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まいむのFQ二次創作

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同窓会は楽しいな!?

スンダン予備校での元クラスメイト、サキとドリがシルバーリーブにやってきた!
突然の再会に大喜びのパステル。
モチロン、その夜は宴会になって・・・!?

※フォーチュンクエスト外伝Ⅱのキャラが出てきます。
 トラップ視点です。






 よっしゃぁ、次で、終わりだぁぁ!!
 おれは、すっかり軽くなったメッセンジャーバッグを肩にかけなおした。
 ったく、今日は妙に配達する手紙が多くってよ。
 とっととバイト終わらせて、日の当たるベッドで昼寝でもしようと思ってたのに。すっかり夕方になっちまったじゃねーか。
 シルバーリーブも、もう春になる。村のあちこちには、色鮮やかな花が咲き始めている。冬の間、バイトで生活費を溜めていたおれたちも、そろそろクエストを探そうと思っているところだ。
 バッグから最後の手紙を出して、そこに書かれているあて先を確かめる。
 んだよ、ウチじゃねーか!
 キットン宛だ。ケッコー通販のダイレクトメールだよ。
 ・・・一日の終わりにふさわしくねぇ手紙だな。
 おれがウンザリしながら、足を引きずるようにして歩き出そうとしたときだった。
 「あ、ちょっとちょっと、郵便屋のおにいさん!」
 いかにもノーテンキそうな、高い声をかけられた。
 振り向いて驚いた。
 うわ、なんだ、この男。・・・男だよな?
 金髪ロングのサラサラヘア。ぱっちりとした目はきらきらと輝いていて、整った顔の真ん中で、大きな口がニコニコとめいっぱい笑っている。
 美形なんだろうが、なんつーか、ちぐはぐした男だな。
 バラの花かなんか持って、窓辺に俯き加減でたたずんでるといい感じかも。
 「おにいさんさ、郵便屋さんだろ?おれたち、人捜しをしてるんだけど、ちょっと教えてくれないかな」
 おれたち、というのは、男の後ろにいる馬車のことらしい。
 派手さはないが、シッカリした造りの二頭立ての馬車だ。中に誰か乗っているらしく、人影が見える。
 「ああ、いいけど」
 おれがうなずくと、男はさらに顔を輝かせてバンザイした。
 「さんきゅー! あのさ、パステルって女の子が住んでる家、知らない?」
 なんだぁ?こいつ、パステルの知り合いか?
 期待に目を輝かせている男をしげしげと見る。
 「・・・知ってるも何も、おれ、一緒に住んでんだけど?」
 おれが硬い声で答えると、ヤツはいきなりおれに抱きついた!
 うわわわ、なんなんだ、コイツ!!
 「んだよ、おめー!離れろー!」
 おれがヤツをひっぺがすと、ヤツはそのまま踊るような足取りで馬車に飛びつき、窓をバンバンと叩いた。
 「やったー、ドリ、ドリ、やったよ!パステルに会えるよー!」
 ・・・この能天気ぶりを見ると、おれのさりげない牽制は無駄だったようだ。
 男だから警戒しちまったけど、ただ単にパステルの知り合いらしい。
 「サキ、落ち着いて。ほら、その方も困ってるじゃない」
 馬車から、連れらしい女が顔を出した。
 おおお、これがまた、絶世の美女!
 薄茶色のふわふわの髪。長いマツゲに、ふっくらとした頬、優しげな口元。
 おれの好みのセクシータイプじゃないのが残念だ!
 「ああ、そうだったね。ドリ」
 ぼりぼりと頭をかくサキ。ドリと呼ばれた女は、おれに向かって軽く頭を下げた。
 「わたしたち、エベリンのスンダン予備校で、パステルと一緒に勉強してたことがあるのよ。彼はサキ。わたしはドリと言います。よかったら、あなたたちのおうちに案内していただけないかしら」
 「よろしく!」
 ドリと共に、サキが勢いよく手を挙げた。
 スンダン予備校・・・おれらが、まだ正式にパーティを組んでなかった頃、それどころか、パステルなんて冒険者にもなってなかった頃のことだ。
 おれやクレイは当たり前のように冒険者テストに合格したが、パステルのバカだけテスト落っこちたんだよな。あのルーミィでさえ一発だったのによ。
 そのとき、パステルが通ってたのがスンダン予備校だ。
 ふーん、いわゆる元クラスメイトってヤツか。
 詩人クラスに通ってたわけだから、美形なのもうなずける。・・・だぁら、パステルがフツーすぎるんだ。
 「ああ、いいぜ。おれはトラップ。パステルと同じパーティで、シーフやってる」
 
