まいむのFQ二次創作
- 著・深沢美潮の「フォーチュンクエスト」シリーズの二次創作を公開しています。 トラップ×パステルOnlyで、全くの健全小説です。
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対決!怪鳥イヤンクック!
病に倒れた、クレイの婚約者サラ。彼女を救うために、パーティ一行はラダヌータへ向かうことに。
そのために、別行動中のキットンとノルを迎えに行ったトラップとシロは、妙な二人組(!?)と出会う!
※要注意 ゲーム、「モンスターハンター」とのクロスオーバー作品です。一応、モンハンを知らない読者様にも分かるように書いているつもりですが、ご理解ください。 あと、僭越ではありますが、作者自身が登場します。そういったものを不快に感じる方は、読まないほうがよろしいかと・・・
あと、モンハンの攻略を探していてここへ来てしまった運の悪い来訪者様。
こちらは、ライトノベル・フォーチュンクエストの二次創作です。スルーしてください。
シルバーリーブの外れにある、日の当たる丘で。おれはぼんやりと空を眺めていた。
バイトも休みだし、家にいても誰もいねぇし。
・・・そうだな、ひまつぶしに、ひとつ面白い話をしてやろうか。
ヨウグス蛾によって、クレイの(元)許婚サラが不治の病にかかったときのことだ。
ドーマにクレイとパステル、ルーミィを置いて、おれはシロに乗って、別行動をしているキットンとノルを迎えに行ったんだが。
そのとき、奇妙なモンスターと、人間とネコという、変なコンビに出会ったのだ。
なんつーか、キツネにつままれたような・・・夢のような出来事だったんで、誰にも言ってない。
おれと、シロの秘密だったんだけどさ。
「おれがシロに乗って、キットンとノルを連れてくる。その間に、調べられることは全部調べて、用意をしててくれ」
サラの病に効く薬草が、ラダヌータというところにあるかもしれないと聞いたおれたち。
いてもたってもいられず、すぐに行動を開始した。
とはいえ、何が起こるかわからない。妻スグリの元にいるキットン、妹メルの村エンチラーダにいるノルを、おれが迎えに行くことにした。
「シロ、大変かもしれねえが、やれるな?」
おれが言うと、シロは黒い目をキラキラさせておれを見上げると、巨大化してしゃがみこんだ。
「がってん承知デシ!」
くぅぅ、なんて頼もしいやつなんだ!おれはシロの太い足を、ポンポンと叩いてやった。
「がってん承知デシ!」
くぅぅ、なんて頼もしいやつなんだ!おれはシロの太い足を、ポンポンと叩いてやった。
「トラップ、シロちゃんのこと・・・!」
パステルが、不安そうな顔でおれに言う。
いくらシロの飛び方がうまくなったとはいえ、まだそれほど慣れてるわけじゃないからな。
ちぇ、少しくらい、おれの心配もしてくれよな。
と思いつつも、おれは片目をつぶって、笑ってやった。
「だいじょうぶ、休み休み行く。無理はさせねえよ。ニ、三日かかるかもしれねえが、できるだけ早く戻る。おい、クレイ!しっかりしろよっ!」
「わかった、すぐに出かけられるよう、こっちも準備をしておく」
おれの呼びかけにちょっと笑ってうなずいたクレイ。
その顔は、真っ青を通り越して真っ白だ。表面上は笑っていても、目が死んでる。
やばいな・・・
「おい、クレイのこと、頼むぜ。長い付き合いだが、あんな状態のやつ、見たことがねえ」
パステルの耳元で小声で言う。
「おまえが頼りだ」
ポンと肩を叩くと、パステルは目を大きく見開いて、両手を握り締めた。
「う、うんっ!」
パステルみたいなのがそばにいりゃ、クレイもひとりで行動しようとか、無茶なことは考えないだろう。
頼りっつーのは、ま、そーいうことだ。
それに・・・あいつには、周りの人間を和ませる何かがあるしな。
シロに乗って下を見ると、パステルとクレイがお互いを支えあうようにして立っている。
