冒険したじゃない!」
 わたしは大きく手を振って叫んだ。
 「ばぁ―――か。あいつらがあの海賊かどうか、わかんねーだろ」
 あ、そっか。見たところ海賊船もないし、彼らは種族は同じでも違うグループなのかもしれない。
 「ああブクブ!あのときの!」
 しかし、わたしの叫び声を聞いて姿をあらわした、もうひとりの半魚人。その顔には、確かに見覚えがあったのだ!
 そう、わたしにプロポーズをした、あの半魚人だったの!
 「わたしのこと覚えてる!?」
 「ブクブブもちろんだ。ブブブおまえはわたしのブクブ初恋の女だからなブクブク
 は、初恋~!?
 思わず顔が赤くなる。
 そんなこと、大声で言わなくたって・・・
 半魚人の告白を受けて、他の半魚人たちがざわめいている。
 「ぶはーっはっはっはっ、はっ、初恋だってよ!半魚人の、初恋!」
 トラップがわたしの後ろで笑い転げている。
 う、普段だったらわたしも笑ってたかもしれないけど・・・その相手がわたしともなると、笑えないよ~。
 「よかったなぁ、パステル!光栄に思っとけよ!」
 ヒュン!
 「うわっ、な、なんだよ!」
 ばしばしとわたしの背中を叩いて笑い転げていたトラップのほほを、矢がかすめた!
 と同時に、半魚人たちがボチャンボチャンと海に飛び込み、ぷかぷかと浮かんでクーちゃんのまわりを取り巻いた。
 「パステルブクブ姫。ぜひ我らの島へブブブお立ち寄りください。イサーキ王子の想い人とあらば、ブクブク精一杯おもてなしブクブいたします」
 ひ、姫~!?それに王子って、どういうこと!?
 
 なんと、なんと。
 あの、わたしにプロポーズしてくれた半魚人。実は、この島の王子様だったそうな。
 わたしたちは、彼の部下の半魚人たちに案内されて、洞窟の奥へと進んだ。
 そこは、大きな大きな空洞になっていて・・・ドームのような天井、壁一面にさらに洞窟が口を開けていた。
 「あの穴のブブブひとつひとつが、我らの家にブクブクなっているのです」
 案内してくれている半魚人が指を指して教えてくれた。
 「こ、これは素晴らしい!ボッシュの集落に入れるなんて!」
 キットンはさっきから感動しきりで、メモを取るのに大忙しだ。
 わたしの横には、ぴったりと王子様がくっついている。
 うーん・・・なんというか・・・微妙な気持ちだわ・・・
 これが本当に人間の王子様だったら、言うことはないんだけど・・・
 ちらりと王子の顔を見ると、彼は離れ気味の目でジッとわたしを見つめた。
 その熱いまなざし!
 うわー、半魚人相手に、ドキッとしてしまうわたしって、どうなの!?
 