 馬車に乗せてもらうのも、なんか気が引けたんで、おれは馬車を先導する格好で家まで案内してやった。
 サキも悪いやつじゃなさそうだけど、まだ掴めねぇしな。
 ま、女連れってことは、・・・そういう心配はいらなそうだけど。
 どういう心配かって? おめぇ、それ聞くか? いちいち言わせんなよ!
 「お、見えた見えた。あれが、おれたちの家だ」
 「うわー、あんたたちすごいな、こんなでかい家に住んでんのかぁ!」
 おれが、家を指して振り返ると、御者をやっていたサキが大声を上げた。
 「へへっ、中古だし、一度は焼け落ちた家だけどな」
 ジャイアントスパイダーゴンにやられちまって、一度は燃えてしまった。だがその後で、リタ他、シルバーリーブの連中にも手伝ってもらって、やっとのことで再建した、我らが根城ってやつだ。
 褒められて、悪い気はしない。
 家の外では、ノルが自作のホウキで掃除をしていた。
 なんで自作かっつーと、ノルの身長で普通のホウキを使うと、腰が曲がっちまうからな。やつは、ついでにルーミィの分のホウキも作ってやっていた。
 そのルーミィは、ノルが掃き集めた葉っぱを、ホウキで散らして遊んでいる。シロは葉っぱの上を転げまわっていた。
 「よう、ごくろー」
 おれが声をかけると、ノルはうなずいて言った。
 「おかえり、トラップ」
 「とりゃーぷ、おかえりー!」
 「うわわ、痛てぇよ、バカ」 
 足元にルーミィが寄ってきて、ホウキで叩いてくるもんだからたまらない。おれは、逃げ回りながらノルに尋ねた。
 「パステルは?うちにいる?」
 「ああ、原稿書いてる。どうしたんだ?」
 「ルーミィ、ぱぁーるよんでくるお!」
 ルーミィがホウキを放り出して、家の中へ駆け込んで行った。
 「おう、頼むぜ」
 おれはその小さな背中に叫んでから、ノルに肩をすくめてみせた。親指で、ピッと馬車を指す。
 「パステルに、客なんだよ。スンダン予備校での、クラスメイトだったんだとさ」
 「スンダン予備校・・・?」
 首をかしげるノルを見て、おれは思い出した。
 ノルがおれたちと初めて会ったのは、もうちょい後だもんな。
 「あー、そっか。あんときノルはまだ一緒にいなかったっけ。まだ、あいつが冒険者になってないときの話だよ。ま、ともかく、古い知り合いらしい」
 「そうか」
 おれたちが馬車の方を振り返ると、サキが馬車に頭を突っ込んで、なにやらごそごそやっていた。
「トラップったら、帰ってくるなり呼びつけないでよ!」
 ルーミィに引っ張られてパステルがやってきた。
 おおかた締め切りが迫ってるんだろう、あまり顔色も機嫌もよくない。
「おめー、あんまり根詰めんなよ」
 思わず言うと、パステルは目を見開いて、おれをまじまじと見返した。
「あらら、珍しく優しいこと言ってくれるじゃない。んで、何か用?」
「おめーに、客。元クラスメイトだってよ。えーと、名前は・・・」
「うっそー、信じられない!サキに、ドリじゃないの!」
 おれが話している横をすり抜けて、パステルが馬車に駆け寄った。
 まるで姫をエスコートするどこぞの王子のように、馬車を降りるドリに手を貸していたサキ。実際にそんなことをする男がいるのには驚きだが、なんせビックリするほどの美男美女だ、かなり絵になる。
 二人は、やってきたパステルを見て、満面の笑顔だ。
「パステルー、久しぶり!」
「元気そうね!」
 よほど嬉しいらしく、パステルは二人に抱きついて飛び跳ねている。
  「やだー、どうしてシルバーリーブに来たの!?今なにしてるの!?サキはお父さんの仕事を継いだんでしょう?」
  「やだ、パステルったら。ほら、泣かないのよ」
  「あー、ドリがパステル泣かしたー!」
  「う、ぐすっ・・・だって、嬉しくて、信じられなくて、わけわかんないんだもん!」
 パステルは、クマの浮き出た目をこすって、笑う。
 やれやれ。おれはノルと顔を見合わせた。
 今日の夕メシ当番は、クレイだっけな。クレイのことだから、たぶんカレーかシチューだろう。ま、二人増えるくらい、何とかなるだろ。
  「クレイに言ってくる」
 ノルは、おれの考えていることを察して、家に入って行った。
 再会を喜ぶ三人に視線を戻すと、サキとドリの二人は交互にルーミィを抱き上げている。
 この分だと、今夜は宴会だな。
 んじゃ、おれは猪鹿亭に、差し入れでも頼んでくっかな。
「おいパステル、おれ、ちょっくら猪鹿亭まで行って、リタに何か作ってもらってくる。あれだろ?あんたたちも、夕メシくらい、食ってくだろ?」
 おれが声をかけると、パステルはぱっと振り向いて笑った。
「トラップ、ありがとう!サキ、ドリ、今夜は泊まっていってよ。パーティのメンバーも紹介したいし、積もる話もあるしね」
 おれは、パステルの弾んだ声を背に、ついさっき来た道を戻って行った。
 ・・・悪かねぇよな、こういうのも。
 昔の知り合いや仲間が、次から次へと訪ねてくれるような・・・そんな家。
 旅館暮らしのときは、そんな状態じゃなかったし。
 あれからおれらもいろんなクエストこなして、あちこちに知り合いも増えたし。
 そんな仲間と、酒でも飲みながら昔話する・・・いいよな。
 なんにせよ、追い詰められてた顔のパステルが、元気になったしな。
 ま、締め切りくらい、なんとかなるっつーの!
 おれは帽子をぎゅっと押さえて、駆け出した。
 シルバーリーブの村には、温かな光が灯り始めていた。
 