微かな寂しさのようなものを覚えたおれは、それを振り切るようにシロに合図をした。
「行くぞ、シロ!」
空は、おれたちの状況を映すかのような、どんよりとした曇り空だ。
その中を、シロの純白の身体がぐんぐんと進んでいく。
ノルのいるエンチラーダよりも、キットンのいるペルメナのほうが遠い。おれたちは、先にキットンを迎えに行くつもりだった。
シロだって、少しでも軽いほうが飛びやすいだろうしな。
ドーマからだと、何回か休憩を取ったとしても、おそらくペルメナまで一日とちょっとで飛べるだろう。
いやしかし・・・休みナシで海の上を飛ばせるのは怖いな。となると、エマーソンの大森林あたりでキャンプか・・・
おれは、手元のシロの毛を、もう一度身体に巻き付けなおした。
空にいると、日が暮れていくのが手に取るように分かる。
柔らかだった日差しが次第に赤みを帯び、最後の力を振りしぼるかのように、圧力を増す。
下界はちょうどエマーソンの大森林を過ぎようかというところだった。
「おい、シロ。今日はこの辺でキャンプするぞ」
おれは、シロの首筋を叩いて叫んだ。
「ボク、まだ飛べるデシよ」
「ばぁか、いいんだよ。もうじきに暗くなる。ここでおれらにまで何かあってみろ、それこそ終わりだからな」
「分かったデシ!じゃあ、トラップあんちゃん、しっかり掴まっててくださいデシよ!」
急降下するシロの背中で、おれは何度もツバを飲み込みながら、耐えた。
うう、何度シロに乗っても、いくらシロが飛ぶのがうまくなっても、この急降下だけは、これだけは・・・!
かんべんしてくれぇ~!
森林の木々の梢が、目前に迫る。
シロは、一旦そこで翼を広げると、着地のために、ホバリングしてスピードを落とした。
そのときだ!
「わぁぁデシ!」
「うわわわわ、シロ、どうした!ぎゃぁぁぁぁ」
シロが叫ぶと、急にグラグラと揺れ、そのまま地面に落っこちた!
大した高さがなかったからよかったものの・・・
なんだ、モンスターか!?
おれは、結んであったシロの毛を手早く外し、背中から飛び降りようとして、気づいた。
シロの翼の付け根のところに、ピンク色のペンキのようなものがこびりついている。
「ごめんなさいデシ。トラップあんちゃん、大丈夫デシか?」
シロがすまなそうにおれを見つめる。
「だいじょうぶだが、おい、なんだ、こりゃ?」
触ってみると、まだ新しい。指先に、ピンク色がついた。
「なんか、投げられたデシ。それで、ビックリして、ボク・・・」
おれとシロが首をひねっていると、すぐそばの茂みから、小さな生き物が駆け出してきた。
「旦那さん、やったニャ!ペイントボール、命中ニャ!」
おれは、甲高い声で叫ぶそのちっこいのを見て、あんぐりと口をあけた。
小さな木槌のようなものを持って、飛び跳ねているそいつは・・・どうみたって、ネコだ。
ぴんと立った耳。ひょこひょこした長いしっぽ。マダラの毛並み。
器用に二本足で立って、猫背気味の体には、木の実で作ったようなアーマーをつけている。
そのネコは、クンクンとペンキのにおいを嗅いでいるシロのほうを見ていたが・・・やがて、ヘルメットを被った頭を抱えて叫んだ。
「ち、ちがうニャ!こいつは、イヤンクックじゃないニャ!見たことないモンスターニャ!」
いやんくっく?なんだそれ?
そうか、こいつが、このペンキみたいなもんを、シロに投げつけたんだな?
「っつーか、おまえこそ何だよ!うちのシロになにすんだ!」
「あわわわ、こんなとこに他のハンターがいたとはニャ!」
おれが怒鳴りつけると、ネコは初めておれの存在に気づいたようで、あわてて四つ足で逃げようとした。
そうはさせるか!
ひょいとしっぽを掴んで宙吊りにすると、やつはバタバタと暴れて叫んだ。
「旦那さーん、旦那さーん、助けてくださいニャー!」
旦那さん?
なんだ、こいつの飼い主が近くにいるのか?
