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まいむのFQ二次創作

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悩殺ビキニで海水浴!?~15000キリリク~

リタに頼まれて、ルタを連れて海水浴に行くことになったパーティ。
パステルは、リタに水着を借りることになったが・・・
その水着が、思わぬ事件を引き起こすことに!!

暑い!
こうも暑くちゃ、頭の中まで茹だっちゃいそう。
何をするにも、おっくうだし。
はぁぁ・・・ちょっと休憩しよっかな。
 
わたしが原稿を一休みして、キッチンに水を飲みに行くと。
今日の食事当番のクレイが、げっそりした顔でキッチンの隅のイスに座っていた。
「今日も暑いわねー」
話しかけると、クレイはぱたぱたと手で自分を仰ぎながら、水を飲むわたしを見上げる。
「パステル、今日は猪鹿亭にしようぜ。こんなに暑くちゃ、夕飯の支度もしんどいし」
「ええー? もー、クレイったら。自分が当番だからって、そういうこと言わないの!」
まるでトラップみたい!
クレイがそんなズルみたいなこと言うなんて、珍しい。
わたしが口をとがらせると、クレイは苦笑いした。
「はは、ばれたか。いいじゃないか、たまには。せっかく、サイフに余裕もあることだし・・・」
そうそう、そうなのよ!
こないだ行ったクエストで、ちょっと珍しい鉱石を手に入れることができて。
シルバーリーブの鍛冶屋さんに、けっこういい値で買ってもらえたんだ。
もちろん、リッチってほどではないけど・・・猪鹿亭でごはんを食べるくらいは、余裕である。
わたしは、素早く頭の中でお財布の中身を改めた。
ははは、こういうときは、ちゃんと頭が働くんだよね!
「うーん・・・ま、そだね。わたしも、何かガツンとスタミナのあるもの食べたいし!」
ここんところ暑くて、あまり食欲もなかったからね。
スパイスのいっぱい入った、食欲の湧くようなものが食べたいな。
「よし、決まりだ! 今夜は猪鹿亭!」
クレイが、ガッツポーズをして立ち上がった。
「じゃ、わたし、みんな呼んでくるわ!」
 
 
こういうときに、シチュエーションも大事なんだなって思う。
さっきまで、あんなに暑くてぐったりしてたのに。
猪鹿亭に入る前から、いいニオイは店の外にまで漂ってたんだけど・・・
煙と、喧騒と、いいニオイの立ちこめる店内に入ったら、もうおなかが鳴ってしまいそう!
わたしはたちまち元気になってしまった。
「あら、いらっしゃい!」
ビールを運んでいたリタが、わたしたちに気づいて声をかけてくれる。
いつもの一番奥の大テーブルに陣取ったわたしたちは、メニューを開いてみんなで覗き込んだ。
「なんにすうんら?」
「そうねー、まず・・・」
「おれ、ビール!」
「あ、おれもおれも!」
「わたしも、まずは一杯」
「おれも」
わたしが、男連中をジトッとした目で見ると、やつらはそれぞれに視線をそらした。
もう、こないだお酒でヒドイ目にあったくせに・・・
まったく、ちっとも懲りてないんだから!
リタの弟のルタが、すぐに連中のビールを持ってきてくれた。
「じゃ、適当に頼んじゃうわよ」
言いながら、目に付いたものを片っ端から頼んでいく。
ミケドリアのスパイス焼きと、ニグルのカルパッチョ、さっぱりコンダイのサラダに、夏野菜たっぷりのパスタ・・・
どれもこれも、おいしそう!
「んじゃま、とりあえずカンパイ!」
ビールと、ジュースでカンパイして・・・
いつものように、わたしたちが賑やかに食事をしていると。
リタがやってきた。
「ん? どうしたの、リタ」
仕事中に、こうしてリタが話をしにくるのは珍しい。彼女は、ちょっとうなずいて、イスを引いた。
「あのね、パステルたちに頼みたいことがあるのよ」
「頼みたいこと?」
「そ、ルタのことなんだけどさ」
「ルタが、どうかしたのか?」
「今、ルタ夏休みなのよ。で、夏休みの思い出の絵を描けっていう宿題が出たんだけど・・・」
ああ、あるある!
わたしも、昔描いたっけ。そのときは、おとうさんとおかあさんと、花火に行ったときの絵を描いたんだよね。
わたしがそのときのことを思い出しながらうなずくと、リタは話を続けた。
「ほら、わたしや父さんは店があるから、どうしてもどこかに連れてってあげるってことができないのね。だから、パステルたちに、ルタを海にでも連れてってやって欲しいんだ」
「げっ、子守しろって? おれたち冒険者に??」
トラップが、思い切りのけぞって叫ぶと、ビアジョッキをドン!と置いた。
「トラップ!」
「うん、まぁ・・・悪いとは思うわよ」
リタがちょっと肩をすくめて言うと、トラップはニヤリと笑って手をひらひらさせた。
「へへっ、じゃ、やっぱお駄賃くれるわけ?」
「トラーップ!」
「お前、普段からこんなに世話になっといて、なんてこと言うんだ」
もうぅ! わたしとクレイが睨みつけても、悪びれる様子もなくミケドリアをほおばっている。
そんなわたしたちを見て、リタが笑った。
「いやぁね、もちろん出すわよ。っていっても・・・ウチで1週間タダメシっていうのでもいい?」
「そんなぁ! リタ、気にしなくてもいいのよ!・・・きゃっ、いたたた!」
慌てて言うわたしをぐいっと押さえつけたのは、トラップだ。
「ビールもつける?」
「つける!」
ビッと親指を立てたリタに、トラップは同じポーズで返した。。
「よっしゃ、のったぁ!」
 