 「さぁブクブ、どうぞお召し上がりくださいブブブ。お口に合えば幸いです」
 白いバンダナを巻いた、コックらしき半魚人が大皿を次々と並べていく。
 うわぁ、おいしそう!
 焼き魚に、海草のサラダ、貝の煮込みらしきもの・・・海の幸がふんだんにつかわれた、豪快な料理がわたしたちを釘付けにした。
 「ところで、王子様。あなたは王子でありながら、なぜキャプテン・ブラックと共に海賊をしていたんですか?」
 キットンが、興味津々といった様子で王子に尋ねる。
 それはわたしも気になってた。海賊って、あまり・・・プラスのイメージではないじゃない?船を襲ったりもするわけだし。それを、高貴な身分である王子がやってるっていうのは、人間の世界では考えられない。
 王子は、鷹揚にうなずいて、言った。ちなみに彼は、今は貝殻がいっぱい縫い付けられたゴージャスな服を着て、頭には同じく貝殻の冠をかぶっている。
 「それはブクブブ、修行のようなものだ。ブクブこの島ではブク、戦士としての力をブクブブつけるため、成人する前にブクブク海賊修行に出る。そして成人するとブクブブ、島に帰って結婚するブブ
 「なるほど、その種族特有の通過儀礼のようなものですね!」
 うんうんとうなずくキットン。わたしはキットンに尋ねた。
 「通過儀礼って、何?」
 「時々あるんですよ。例えば、特定の獣を狩ってこないと成人として認められないとか。あと、高い崖から命綱一本で飛び降りるというのも聞いたことがあります。ボッシュの場合は、それが海賊修行なんですね」
 うわ、きびしー!
 ううう、そんな通過儀礼するくらいなら、成人しなくてもいいよ!
 「ふーん。・・・ってことは、王子はもう成人したのか」
 クレイが感心したように王子を見る。
 「そうだブクブ。だから、ブクブク結婚相手を探している」
 王子がわたしを見つめた。
 えっと、それって、わたしってことじゃ・・・ないよね?
 わたしが困っていると、王子は気分を変えるようにみんなに言った。
 「わたしのことはブクブク、イサーキと呼んでもらってブブかまわない。王子はブクブ、わたしだけではないのでブクブク、まぎらわしい」
 イサーキが言うやいなや、わたしたちのいた洞窟の奥から、4人の半魚人がやってきた。
 「おまえかブクブブ、イサーキの初恋のブクブ、人間の女は!」
 「いいねぇブクブ、姫、イサーキなんかやめてブクブブおれにしない?」
 「いやブブブ、ぼくのほうがブクブク姫にはお似合いだと思うな」
 「かーわいい!ブクブクイサーキ兄さんはブブ、メンクイだなぁ」
 彼らは、ブクブク言いながらわたしのまわりに群がった。
 うそ、これって、・・・わたし、モテモテってこと?
 がぁぁーん、わたしって、半魚人好みの顔だってこと!?
 わたしが半魚人に囲まれてるのを見た、トラップの喜ぶこと喜ぶこと!
 「パステルー、モテモテじゃねえか!そんな、なんの取り柄のない顔でも、半魚人にはモテるんだなー!」
 ううう・・・嬉しくないよー。
 でもここでそんなこと言ったら、半魚人たちに失礼だし。
 わたしが無言でトラップをにらみつけていると。突然、イサーキの部下が駆け寄ってきて、トラップを押さえつけた!
 「いててて、なにすんだよ、このサカナ野郎!」
 「黙れ!ブブブわれらの姫に、ブクブク無礼な口をきくな!」
 「だぁら、こいつは、別におめーらの姫なんかじゃ・・・」
 「姫なんかとはなんだ!ブクブク
 あららら。トラップがあっという間に引っ立てられてしまった。
 「イサーキ、トラップは、いつもああなのよ。わたしも、慣れてるし・・・あんまり、手荒なことはしないであげて」
 イサーキは、分厚い唇をまげてニヤリと笑った。
 
 5人の半魚人の王子。
 五つ子で、上から順に、サンマー、カジッキ、イサーキ、ブーリー、サワランと言うんだそうな。イサーキは、ちょうど真ん中ってわけ。
 正直なところ、あんまり顔での見分けはつかないんだけど・・・
 長男サンマーは、割と大人っぽい話し方で。次男カジッキはプレイボーイ風。四男ブーリーはちょっと斜にかまえた感じ。五男サワランは女の子みたいな可愛らしさがある。
 彼らは、さっきからわたしにいろいろと話しかけている。
 「ねえねえブクブク、姫はどんな人が好みのタイプ?ブブブ
 贅沢言わないんで、とりあえず人間がいいです。
 「姫に似合いそうなブクブクイソギンチャクを取って来てあげたよブブ
 あんまり嬉しくないです。ぎゃー、髪につけないで!
 「この島は平和だしブクブ、姫に苦労はさせないよブクブク
 うーん、それは確かに好条件なんですけど。
 「おまえたちブクブ、姫が困ってるじゃないかブブブ。姫、あちらでふたりでブクブク話しませんか」
 ・・・それも困ります。
 「おまえたちブブブ、あっちに行くんだ!ブクブク
 イサーキが言っても、兄弟たちは知らん顔。
 飲み物を注いでくれたり、干した作ったとおぼしき扇子であおいでくれたり、ほんとにわたしのことを姫扱いだ。
 いや、いたれりつくせりで、これがまた悪い気はしないんだな。
 なんだか顔がニマニマしてしまう。
 だってさ、こんな扱い、今までに受けたことないんだもん!
 うふふー、なんだかいい気分!
 巻貝のコップに注がれた飲み物・・・あれれ、もしかしてこれ、お酒だったのかしら?
 