おれが辺りを見回すと、さっきネコが現われた茂みから、小柄な女が出てきた。
「もう、ナタリー!勝手にちょろちょろするなって、いつも言ってるじゃない!まったく、レベルの低いオトモは使えないんだから!」
まさか、女が出てくるとは。しかもこの格好・・・
おれはマジマジとそいつを観察した。
赤いトゲトゲのついたウロコのような素材の、ごついアーマー。背中には身長ほどもある、これまたごつい大剣を背負ってやがる。
こいつ・・・相当なファイターじゃねえのか?
女は、ポニーテールにした長い髪を振って、シロを見上げた。
「なーんだ、イヤンクックじゃなかったのね。ペイントボールひとつ無駄にしちゃったわ。でも見たことないモンスターね、もしかしてレア?なんかの亜種かしら?」
「おいおいおい、好き勝手言ってんじゃねえって!うちのシロに変なもんぶつけといて、謝罪の一言もナシかよ!」
腕組みして訳のわかんねえことをブツブツ言ってる女に、おれは食ってかかった。
「あら、どこのハンターさん? ずいぶん軽装ね。初めての狩りかしら?そんな格好でイヤンクック討伐に出るなんて、たいした度胸ね」
女は首をかしげておれをおれを見る。
だぁぁぁ、言ってる意味がさっぱりわかんねえ!
おれはハンターじゃないし、だからイヤンクックって何だよ!
おれが、通じない会話に頭をかきむしっていると、はるか上のほうからシロが言った。
「トラップあんちゃん、もう小さくなってもいいデシか?」
「お、おう、そうだった。悪かったな、シロ」
この得体の知れない連中の目の前で、シロを小さくしてもいいものか、若干不安ではあったが。
どうせ相手もしゃべるネコ連れてんだ、たいした差はないだろう。
しかし、スルスルと小さくなったシロを見て、女は目を輝かせた。
「あらら!あなたのオトモだったの? うわー、すごい!巨大化なんてオトモスキル、見たことない!どうやって覚えさせたの?」
「オトモってなんだよ!シロは、おれらの仲間だ」
おれがムッとして言い返すと、シロをしげしげと眺めていたネコが、けたたましく騒いだ。
「旦那さん、コイツ、アイルーでもメラルーでもないニャ! こんなヤツ、初めて見たニャ!」
そこで初めて、女はおれとの会話が噛み合ってないことに気づいたらしい。
「それって、どういうこと? ・・・うーん、変わったこともあるものね。いいわ、もう日も暮れるし、キャンプに戻りましょう。ペイントつけちゃったお詫びに、こんがり肉グレートをごちそうするわ」
女が案内したキャンプには、でかい口を開けた赤い宝箱と、青い宝箱が並べて置いてあった。
思わず駆け寄って覗き込んでみたが、どっちも空っぽだ。
「さ、こっちへいらっしゃいよ」
女はテントの中に大剣を下ろすと、おれを手招きする。
なんつーか、うさんくさい連中だが・・・おれは興味に負けて、テントに入った。
中は広々としていて、木でできたベッドまで置いてある。
「適当に座って」
おれが地面にあぐらをかいて座ると、シロがひざの上に乗っかった。
さっきのペンキみたいなのは、時間がたつと消えるらしい。白い毛は、元通りになっている。
「わたしはmaimu。こっちは、オトモアイルーのナタリーよ。オトモアイルーってのは・・・そうね、ペットのような、相棒のようなものかな? 狩りのルールで、一匹だけ連れて歩けるようになってるの」
「おれはトラップ。こいつは、仲間のシロだ。以前クエストで知り合った、ホワイトドラゴンだ」
おれたちは、互いに自己紹介をする。
相変わらず、女・maimuの言ってることは、根本的な部分でよく分からないが。ルールと言ってる以上、何かのギルドに所属して、決められた環境下でクエストをこなしているらしいということは分かった。
「で、つまり、あんたたちはさっき言ってたモンスターを、退治しにきたってことか?」
「そうですニャ、密林の怪鳥、イヤンクックですニャ!」
毛づくろいをしていたナタリーが飛び上がって叫んだ。
「聞いたことないモンスターデシね」
シロが、不思議そうにおれを見上げる。
「知らないの?初心者ハンターには、最初の難関って言われるくらい有名なモンスターなのに。どうやら、わたしたちの間には、何か大きな認識の違いがあるみたいね」
maimuはそう言って、自分の鎧を示した。
「これ、イヤンクックの甲殻でできてるのよ。わたしたちハンターは、モンスターを狩ったり、素材を集めたりして、武器や防具を作るの。村のオババや、ハンターが集う集会所で、クエストを受注して、狩りに出かけるの」
ふーん、道理で、見たことない鎧だと思ったぜ。
「おれらは、よっぽどのことがなけりゃ、武器防具は店で買うな。中には竹でアーマーを作っちまう、酔狂なファイターもいるけどよ」
「竹!? やだ、そんなんでアーマーが作れるの!?」
maimuは、おれの言葉に噴き出した。どうやら、竹という植物は共通のものらしい。
・・・感謝するぜ、クレイ。
「で、話を元に戻すわよ。わたしは、どうしてもイヤンクックの耳が欲しいの」
耳? 鳥に耳ってあるもんなのか?