 
海かぁ・・・クエストでは何回か行ったけど。
泳ぎに行くってなると、実は初めてなんだよね。
っていうか、わたし、水着持ってないんですけど!!
 
パーティのみんなに聞くと。
みんなは、へらっと笑って、顔を見合わせた。
「ああ、水着? いや、それがさ・・・」
「こないだ、シルバーリーブのバザーで、買っちゃったんですよねぇ」
「えええ? なんのためによ?」
「ほら、いつか使う機会もあるかもしれないし。安かったからさー。パステルには黙っとこうかと思ってたんだけどな、いやいやよかったな!」
ノンキに笑うクレイ。
な、なんてこと・・・ちょっとお金に余裕があると、すぐこれだ!
「ノルのサイズもあったんですよ! これはもう、買うしかないって思いまして」
「うん、ぴったりだった」
それはそれは・・・結果オーライと言うべきか・・・
でも、わたしとルーミィの分はなんとかしなきゃ。
「ああ、水着? そんなの、わたしが貸してあげるわよ。ルーミィちゃんの分も、わたしの子どもの時のが取ってあったと思うし。持っていくわ」
とりあえずリタに相談すると、彼女は事もなげにうなずいたのだったが・・・
 
そして、海に行く当日。
彼女が持ってきてくれた水着を見て、わたしは仰天した。
サーモンピンクのチェックで、胸元にフリルがついてて・・・とっても可愛いんだけど。
「あ、あなた・・・これ、ビキニじゃない!」
わたしの驚きを、リタはきょとんとした顔で受け止める。
「何言ってんのよ、女だもの、これくらい着なくてどーすんのよ」
ううう・・・うそー!
水着って、他にもあるじゃない!
ちゃんとおなかも隠れるタイプとか、スカートつきのをブティックで売ってるのを見たこともあるんですけど。
・・・どうしよう、マリーナに借りようかなぁ・・・
ふと思ったけど、わざわざリタの水着を断ってエベリンまで行くのもなんだし。
しかも、マリーナに頼んだら、もっとスゴイ水着が出てきそうだしなぁ。
「はい、ルーミィちゃんは、これね」
「わーい! これが、みじゅぎかぁ?」
ルーミィにあてがわれたのは、水色に白いドットが散りばめられた、これまた可愛らしいビキニだった。
リタ・・・あなた、こんなちっちゃい頃からビキニ着てたのね・・・
「見たところ、サイズは大丈夫だと思うけど・・・ちょっと着てみなさいよ」
「う、うん・・・」
「わたし、ちょっと廊下に出てるから」
リタは、わたしに水着を押し付けると、くるっと部屋を出て行こうとした。
ふいに、ドアのところで立ち止まる。
「あ、ちゃんとカーテンも閉めて着替えるのよ」
 