 おれが戻ると、食卓には宴会の準備がほぼ整っていた。
 メインはクレイの特製カレー、パステルの作ったらしいサンドイッチや、キットンの毒々しいキノコサラダも揃っている。そこに、おれがリタからもらって来たカラアゲ、フライドポテトなどを並べる。
 大きな食卓の一番奥に、サキとドリがにこにこと座っていた。
「トラップ、おかえり。猪鹿亭まで行ったんだって? 珍しく気が利くじゃん」
 エプロン姿が妙に似合ってるクレイが、おれの肩に手を置いた。
 パステルが喜んでるのが嬉しかったから、なんて口が裂けても言えねえ。
 おれはクレイの手を払いのけてニヤリと笑った。
「ばぁか、珍しく、じゃねえっつーの。おれはいつでも気が利くんだよ!こんな気配り上手な男はそうそういないぜ?」
 そのおれの頭を、パステルがはたいた。
  「なーに言ってんのよ。はい、トラップはビールでしょ。ささ、座って座って。乾杯しましょ」
 パステルはおれの手にビール瓶とコップを押し付けると、今夜のゲストのほうに向き直った。
  「サキはビール?ドリは?」
 そう言われたドリは、ぱっと顔を赤らめると、うつむいた。
 サキが、その肩を抱くようにして、パステルに微笑んだ。
  「おれは、ビールもらうよ。ドリは・・・今、ビール飲まないようにしてるから、ジュースもらえるかな」
  「え?ああ、もちろんあるわよ。わたしもジュースだし。どうしたの、ドリ。どこか身体の調子が悪いとか・・・?」
 心配そうにドリを覗き込むパステル。
  「ぎゃっはっはっは、パステル、あなただって曲がりなりにも女性なんですからね!分からないんですか?」
  「おおお、そうか、そういうことか!おめでとう!」
 クレイが手を叩く。
 おめでとう・・・酒が飲めない・・・ってことは、もしかしてアレか!?
 マジかよ!うわー、なんか照れくせぇな。
 おれはそっぽを向いて、無言で手を叩いた。
  「えええ、何、トラップまで!」
 おろおろするパステル。
 その横で、ノルが拍手しながらにっこりして呟いた。
  「赤ちゃんだ」
 