************************************
 
 ったく、なんなんだよ!
 おれは、半魚人たちに引っ立てられて、パステルたちから引き離された。
 別に、ちょっとふざけただけじゃねーか、いつものことだよ!
 それをなんだ、姫に無礼な口を聞くなだと?
 いつあいつがおめーらの姫になったんだよ!
 おれは、洞窟の壁にもたれかかって、頭の中でブクブクと・・・じゃなかった、ぶちぶちと文句を言っていた。
 口に出そうもんなら、見張りよろしく、おれのすぐそばで突っ立っている半魚人に、またなんか言われるに決まってる。
 あーあ、なんでこんなことになってんだ。
 クレイやキットン、ノルは酒らしきものを振舞われて上機嫌だし、ルーミィとシロは洞窟の中を走り回って、半魚人も巻き込んでオニゴッコだ。
 なんて平和なやつらだ!!まったく!!
 半魚人の王子たち(そもそもなんだよ、半魚人の王子って!)に囲まれたパステルは、嬉しそうに相手をしている。
 そーかよ、おめーは人間より半魚人がいいのかよ!
 いや、あいつ・・・顔、赤くねぇか?
 よくよく見ると、身振り手振りもオオゲサで、ヘラヘラクネクネしてる。
 おいおいおい、あいつにまで酒飲ませたのかよ!
 おれは、壁にもたれたままズルズルとずり落ちた。
 パステルは、はっきり言って酒には弱い。あれでも普通の家のお嬢さんだったからな、ガキの頃から盗賊団の連中と一杯やってた、クレイやおれとは違う。
 一度、ジュースと間違えて誰かのビールをイッキしたときは、そのままドーンとぶったおれたっけ。
 あーあーあー、もうだめだ、ありゃ。
 イソギンチャク頭にくっつけて、喜んでら。
 「姫ブクブ、おれの気持ちにブクブブ応えてくれるのかい?」
 「えー、うふふ、どうしようかなぁ」
 「ま、まて!ブクブク一番に見初めたのはブブ、わたしだ!」
 「イサーキ兄さんブクブブ、抜け駆けはいけません」
 「やだー、王子ぃ、ケンカしないでぇ」
 あいつ、トロンとした目で、半魚人たちに色目使ってやがる。
 ほんのり上気した頬もいい具合で、遠目で見りゃそれなりの色気だ。それが半魚人にどう見えるのかは知らねーけどな。
 ・・・このままだと、プロポーズされて、ウンと言いかねない。
 いや、さすがにいくら酔っ払ってても、半魚人と結婚するなんつーことは・・・
 いやいや、しかし、ウンと言ったら最後、無事に帰してもらえるような雰囲気じゃねえしな。
 っつーか、半魚人と人間で結婚して、なんつーか、その・・・コドモはどうなるんだ!?
 半々魚人!?
 ・・・こんなこと考えてるおれも、どうかしてんな。
 内心ハラハラしながら、耳をそばだてているおれのところへ、酔っ払ったクレイたちがヘラヘラとやってきた。
 「よーお、トラーップ!気分はどうだ!」
 「いいわけねーだろ!」
 おれはパステルから目を離さないまま、ブスッとして答える。
 「ぎゃっはははははっは、そりゃーそうでしょうねー、パステル親衛隊ができちゃあ、ねー!」
 キットンがおれの肩をバシバシと叩くと、なぜかノルまで楽しそうに、ニコニコとおれに酒を差し出した。
 「まぁ、トラップも飲め」
 おれは無言でそのコップを受け取ると、一気に飲み干した。
 かすかに磯の香りがして・・・うまいが・・・これ、相当強い酒だぞ!
 「おめーら、ノンキに酒なんか飲んでる場合じゃないだろ!このまま、パステルが半魚人と結婚しちまったら、どーすんだよ!」
 おれが言うと、3人は不思議そうに互いの顔を見合わせた。
 「それでパステルが幸せなら、いいんじゃないか?」
 「そうです、パステルの人生は、パステルのものです」
 「パステル、ここで幸せになれる」
 ・・・酒に、なんか催眠薬でも入ってんじゃねえだろうな。
 半魚人と結婚して、幸せになれるかっつーの!!
 おれが酔っ払い相手に頭を抱えていると、パステルがおれたちを呼んだ。
 「ねー、クレーイ、トラーップ、キットォーン、ノールー」
 おれたちが、その腑抜けた声のパステルの元へ行くと、パステルは半魚人の王子たちを一列に並べて、おれたちに示した。
 「ねえ、だーれが一番、カッコイイと思ーう?」
 呆れてモノも言えないおれを尻目に、酔っ払いたちは好き勝手に品定めを始めた。
 「そうだなー、この一番右の・・・え?サンマー王子?彼は目がいい。なんというか・・・凛々しい感じがするよな」
 「こちらのかたは、唇のかたちが非常に艶めかしいですね」
 「みんな、それぞれ魅力がある」
 酔っ払いたちが真剣に言うもんだから、王子たちは大喜びだ。
 パステルも、ニコニコと王子たちを眺めている。
 おいおいおい、まじかよ!?
 このまま・・・まさかまさかな展開になっちまうんじゃ・・・?
 「ぱぁーるぅ」
 おれが、パステルの目を覚ましてやろうと、そっとデコピンの用意をしたときだった。
 ぽてぽてぽてとやってきたルーミィ。
 ルーミィは、両手に持ったイソギンチャクやヒトデを、パステルに差し出した。
 「ルーミィ、いいにおいがして、べたべたしないお花であそびたいおう」
 一緒にやってきたシロの長い毛には、イソギンチャクやヒトデが絡まっている。
 それを聞いたパステルの目に、すーっと正気の色が戻ってきた。
 「そっかー、そうよね。クーちゃんも待ってるし、そろそろお暇しようか」
 おおお、ルーミィ!!おめえはすごいぞ!
 ガキの言葉っつーのは、時にものすごい影響力があるよな。特に母親代わりのパステルには。
 よし、今度ルーミィには、なにかうまいもん食わせてやるか。
 パステルは、髪にくっつけていたイソギンチャクを引き剥がすと、照れ笑いをして王子たちに返した。
 「ごめんなさい、やっぱりわたし、シルバーリーブの、わたしたちの家に帰ります」
 