 
ストーンリバーの近くに、オーライアという村があって。
そこは、海水浴場で有名らしい。
わたしたちは、ヒポちゃんに乗って、そのオーライアにやってきた。
「外洋では、波が大きくて海水浴には向きませんからね。このオーライアのように、内海になっていないと、泳げないんですよ」
地図を広げて、キットンがうんちくを垂れる。
見ると、確かに。オーライアは、ストーンリバーをぐるっと囲む半島の、内側に位置していた。
「ねえ、ルタ。ルタは海水浴って初めて?」
「うん。学校の水泳の授業で・・・池でしか泳いだことない」
「そっかぁ、わたしも海で泳ぐのは初めてなんだよ! 楽しみだね!」
わたしが笑いかけると、恐縮していたルタも、やっとにっこり笑ってくれた。
超元気印の看板娘・リタと違って、弟のルタはちょっと大人しい感じ。
わいわいがやがやといつもどおりにうるさいパーティの中で小さくなっていたから、心配してたんだけどね。
よかったよかった。
リタが、お弁当やパラソルも用意してくれたし。ノルは、ルーミィが遊べるように、小さなヨットを作ってくれた。
うーん、海水浴!
今日は天気もいいし、楽しみだぞぉー!
 
「うわぁ、きれいな砂浜! ルタ、ルーミィ、おいで!」
「すごい、さらさらだ!」
「きれぇー!」
「わんデシ!」
みんなで、真っ白な砂浜を走り回る。
日に焼けた砂が、足の裏に熱いけど・・・でもそれも気持ちいい!!
「よっしゃぁー、泳ぐぞぉぉ!」
「これは、日焼けしそうだな!」
トラップとクレイは、もうTシャツを脱いで水着姿になっている。
ふたりのハダカなんて、見慣れてるといえば見慣れてるんだけど・・・
こうやって太陽の下で見ると、なんだか眩しい。
わたしが、目を細めてふたりを見ていると、準備体操をしていたトラップが、イジワルそうにわたしを振り返って言った。
「なぁに、じろじろ見てんだよ!」
「・・・っ、べ、別にっ」
「ほれほれ、おめぇもとっとと脱げよ! リタに借りたんだろ? 悩殺ビキニ!」
「の、のうさつぅぅぅ!?」
わたしは思わず自分の体を抱きしめた。
海辺で着替えするのも面倒だからって、Tシャツの中に水着着てきたんだけど・・・
そんなこと言われたら、恥ずかしくて脱げないじゃない!
「ぱーるぅ、はやくうみいきたいお!」
「あ、ああ・・・はいはい」
とりあえず、ルーミィの着ていたTシャツを脱がせてあげる。
「おおっ、チビすけもビキニか?」
「そうだお、びきにだお!」
えっへんと胸(おなか?)を張るルーミィ。
ふわふわのシルバーブロンドを、邪魔にならないように、頭の上のほうで二つに分けて、お団子にしてある。
わたしも、頭のてっぺんでお団子にしてあるから・・・頭が重いというか、ちょっと違和感なんだよね。
「ルーミィちゃん、シロちゃん、行こ!」
「うん!」
「わんデシ!」
ルタに声をかけられて、ルーミィとシロちゃんは駆け出していってしまった。
「ああっ、待って!」
うう・・・Tシャツのまま海に入ったら、帰りの着替えがなくなっちゃうし・・・
かといって、あの三人を放置するのも危ないし・・・
わたしは、ちらっとトラップを見て言った。
「・・・トラップ、あっち、向いてなさいよ」
「なんだよー、もったいぶるようなナイスバディでも・・・う、うぐぐ、ずみまぜん」
わたしが首を締めてやると、トラップはしぶしぶ向こうを向いた。
うん、Tシャツ着てても暑いだけだし。
ここは、思い切って!
わたしは、えいやっとTシャツを脱いだ。
海風と陽射しが、肌に直にあたって、気持ちいい!
「ほほぉ~」
「へえ、パステル、かわいいじゃん」
「や、やだなぁ~! あんまり見ないでよ!」
キットンとクレイがじろじろとわたしを見る。
パラソルを立てていたノルも、その手を止めてわたしに笑いかけた。
「うん、パステルに、似合ってる」
「そ、そお・・・?」
まあね、スタイルはともかく、ピンクとかフリルとか、わたしのイメージにはぴったりかな・・・なんて、自画自賛! たっははは・・・
みんなが褒めてくれるから、悪い気はしない。
憎まれ口を叩いていたトラップも、茶々を入れることなく黙り込んでいる。
「どうよ、トラップ?」
わたしが、わざとトラップに胸を張ってみせると。
彼は妙に慌てて、わたしから目をそらした。
「・・・へ、へぇぇ、いいんじゃねぇの? その・・・水着のおかげってやつ?」
「あ、またそんなことを!」
わたしが一発小突いてやろうと手を振り上げると、トラップはニヤリと笑って、ひらりと身をかわした。
「さーて、泳ごうぜぇ!!」
 