  「では、サキとドリとの再会と、二人のオメデタを祝して!かんぱーい!!」
  「かんぱーい!」
 おれは適当にコップを合わせて、一気にビールをあおった。
 シッカリ冷やしてあって、うまい。ちくしょー、これから暑くなってくると、この一杯が何にも替えがたいシアワセになるんだよなー!
  「しかし、どうしてわざわざシルバーリーブへ?」
 クレイが、二杯目のビールを手酌しながら、サキとドリに尋ねる。
  「おれ、親父の家業を継ぐために、商売の手伝いをしてるんだよ。でさ、今度、ここの近くの村の、温泉水を扱うことになって・・・飲むと、どんな病気でもたちまち治るっていう」
 温泉水!?
 ・・・なんつーか、懐かしいような、思い出したくないような響きだな・・・
  「もしかして、ヒールニントの温泉水?」
  「そうそう、さすがだね、っていうか、おれたちはそこでパステルの話を聞いたんだよ。近くの、シルバーリーブって村に住んでるよって」
  「わたしたちの話!?」
  「そうよ。あなたたち、ヒールニントを救ったんですって?パステルを知ってるって言ったら、わたしたちまでものすごく歓迎されちゃったわ」
  「ええー、救ったっていうか・・・まぁ結果的にはそうだったんだけど。あの時はなかなか大変な目にあったのよ」
  「でもすごいよなー、あのパステルが、ちゃんと詩人になって、冒険して、村をひとつ救っちゃってるんだもんなー」
  「訂正!ちゃんと、じゃなくて、なんとかギリギリ詩人になって」
  「トラップぅぅぅ」
  「うぐぐぐ、ぐるじぃ~」
 おれが茶々を入れると、パステルが恨めしそうにおれの首を絞めた。
 みんなが笑い出す。
  「でも、サキやドリだってすごいじゃない。サキはもう立派な商人でしょ?ドリだってもうすぐお母さんじゃない」
 パステルに感心されたドリは、またまた顔を赤らめて、ちらりとサキを見ると、答えた。
  「そうね。わたしも、驚いたんだけど・・・神様が授けてくださったのね」
  「いいなぁ。ドリがお母さんかぁ・・・きっと、優しくてステキなお母さんになるんだろうなぁ」
 パステルが遠い目でつぶやく。
 おおかた、伝染病で死んだ自分の母親のことを思い出しているんだろう。
 すぐわかるんだよ、こいつは、そういうときは明らかにしょんぼりするからな。 
  「おめーは、きっとロクな母親にならねーぞぉ。泣き虫で、方向音痴で・・・」
  「う、うるさーい!」
 おれがケケッと笑いながら言ってやると、パステルはおれが食ってたカレーのスプーンを取り上げた。
  「あ、こら、返せ!!」
  「しかし、あなたがたの子供だったら・・・きっと、ものすごい美人な子が生まれるんでしょうねぇ」
  「うんうん、確かに!」
 キットンの言葉にみんなで激しくうなずくと、サキとドリは照れ笑いを浮かべた。
  「おれたちの種族は、みんなそういうもんだからなぁ。美人とか美形とか言われても、あんまり実感が沸かないんだけど・・・」
  「どんな子が生まれても、嬉しいわ」
 そう言って、ドリが膨らんだ腹部を撫でた。
  「そこに、あかちゃんがいるのかぁ?」
 ぽてぽてと近づいていったルーミィが、ドリを見上げて言う。
  「そうよ、触ってみる?」
 ドリが微笑むと、まさに聖母の微笑みってやつだ。
 おれまで、柄にもなく和むっつーか、穏やかになるっつーか・・・
 ルーミィがドリの腹部に手を当てる。
  「どり、おなかパンパンだお。ルーミィのおなかといっしょだお。ルーミィのおなかにも、あかちゃんがいるのかぁ?」
  「ばーか、おめえのは食いすぎだって」
 おれがからかうと、ルーミィは頬を膨らませた。が、ハッとしてドリの顔を見上げる。
  「いま、うごいた!」
 目を輝かせるルーミィの頭を撫でて、サキが言う。
  「そうだよ、きっと、早くルーミィちゃんと遊びたいって言ってるんだよ」
  「あしょぶ、あしょぶー! いつ?いつになったらあそべうんだ?」
  「そうね、あと、もうちょっとかな」
 なんとも幸せそうなその様子を見ながら・・・おれは、静かにビールに口をつけた。
 おれも、いつか・・・あんな顔をするようになるんだろうか。
 ああやって、誰かと家族になって、新しい家族を作って。
 あのサキのように、強い確かな光を目に宿して・・・
 ふとパステルを見ると、なんともせつなそうな顔で、サキとドリを見つめていた。
 あいつも、いつか・・・ドリのように、母親になるんだろう。
 きっと、今と変わらない泣き虫で、でも今と変わらないあのノンキな顔で、でかい腹抱えて笑ってそうだな。
 それを想像すると、口元がゆるんだ。
 