おれは疑問に思ったが、いちいち口をはさんでいてはちっとも話が進まないので黙って聞いていた。
「耳がないとね、ほら・・・こういう、グリーブが作れないのよ。全身クックシリーズで揃えたいのに!」
maimuは、足を投げ出しておれに見せた。
確かに、赤いごつい素材で作られたアーマーやグローブとは違って、足につけられた装備は普通の金属だ。
・・・しかしこれのどこに耳をつけるんだ?
思わず、ブーツに人間の耳がついてるところを想像したおれは、その気味の悪さにブルッと身震いをした。
「はぁぁ・・・わかった。わかったっつーか、わかんねーけど」
「そんなわけなのよ、ごめんねー。あのペイントボール、イヤンクックに目印をつけようと思ってたんだけど、うっかりシロちゃんにつけちゃって」
maimuはおれの膝の上のシロに手を伸ばそうとして、ハッと止めた。
シロを見ると、ヤツはすっかり寝入っていた。
そうだな、変な連中に出会ってすっかり忘れてたけど。今おれたちはそれどころじゃなくて、シロはずっと飛びっぱなしだったんだ。
倒れたサラ・・・置いてきた連中も、どうしてるかな。
黙りこんだおれに、maimuはにっこり笑って言った。
「せっかくだから泊まっていきなさいよ。そうそう、忘れてた。これ、こんがり肉グレート。うちのキッチンアイルー・・・まぁ、家付きのコックみたいなもんね。そいつらが焼いてくれたのよ。スタミナ回復するわよ!」
maimuが差し出したのは、その名の通りこんがりと焼けた、うまそうな骨付き肉だった。
おれはそのこんがり肉グレートをごちそうになると、maimuのテントの隅っこで、毛布にくるまって寝た。
・・・ヘンな気は起きなかったのかって?
いや、まぁ、起きなかったことはねーけど・・・あんなごつい鎧着たまま寝るような女に手が出せるか!
しかも、枕元には物凄い大剣・・・ぶるる、おっかねーっつーの。
サラのこと、置いてきたクレイとパステルのこと・・・そしてすぐそばで寝ている女とネコのこと。いろいろ考えることが多すぎて、さすがのおれもすぐには寝付けなかった。
ちぇ、そこそこいい女なんだけどなー。もうちっと、なんつーか、女らしい格好しててくれりゃあいいのによ。いやいや、あんな大剣使うくらいだったら、筋肉ムキムキか?それはちょっと勘弁だな。
・・・そんな夜中のことだ。
遠くで鳥のような、カエルのような、奇妙な鳴き声がしたかと思うと、maimuとナタリーが飛び起きた!