ノルの作ってくれたヨットにルタとルーミィを乗せて、海に浮かべる。
なんでルタは泳がないのかって?
それが・・・かわいそうなことに、ルタはものすごく陽射しに弱かったみたいなのね。
もちろん、普段は全然そんなことないみたいなんだけど・・・
海辺のキツイ陽射しで、あっという間に真っ赤になってしまったのだ。
キットンが言うには、海水との相乗効果かもしれない、とのこと。
かわいそう!
今は、キットンにもらった薬を体中に塗って、頭からタオルをかぶってヨットに揺られている。
「ルタ、大丈夫?」
わたしが水の中から、ヨットのルタを見上げると、彼はにっこりと笑って言った。
「大丈夫! 泳げないのは残念だけど・・・こうしてるだけでも、楽しいよ!」
うう・・・なんてケナゲなの!?
ルタの言葉に、わたしは感動してしまった。
妹みたいなルーミィや、シロちゃんも可愛いけど、弟っていうのも悪くないなぁ。
リタがあんなに邪険にする気持ちがわかんない!
彼女も可愛がってはいるんだけど、よく「ウチのルタは・・・まったく」ってぼやいてるのよね。
ノルは、そんなルタのために、時折ヨットを揺らしてあげている。
「きゃー、おちるおう!」
「つかまれー!」
そのたびに、はしゃいだ声をあげるルーミィとルタ。
わたしが、そんな二人を見て、ノルと笑い合っていると。
「なにチンタラ遊んでんだよ!」
「きゃっ!」
いつの間にか近づいてきたトラップに、海水をかけられた!
「もー、なにすんのよ!」
「パステル、あそこに島が見えるだろ? あそこまで泳いでいってみようぜ!」
「えええ? あんな遠くまで?」
クレイが指したのは、少し離れたところに浮かぶ、まんまるい島。
無人島かな?
小さな砂浜と、こんもりとした茂み、岩場くらいしか見えない小さな島。
「なんだよおめぇ、自信ないのか?」
「うーん、ないことはないけど・・・ちょっと怖いなぁ」
わたしが悩んでいると、クレイは優しく笑って言った。
「大丈夫だよ、おれもトラップも泳ぎには自信あるし」
「そそ、途中で力尽きたら、引っ張ってってやるって」
トラップも珍しく、優しいことを言ってくれる。
「じゃあ・・・行ってみようかな。ノル、ルーミィたちのこと、お願いしてもいい?」
振り返ってノルに言うと、彼はにっこりと笑って手を振ってくれた。
 