 おれたちは、名残惜しそうな半魚人たちに見送られて、島を出た。
 は? 酔っ払いはどうしたって?
 クーの背中で、ぐっすりだよ。
 半魚人たちに、もう少しゆっくりしてけば酔いも醒めるって散々引き止められたけど、これ以上やっかいな目にあうのはごめんだからな、おれがクーを操縦して、とっとと出てきた。
 「トラップったら、こんなに急いで出発しなくても、よかったのに」
 「うっせー」
 すっかり正気に戻ったパステルに、おれは投げやりに言った。
 ったく、こいつは何にもわかっちゃいねえよな。
 「ねえ、トラップ見た?わたしたちが帰るとき、半魚人の女の子たちが、あからさまに安心した顔して見送ってたの」
 「んなもん、知ってたっつーの。あれでも、王子だからな、そりゃ人気もあるだろ」
 帰り際どころの話ではない。パステルが姫と呼ばれてはしゃいでいるときだって、悔しそうに物陰から見つめる半魚人が何人もいた。
 王子が海賊修行から帰ってきて、嫁探ししてる時期だ。玉の輿を狙ってる女(メス?)は山ほどいるだろう。
 ちなみに、おれにはそれがほんとに女だったのかどうかなんて、わかりゃしねえけどな。
 どいつもこいつも、ほとんど同じ顔してんだぜ?
 「そうよねー、なんか、悪いことしちゃった。余計な心配させちゃったよねー」
 「ちぇ、んで、おれには一言もナシかよ」
 「え?なにが?」
 「なんでもねーよ!」
 おれは、あくびをするフリをして、大きく伸びをした。
 ああ、空は青く。海は果てしなくってやつだ。
 ちくしょう、半魚人なんかに取られて、たまるかっつーの!
 
 
 もちろんおれは、そのときにはまだ、人間をライバルにするハメになろうとは、思いもしなかったのだった。
 よりにもよって、人間の中でも相当レベルの高いやつをな!
 
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はじめに

当ブログはFQの非公式ファンサイトです。
公式各所とは一切関係ございません。

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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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