「出たわ!イヤンクックよ! 行くわよナタリー!」
「はいですニャ!」
二人はそのまま武器を担ぐと、真っ暗な森の中へ駆け出していく。
おれはその様子を呆然と見送ったのだが・・・
やっぱ、気になるよな。どんなモンスターなのか、あの女がどうやってあの大剣で戦うのか。
「maimuおねーしゃんたち、戦いに行ったんデシか?」
この騒ぎに、シロも起きて、目をパチクリさせている。
「そうらしい。おいシロ、ちょっくら行って、そのイヤンクックとやらを拝んでくるか!」
「はいデシ!お手伝いするデシ!」
おれたちは、maimuたちを追って、夜の森へと飛び出した。
幸い、満月だ。
ポタカンも持たずに飛び出してきたが、何とか見えないこともない。
茂みをかき分けて進んでいく。
グゴゴゴゴ・・・グエッコ、グエッコ!!
どうやら、これがイヤンクックの鳴き声らしい。その声と共に、ガツン、ガツンと戦いの音が聞こえてくる。
おいおい、まさか・・・ほんとに、あの大剣を使いこなしてるってのか!?
「あんちゃん、すぐそこデシ!」
一緒に走っていたシロが、おれを振り返って叫ぶ。
い、いた!
そこは、少し開けた草むらになっていた。
そこにいたのは、maimuの鎧と同じ色をした、でかいモンスター。月明かりに照らされて、赤いウロコが鈍く光っている。
げ、まじかよ・・・
でかい図体を二本の足で支えている立ち姿は確かに鳥だが・・・鳥と言うにはあまりにもゴツイ。羽ではなく、薄い膜の張ったような翼。ドラゴンのようなしっぽ。顔の半分ほどもあるでかいクチバシの隙間からは、めらめらと炎がもれている。
「あらー、なぁに、手伝いに来てくれたの?」
わわわ、なにやってんだ、あいつ!
maimuの声がイヤンクックの足元から聞こえて、おれは仰天した。
暗闇で、わからなかったが。なんとあの女、モンスターの足元で大剣を振り回してる!
そのたびに、ガツン、ガツン、といった激しい音が響いている。
「おめー、たいしたもんだな」
おれが感心して言うと、maimuは手を止めずに言った。
「やぁね、イヤンクックなんてたいしたことないわよ。わたしだってまだ全然初心者だけど?」
これで初心者かよ!
こいつら、一体どんな世界の住人だよ!
現実主義者のおれも、さすがに自分が夢でも見てるのではないかと疑い始めた。
あのバジリスクを一瞬で倒したジュン・ケイだって、レベル20だぞ!?
「にいさん、ぼけっとしてないで手伝うニャ!」
そこは、少し開けた草むらになっていた。
そこにいたのは、maimuの鎧と同じ色をした、でかいモンスター。月明かりに照らされて、赤いウロコが鈍く光っている。
げ、まじかよ・・・
でかい図体を二本の足で支えている立ち姿は確かに鳥だが・・・鳥と言うにはあまりにもゴツイ。羽ではなく、薄い膜の張ったような翼。ドラゴンのようなしっぽ。顔の半分ほどもあるでかいクチバシの隙間からは、めらめらと炎がもれている。
「あらー、なぁに、手伝いに来てくれたの?」
わわわ、なにやってんだ、あいつ!
maimuの声がイヤンクックの足元から聞こえて、おれは仰天した。
暗闇で、わからなかったが。なんとあの女、モンスターの足元で大剣を振り回してる!
そのたびに、ガツン、ガツン、といった激しい音が響いている。
「おめー、たいしたもんだな」
おれが感心して言うと、maimuは手を止めずに言った。
「やぁね、イヤンクックなんてたいしたことないわよ。わたしだってまだ全然初心者だけど?」
これで初心者かよ!
こいつら、一体どんな世界の住人だよ!
現実主義者のおれも、さすがに自分が夢でも見てるのではないかと疑い始めた。
あのバジリスクを一瞬で倒したジュン・ケイだって、レベル20だぞ!?
「にいさん、ぼけっとしてないで手伝うニャ!」
おれがあんぐり口を開けてmaimuの戦いぶりに見入っていると、ナタリーに怒鳴られた。
さすがにムッとして見ると、ナタリーは勇敢にもイヤンクックの真正面から、懸命に飛び跳ねて頭を狙っている。
おおお、こいつもすげーな。
おれは負けじとパチンコを取り出した。それを見てmaimuが喜ぶ。
「ナイス!いいわね、それ! それで頭を狙ってちょうだい!」
そういや、耳が欲しいとか言ってたっけ。
あれか?