内海だから波も低くて、あまり泳ぐのが得意ではないわたしでも、全然平気。
水が、とっても気持ちいい!
わたしは平泳ぎで、クレイとトラップについて泳いでたんだけど。
しかし、しばらく泳いだ頃・・・
わたしの足に、何かが絡みついた!
「え? うそっ」
足が動かない!
誰かに、掴まれてるみたい!
「ク、クレイ! トラップー!!」
何かに引っ張られながら、わたしは必死でもがいた。
少し先を泳いでいたふたりがそれに気づいて、慌てて戻ってくる。
海水が、口や目に入って・・・うぐぐ、苦しい!
どうしよう、このまま溺れちゃうの!?
海の底へ引きずられながら、上を見ると・・・
キラキラと輝く水面に、トラップの顔が見えた。
トラップに向けて、もがきながら手を伸ばす。
「パステル!」
でも、トラップが伸ばした手は、ほんの一瞬の差で、間に合わなくて。
わたしは、その手に掴まることなく、意識を失ってしまった・・・
 
ゆらゆら、ゆらゆら・・・と心地いい揺れ。
眩しい陽射しが、まぶたから透けている。
あれ? わたし、さっき、溺れて・・・
はっとして目を開けると、ルーミィ、ルタ、シロちゃん・・・そしてノルとキットンが海の中からヨットに手をかけて、わたしを見守っていた。
「ぱーるぅ!」
「大丈夫ですか?」
わたしは、まだちょっと海水で沁みる目を、こすってうなずいた。
「う、うん・・・」
「よかったですね、水を飲む前にトラップが引き上げてくれたんですよ」
キットンが、水筒を渡してくれる。
それに口をつけながら、わたしは意識を失う直前のことを思い出した。
「わたし、海の中で何かに引っ張られて・・・!」
「はい、そうみたいですね。トラップが言うには、人魚だったそうですよ」
こともなげに言うキットン。
「に・・・人魚?」
人魚って、童話とかに出てくる、あの下半身が魚の、人魚!?
わたし、その人魚に襲われたっていうの!?
「そうですそうです。で、その人魚は・・・そのですね、パステルの・・・を奪って・・・」
急にゴニョゴニョしてしまったキットン。
あらら? キットンが言いよどむなんて、珍しい。
「え? 何?」
「あ、パステル・・・」
体を起こして、キットンに耳を近づけようとしたわたしを、ノルが押しとどめたんだけど・・・
そのわたしの胸元から、何かがはらりと落ちた。
「・・・・・・!!??」
反射的に、それを押さえる。
・・・タオル!? 
って、そういえば、水着は!?
あわあわと口だけ動かして、みんなの顔を見ると。
ルーミィが、神妙な顔をして教えてくれた。
「ぱぁーるのみじゅぎね、にんぎょさんがとっていっちゃったんらって」
ええええー!!
それでこのタオルが・・・
はっとしてルタを見ると、彼が被っていたはずのタオルがない。赤くなってしまった体を、そのままさらしている。
「ルタ! だめよ、タオル・・・」
わたしが慌てて言うと、ルタはぶんぶんと首を振った。
「いいんだよ! だって、パステルをそのままにしとくわけにはいかないでしょ!」
う、そりゃそうだけど・・・なんて、なんて、かわいいの!!
こんな小さいのに、紳士的なこと!
わたしは思わずルタを抱きしめた。
「パ、パステル・・・! タオル、タオル」
赤面して慌てるルタ。
あ、そうだったっけ。
わたしは、背中に手を回して、落っこちないようにタオルをぎゅっと結んだ。
「ま、とりあえずルタのこともありますし・・・我々は浜辺に戻っていましょう」
「クレイとトラップは?」
「人魚を追いかけて、あの島まで行きましたよ。水着、取り返さないといけませんしね」
 
 
 