 宴もたけなわ。
 ドリが、パステルとルーミィにせがまれて、歌を歌い始めた。
 おれは知らないが、ルーア人という種族は、多くの有名な詩人を輩出しているそうだ。しかもドリは、その中でも代表的な詩人、オーレ・ラーデの直系だそうで。
 パステルが言うには、冒険者テストも、予備校に通う必要がないくらい優秀な成績で通ったらしい。
 それがどうして、冒険者にならなかったかといえば・・・家を継いで商人になる、恋人サキに付いて行くためらしい。
 酔いも手伝って、おれは素直に羨ましいと思った。
 その男といることが、彼女にとって何よりの幸せってことか。
 
  あなたの声が聴きたくて 今夜も窓辺で待ってる
  わたしを呼ぶその声を いつか聴けるその日夢見て
  月が満ち そして欠け 潮が満ち そして引き
  あなたに出逢えるその日まで
  わたしは窓辺でずっと待ってる
 
 窓枠にもたれかかっていたおれは、ドリの歌声を聴きながら夜空を見上げた。
 満月が、白く輝いている。
 「いいだろー、ドリの歌!」
 真っ赤な顔をしたサキが、ばーんとおれの肩をどついた。
 おいおい、こいつ、かなり飲んでねぇ?
 「おれだって、歌おうと思えば歌えるんだけどなー。子どもには人気あるんだぜ?アーリア人の父がいるー、アーリア人の母がいるー!」
 「なんだよ、その歌!」
 いきなりこぶしを振り回して大声で歌いだしたサキを、ドリが困ったように笑いながら見つめていた。
 「ふふ、サキが歌うと、おなかの子が喜ぶのよ。ほら、また動いてるわ」
 「それ、わかるかも。きっと、元気が出るのね!」
 パステルとドリが笑い合っている。
 その様子を見たサキ、パステルの両肩に手をかけて揺さぶって言った。
 「そうだ!パステル、おれ、パステルの歌を作ってあげるよ!」
 「ええ? わたしの歌?」
 「そうそう、予備校にいたとき、励ましてもらったからさ、そのお礼ってことで」
 「それは面白そうですね!聞きたいです、はい」
 「パステルおねーしゃん、いいデシね!」
 キットンやシロに言われて、パステルは首をかしげるようにしてうなずいた。
 「なんだか恥ずかしいけど・・・お礼って言うなら」
 「任せとけって!とびきりの名曲を作るぞぉー」
 そう言ってガッツポーズをしたサキは、なぜかおれの隣に戻ってきた。
 「じゃ、そういうことで」
 「ぶはっ!!げ、げほげほげほ・・・」
 ちょっと待て、何がだ!
 おれがむせながらにらみつけると、サキはきょとんとした顔でおれを見る。
 「いや、トラップに手伝ってもらおうと思って」
 「なんでおれが手伝わなきゃなんないんだよ!」
 「なんでって。いいじゃん、一緒に考えてくれよー。おれ、歌は好きだけど、うまいこと言葉が出てこなくてさー」
 「・・・じゃあ、歌を作ってやるとか、言うなよ」
 「いやー、その場のノリってやつかな?あはははは」
 おれは憮然として、コップのビールをあおった・・・が、空っぽだ。
 なんなんだよー!
 「そうだなぁ、パーステルのパはー、パーティのヒロインのパー♪」
 サキはおれにおかまいなしに、歌い始める。
 こいつ・・・声はいいんだよな。
 「パーステルのスーはー、ステキな女の子の、スー♪」
 ・・・メロディも悪くはないんだよな、うん。
 「テはー、テーはー、うーん」
 しかし・・・・・・お礼の歌がそれって・・・それでいいのかよ?
 だったらいっそのこと・・・もっと面白く・・・
 おれはひらめいた!
 「ちょい待て、だったら、こうしようぜ」
 おれは、サキの腕を引いて、密談を始めた。
 