あれか?
よく見ると、頭のまわりにシャンプーハットのようなトサカがくっついている。なるほど。
「よっしゃ、任せとけ!」
おれは足元から適当な小石を拾い、やつの頭を狙って次々と放った。
やつはあんまりオツムがよくないらしい。目の前で牽制するように飛び回るシロと、木槌で小突きまわるナタリーに気をとられて、茂みからパチンコを打つおれや、足元にいるmaimuには全く構いもしない。
お、トサカがぼろぼろになってきたぞ。
と思いきや。イヤンクックが大きくしっぽを振り回した!
「あ、危ねえ!」
足元にいたmaimuにしっぽが直撃する!
maimuは衝撃でふっとぶと、おれの潜んでいた茂みの近くまで転がってきた。
「おい、大丈夫か?」
おれが飛び出して行って聞くと、やつは案外平気そうな顔で立ち上がる。大剣を背負いなおし、腰のポーチから薬の入ったビンを取り出した。
「ふう、油断した。たいしたことないわ。でもまぁ一応、応急薬飲んどくか」
へぇ、ポーションみたいなもんか。普段キットンが、高すぎて手が出ないってぼやいてるやつだ。飲むと、軽度の傷ならすぐにふさがるらしい。
maimuはその緑色の液体を飲み干すと、両手でガッツポーズした。どこからともなく、シャキーン!と奇妙な音がする。
「おいおい、ガッツポーズなんかしてる場合か!」
グエェェェェ!グエェェェェ!
その背後で、イヤンクックが、不気味な鳴き声をあげると、首を振って火の玉を吐き出した!
その背後で、イヤンクックが、不気味な鳴き声をあげると、首を振って火の玉を吐き出した!
おれとmaimuは慌てて避ける。
「しょうがないでしょ!そういう風にできちゃってるんだもの!わたしだってノンキにガッツポーズなんかしたくないわよ!」
「旦那さん、ヤツが逃げるニャ!」
ナタリーが、大きく羽ばたこうとしているイヤンクックを指して叫んだ。
「まずい!ナタリー、音爆弾は?」
「さっき、メラルーに盗まれましたニャ!」
「なぁんですって!?閃光玉は!?」
「旦那さんがいらないって言いましたニャ!」
「旦那さんがいらないって言いましたニャ!」
「・・・!」
絶句するmaimu。
せんこうだまって、あれか?つまり、光るのか?
「よっしゃ、シロ、まぶしいのだ!」
「がってん承知デシ!」
ボォォォォ!!
おおお、効いてる効いてる!
おれが目を開けると、イヤンクックはクラクラと頭を振りながら目を回している。
「サンキュー!恩に着る!」
maimuはすぐに駆け出すと、とどめとばかりにやつの体に大剣を叩き付けた!
イヤンクックは大きくよろめくと、断末魔の絶叫をあげて、地面に倒れた。
「おおお、やったじゃん!すげぇ~!」
すると、おれの頭のなかに、「目標を達成しました」というセリフがぱっと浮かんで、すぐ消えた。
・・・なんだこりゃ。
頭をぱっぱっと振ると、次は「あと1分で村に戻ります」というセリフが浮かんで、また消えた。
おれが首をかしげていると、シロも同じように不思議そうな顔でおれを見上げる。
「今、トラップあんちゃん、何か言ったデシか?」
「いいや。・・・やっぱりよくわかんねぇな」
maimuは喜びもせず、腰からダガーを引き抜くと、倒れたイヤンクックの巨体によじ登り、ザクザクとウロコを剥ぎ取っている。
「やったぁぁぁぁぁ!」
おれは、膜のようなものをかざして喜んでいるmaimuを見上げて聞いた。
「おーい、ねえちゃん。お目当てのモンは手に入ったのか?」
maimuはモンスターの死骸から飛び降りると、手に持っていたものをおれに見せた。
「そうそう、これがイヤンクックの耳ね。いやー、苦労したわ。ちーっとも手に入らなかったのよぉ」
げげ、こいつモンスターから剥ぎ取ったばかりの耳に頬ずりしてやがる。
「よかったデシね」
「よかったニャ」
シロとナタリーも、肩を叩きあって喜んでいる。
「トラップ、あんたのおかげよ!ほんと、ありがとう!」
そう言うと、maimuはおれに抱きついた。
う、嬉しくなくはないんだけどよ・・・
「ちょ、ちょっと待てって!それ、痛いっつうの!」
「あらら、ごめん」
ごつごつのアーマーに抱きしめられても、気持ちよくもなんともねえって。
ちぇ、これでこいつがもっと女らしい格好・・・(以下自主規制により省略)
「ま、とにかく感謝してるわ。わたしが、今どうして別世界のここにいるのかは分からないけど・・・また会えたらいいわね」
「ああ、そうだな。なかなか面白かったぜ」
おれがうなずいたとき、頭の中にボン、と赤いハンコが押された・・・気がした。
『Quest Clear』・・・クエストクリアってか?