 
「ここ・・・人魚の島だったのか・・・」
砂浜に上がったクレイが、濡れた髪からしずくをしたたらせながら、あたりを見回す。
「ったく、めんどくせーことになっちまったな。どこいったんだよ、あのヒトザカナ!」
おれは、プルプルッと頭を振って水滴を飛ばすと、悪態をついた。
水の中で見たその姿。
オレンジ色の髪をなびかせて、魚の下半身をくねらせて、パステルの水着を奪っていった・・・それは、間違いなく人魚だった。
ボッシュとかいう半魚人とは違う。
ちらっと見えた横顔も、普通の女の顔だったしな。
「さすがに、あの体じゃ砂浜には上がれないだろう。岩場を探してみるか」
誰もいない島は、静まり返って、波の音しか聞こえない。
波の砕ける岩場に、おれたちが足を踏み入れたとたん・・・
「ねーねー、お兄ちゃんたちー! 見て見て!」
ノーテンキな高い声で呼び止められた。
なんでこんなとこにガキがいるんだ?と思って見ると。
水しぶきのかかる岩に腰を下ろして、おれたちに手を振っているのは・・・なんとくだんの人魚だったのだ。
「・・・まさか、そっちから出てきてくれるとはな」
「・・・子供か?」
呆れてぼやくおれたちにおかまいなしに、人魚は胸に手をあてて言う。
「あのねあのね、さっき、手に入れたのよ! どうかな、似合うかな?」
そう言われて、よくよく見ると。
パステルよりもぺったんこのコドモ体型のその胸には・・・さっきまで、パステルが身につけていたピンク色の水着がちゃっかり着けられていた。
・・・ブカブカなところを見ると、パステルもあれでも、それなりの体型ではあるらしい。
「手に入れたって・・・奪ったんじゃねぇか」
「・・・拾ったって言わなかっただけ、マシかもな」
がっくりと肩を落とすおれとクレイ。
その様子を見て、人魚がふくれっつらになった。
「なによぉ、リナがコドモだから、似合わないって言うの?」
「いや、そんなことはないよ。とても似合ってる」
フェミニストクレイが、苦笑しながらも、なだめるような口調で話しかけた。
「ほんとー?」
人魚は、バンザイをして喜ぶ・・・なんだ、ほんとにガキだな、コイツ。
何年かしたら美人になるだろうっつう、まぁ期待できそうな顔ではあるが。
おれがそんなことを考えている間に、クレイは人魚のほうに歩み寄っていた。
「うん、でもね。それは、おれたちの仲間の女の子のものなんだ。その子は、水着がなくなってしまって、とても困ってるんだよ」
すると、人魚はツンとあごをそびやかして、ふくれた。
「そんなこと知らないもん。あたしだって、かわいい水着つけたいもん」
「おめえなぁ、なんで人魚が水着つけなきゃなんねーんだよ!」
人魚っていやぁ、髪にヒトデの飾りをつけて、胸には貝殻貼り付けてるもんだろーが!
・・・ってのも、おれがガキの頃に読んだ絵本の受け売りだけどよ。
実際、目の前の人魚のガキも、頭にヒトデつけてるし!
「だって、リナ、貝殻つけるのも飽きちゃったしぃ・・・」
自分のことをリナと言うその人魚は、しっとりとしたオレンジの髪を指先でもてあそびながら、口を尖らせていたが・・・
パッと顔を輝かせた。
「じゃあさ、交換条件にしようよ!」
「はぁ!?」
「お兄ちゃんたちが、リナにピッタリの貝殻見つけてくれたら、この水着返してあげる!」
「おい、ちょっと待て! だぁら、その水着はもともと・・・」
言いかけたおれは、クレイに止められた。
「んだよ!」
「・・・ここで、機嫌を損ねられたら、ますます返してもらえなくなるぞ」
「う・・・た、確かに・・・くそっ、これだからガキは!」
ぎりぎりと歯を喰いしばるおれ。
クレイは、そんなおれにうなずき。岩の上のリナに微笑みかけた。
「わかった。じゃあ、おれたちがリナに似合うかわいい貝殻を探してあげるから。そしたら、その水着を返してくれるね?」
 