 「では、おれ、サキがパステルのために歌います!」
 おおー、ぱちぱちぱち。
 スプーンを、マイクよろしく握りしめたサキが、宣言する。
 クレイや、キットン、ノルも面白そうに拍手する。
 当のパステルは、ルーミィとシロを膝に乗せ、嬉しそうに待っていた。
 さーて、おれは、ズラかる準備をしておくとするか。
 忍び足でダイニングを出る。
 堂々たる歌声で、酔っ払いサキのリサイタルが始まった!
 
  パーステルのパーは、もちろん毛糸のパンツのパー
  パーステルのスーは、好きなタイプは半魚人ーのスー
  パーステルのテーは、方向音痴の天才のテー
  パーステルのルーは、詩人らしくないルックスのルー
  大好きさ、パステル みんなの人気者さー
 
 しばしの沈黙。
 「ぎゃっはっはっはっは!す、素晴らしい!」
 「だはははは、あー、く、苦しい!」
 「サ、サキ、あなた、なんて歌を・・・く、ふふふ・・・くすくすくす」
 「ぱーるぅ、けいとのぱんつだぉ!」
 笑い声がはじけた。
 「あははは・・・も、もう、サキったら!し、失礼しちゃう・・・あっはっははは」
 パステルも、自分のことなのにおかしそうに笑っている。
 へへっ、さっすがトラップ様の作詞!
 ま、宴会芸っつったらこんな感じだろ!盛り上げてナンボだぜ!
 サキのノーテンキな声で元気いっぱいに歌われると、バカにされてる気がしねぇだろ?最高の仕上がりだ!
 おれは、扉に耳をつけてニヤリと笑った。
 「どう、どう? 作曲はおれ、作詞はトラップ!」
 得意げなサキの声がダイニングに響く。
 しまった。口止めしてなかったっけ。
 だぁぁ、あいつ、余計なことを!
 「あ、やっぱり・・・?」
 「ですよねぇ、彼が毛糸のパンツや半魚人のことを知ってるはず、ありませんからねぇ」
 クレイとキットンが言い交わしている。
 あ、そりゃま、そうだっけな。
 おれは、忍び足で廊下を駆け抜けた。
 「と、ト、と、トラップぅぅぅぅ―――!!!」
 パステルの叫び声が家を揺るがす。
 ダイニングの扉が、ばーんと開いた・・・んだろうな。
 その頃には、とっくにおれはトンズラだ。へへっ。
 
 おれは、ダイニングの様子が見える木の上から、ぷりぷり怒っているパステルを眺めていた。
 「もぉぉ、トラップったら! いつもいつも、あんなふうなんだから!」
 「まぁまぁパステル、でも・・・ぷぷぷ・・・いや、その・・・うぷぷぷ」
 「トラップの言ってることは全部ほんとのことですからねー!ぎゃっはっはっはっは」
 「クレイ!キットンまで!」
 パーティメンバーが、なぐさめてんだか笑ってんだか分からない様子で、フォローしている。
 その向こうでは、ドリが、笑いながらサキを諭している。
 サキはしゅんとしながらも、なんだか嬉しそうだ。
 パステルが、そんなサキの背中をどーんとどついて。そのまま二人で笑い合っている。
 ダイニングのにぎやかな笑い声を聞きながら、木の上で、目を閉じる。
 おれは、最高に満足だった。
 
 そーだよ、こんなんが、うちのパーティだからな。
 おれたち、まだまだガキだし。
 今は、こういうほうが似合ってるだろ?
 いつか、いつかもしも、今のおれたちに想像できない未来が待っているのなら・・・
 
そのときは。
 
きっと、おれも。
 
・・・もう少し、大人になる。
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プロフィール

HN:
まいむ
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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