「さよならの時間ですニャ!」
お、およよ?
叫んだナタリーの姿が、フッとかき消えた。
叫んだナタリーの姿が、フッとかき消えた。
おれが目をこすっていると、maimuがおれをぐいと引っ張った。
「じゃーね!」
・・☆△☆♪☆・・・・!?
たちまち、maimuの姿も消える。
な、なんだったんだ、あいつらは・・・
ふと見ると、倒したはずのイヤンクックも消えていた。
「おい、シロ、夢じゃないよな・・・?」
「夢じゃないデシよ。今、おねーしゃん、トラップあんちゃんのほっぺたにキスしたデシ」
いやいやいや、そのことじゃなくて!!
思わずおれは、その感触の残る顔を押さえて、シロを小突いた。
キットンのいるペルメナはもうすぐだ。
眼下には、陽射しにキラキラと輝く青い海が広がっている。
結局、あの出来事が、夢だったのか現実だったのか、おれには分からない。
パチンコで打ったときの手ごたえは、確かにあったんだが・・・幻だったのか?
しかし、ナタリーの毛並みの手触りも、maimuの鎧の感触も、その・・・いや、間違いない。本物だったよな。
「トラップあんちゃん、ペルメナが見えたデシよ!」
「おおー、さすがシロ!ご苦労!」
さすがに村に直接下りるわけには行かないからな。おれは、少し離れた丘のふもとに、シロを誘導する。
さっそく着陸モードに入ろうとするシロに、おれは慌てて言った。
「おいシロ、さっきのことはパーティのやつらには黙っといてくれよ」
「maimuおねーしゃんのキスのことデシか?」
「そう・・・じゃなくて、イヤンクックのことだよ」
「どうしてデシか?みんな面白がると思うデシよ」
シロは羽ばたきながら首をかしげる。
う、まあ、ずいぶん珍しい体験だったし・・・話のタネにはもってこいなんだが・・・
前、キム・ジンガーに別れ際にキスされたときのことを、ずーいぶんと根に持ってるやつがいたからなぁ・・・
余計な詮索されんのも、墓穴掘りそうでヤだし。
「ほら、二人そろって夢でも見たのかとか、笑われると面倒くせぇし・・・あ、あれだ! シロ、男同士の秘密だ!」
「そうデシか、がってん承知デシ! ボクとあんちゃんの、男同士の秘密デシね!」
ふっ・・・まだまだシロも子どもだな。
「じゃぁ、降りるデシよ!」
「うわ、ちょい待て、まだ心の準備が・・・ぎゃぁぁぁぁぁ!」
おれは、ホッとする間もなく、シロの急降下に絶叫をあげるのだった。
あれから、maimuとナタリーがこの世界にやってきたかどうかは知らない。
もしかしたら、どこかの森の奥で、またモンスターを狩ってたりするかもな。
モンスターを狩って、その鱗から鎧や武器を作る、か・・・
それはそれで、面白い世界かもしれねぇな。
というわけで、ひまつぶしの話は終わりだ。
さて、もう一眠り、すっかな。
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60000Hit,Thanks!!
ただいまキリリク停止中
はじめに
プロフィール
HN:
まいむ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。
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