おれとクレイが砂浜を探すと・・・思ったより、貝殻は転がっていた。
「こんなによりどりみどりなのに・・・なにが不満だってんだよ!」
「いや、あの子もお年頃なんだろ」
「だぁぁ、なんでおめぇはそんなにフェミニストなんだ!」
「お、これなんかどうかな?」
「・・・」
人の話を聞けぇぇぇ!
ひょいとクレイが差し出したのは、真っ白で大きな二枚貝だった。
「うーん、悪かぁないが・・・ちょっと貸してみ」
きれいっちゃあ、きれいだが。
これじゃ、普通の貝殻だからな。
「女っつぅのは、花とかなんとかが好きだからな・・・これじゃ、ちょっとな・・・」
「貝殻に花がついてるのなんて、ないぞ」
ぼやくおれに、クレイが言わずもがなのことを言う。
「わぁってるって。そこをだな・・・」
おれは、砂浜に落ちている巻貝の中から、先が鋭く尖っていて、硬そうなのを選んで拾い上げた。
その巻貝の先端を、二枚貝の表面に当てて、花模様を描いていく。
「お、いけるいける」
二枚貝の表面は思ったより柔らかくて、金属じゃなくてもしっかりと模様を刻むことができた。
「へぇ、トラップ。お前やっぱり器用だな」
クレイが感心して見守る中、花模様つきの二枚貝ができあがった。
「よっしゃ、これでどうだ!」
それを、人魚の小娘リナのところへ持っていく。
「ええー、白? こないだつけてたのも、白だったのよ?」
不服そうに口を尖らせるリナに、おれはニヤリと笑ってやった。
「おめえなぁ、こいつぁ、とっておきの貝殻なんだぜ?」
「え? そうなの?」
つんとそっぽを向いていたリナが、ちょっと心を動かしたように、ちらりとこっちを見る。
「つけてごらんよ、リナ。きっときみに似合うと思うよ」
ここで大活躍なのは、やっぱりクレイの甘~いセリフだろ。
おれは、クレイに貝殻を託すと、一歩下がって見守ることにした。
・・・口を出したい気はヤマヤマだが、こんなところでこんなガキからかったって、面白くもなんともねぇ。
「そうかなぁ~」
リナは言いながらも、後ろを向いてがさがさと着替える。
「どう? かわいい?」
「すごいすごい! とってもリナに似合ってるよ」
クレイが手放しで褒めると、単純なリナは頬を少し染めて。
「ほんとー? ねえ、そっちのお兄ちゃんは?」
あろうことか、おれに話を振った!
「え? いやー、似合う、似合うって!」
「お兄ちゃん、目が泳いでるよ」
単純なくせに鋭いガキだ。
ったく、おれは得にならねぇようなおべっかは使えねえんだよ!
「いや、マジだって! ほれ、おれが、花柄つけてやったんだぜ?」
おれが必死で言いつくろうと、リナはすぐにそっちに興味を示した。
「花・・・あ、ほんとだ!」
「だろ? おめぇがかわいくなるように、サービスだ!」
「・・・それって、今までのリナが、かわいくなかったってこと?」
「ばっ・・・ばか、んなことないって! もっとかわいくなるようにだよ!」
「うふふ、そう? そうだよねー!」
リナはとたんに満面の笑みになると、嬉しそうに足(?)をばたばたさせた。
オンナって、オンナって・・・なんてメンドクセェ生き物なんだぁ!!
おれが頭の中で絶叫していると、満足そうに胸の貝殻を一撫でしたリナは、さっきまでつけていた水着を、おれたちに差し出した。
「じゃあ、この水着は返してあげる!」
ぽいと放り投げられた水着を、おれは反射的にキャッチした。
やれやれ、これでやーっと、あいつのとこへ戻れるってか。
ったく、ルタに構ってばかりかと思ったら、次は溺れて人魚に水着盗られるとか、冗談じゃないっつーの。
そこでおれは、ハタと気づいた。
キャッチして、おれの手に握りしめられている、それ。
・・・小娘リナはともかく・・・その前は、パステルが、これ付けてたんだっけ・・・
「ク、ク、クレイ! とっとと戻るぞ!」
おれは、真っ赤な顔を見られないように、海へドプンと飛び込んだ。
 
はぁ? なんだって?
重要なことを言ってないって?
・・・なんだよ、おめーには関係ねーだろ。
ああ、ああ、わぁったよ!
見てねぇって!! 
そりゃ、人魚に引っ張られて、水着盗られて・・・溺れかけたあいつを助けたのはおれだけど。
見てねぇって、なんも!!!
おれはな、そこまで卑怯モンでも、ズルくもねえからな!
欲しい女のハダカぐらい、自分で手に入れるんだよ!
 
 
結局、おれとクレイが水着を取り返して、パーティの連中が待つ浜辺に戻れたのは、海風に涼しさが混じるような時間だった。
おれが仏頂面でずい、と差し出す水着を、パステルは大喜びで受け取った。
「うわぁー、ありがとう! よかったぁ、リタからの借り物だし、どうしようかと思ってたんだ!」
大事そうに水着をしまうパステルの横で、真っ赤に日焼けしてしまったルタが呟く。
「いいなぁ、ぼくも、人魚会いたかった」
「けっ、あんな小娘、ロクなもんじゃねぇよ!」
口をへの字にするおれを、クレイが笑った。
「そんなこと言ったってトラップ、カワイイカワイイって褒めてたじゃないか」
「あんなもん、ウソに決まってんだろ!」
「そうだったのか? コドモだけど、かわいかったじゃないか」
「あほー!」
クレイを小突きまくっていると、パステルが大きなタオルを持ってきた。
「残念だったな、たいして泳げなくて」
それを受け取って言うと、パステルはにっこりと笑った。
「ううん、いいの。ほら、ルーミィやルタと一緒に、砂のお城作ったりしたのよ!」
指差す先には、立派な砂の城がそびえたっている。
パステルやルタが作ったと思われる塔の部分、ルーミィがこねくり回したと思われる中庭の部分・・・ところどころ、シロのものらしい足跡がつけられている。
「そっか」
一緒に過ごせなかったのは、残念だけど。
こいつが楽しめたんなら、ま、それでもいっか。
「どうしたの? トラップ」
砂の城を見て、思わずふっと笑みをもらしたおれを、パステルが覗き込む。
「いや、なんでもねぇよ」
また、来ような。
おれは、口の中でだけ呟いて、パステルの頭を軽く小突いた。
 
濡れた体に、タオルを羽織る。
パステルの持ってきたタオルには、まだ陽射しのニオイが残っていて。
夕暮れの海風でぐんぐん冷えていくおれの体を、じんわりと温めてくれた。
 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 



あとがき

リク主のアヤカさん、そして皆様、お待たせいたしました。
パステルビキニです。
パステルがならず者にナンパされるという展開も、考えないでもなかったのですが・・・ちょっと冒険者らしくしてみました。
人工呼吸含め、それはまたの機会に。
今回は、ルタのかわいさクローズアップ。
やっぱり、正直なところ、他ではまってるものの影響がものすごく出ます。

妙に今回クレイのセリフが多い・・・珍しいなぁ、わたしにしては。
オレンジの髪のコドモ人魚リナは、元ネタ分かる人もいるかもしれませんね。分かった人はご一報ください(笑)
 
おべっかという言葉を使いましたが、通じますかね?
お世辞っていう言葉遣いは、あんまりトラップに似合わない気がしたので、こうしてみたんですが。
お世辞をいうとか、ご機嫌をとるとか、そういった意味です。
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プラグイン

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ただいまキリリク停止中

はじめに

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公式各所とは一切関係ございません。

無断転載などはやめてください。

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プロフィール

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まいむ
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女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
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