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まいむのFQ二次創作

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“らしく”いきましょ!~13000キリリク~

ブラックドラゴン、JBの元でお手伝いをしているコボルドが、パステルたちのところへやってきた!
なんでも、JBの様子がおかしくなってしまったという。
急いで彼のダンジョンへ向かうパステルたちだったが、そこには、近隣の村から通報を受けたエベリン特別警備隊の姿があって・・・

※ギアがダシになってます。ご注意ください。






    「ほい、どーっちだ!」
「ええと、ええと、じゃあ・・・」
「こっちデシよ、ルーミィしゃん」
「だぁぁ、シロ! おめーは百発百中なんだから、答えんな!」
もぉぉぉ、集中できないじゃない!
わたしは、思わずペンを握りしめた。
わたしが原稿書いてると、いっつもいつのまにかトラップがやってくるのよね。
昼寝しに来るときはまだマシ。今日みたいに、ルーミィとシロちゃんをからかいだすと、うるさくてしょうがない。
今日は、ダイスがどっちの手にあるかを当てるゲームをしてるみたい。
ま、二人の相手してくれるのは助かるんだけどさ・・・
 
「じゃあ、こっち!」
「ブブー、はずれ! こっちでしたー!・・・って、おろ?」
トラップが、おかしな声を出した。
どうしたんだろ? 気になって、わたしも振り向く。
「割れちゃってるデシ」
みんなでトラップの手の中を覗き込むと。六面ダイス・・・いわゆるサイコロね・・・が、真っ二つに割れていた。
ものの見事に割れちゃって。まるで、よく切れる剣でスパッとやったみたい。
「うわー。なんかイヤな感じね。不吉・・・」
わたしが言いかけると、トラップに思い切り頭を小突かれた。
「バカ、変なこと言うんじゃねー。たまたまだよ、たまたま!」
「ううう、痛いなぁ」
わたしは、頭を押さえてトラップを睨みつけた。
現実主義のトラップは、ジンクスとか、前触れとか、そういうことを信じないんだよね。
でも・・・さすがにこれは、ちょっと気味が悪いようだった。すっかり青ざめた顔で、割れたダイスの表面を撫でている。
みんなが、黙りこくってしまったそのとき。
外から、大きな声がした。
「みなさーん、パステルさーん! いらっしゃいませんかー!」
 
窓から外を見ると・・・なんと、そこにいたのは。
ふさふさした耳とシッポ。イヌのような外見をした、コボルドだったの!
「もしかして、JBのところの!? どうかしたのー?」
覚えてるかな? ホーキンス山に住むゲーム好きのブラックドラゴン、JBのところでお手伝いをしてるのが、コボルドたちなんだよね。
わたしたちの知り合いのコボルドっていったら、彼らしかいない。
「パステルさん! よかった、助けてください! ご主人さまが、ご主人さまが・・・」
彼は、わたしを見るなり、飛び上がって手を振った。
「なんだなんだぁ?」
私の横から、トラップも顔を出す。
ルーミィやシロちゃんも、心配そうだ。
コボルドくんは、大きく息をつくと、一気に叫んだ。
「ご主人さまが、おかしくなってしまわれたんですぅー!!」
 
JB。
もう一度、彼について説明しておきましょう。
以前、クレイが魔女にオームにされてしまった事件。そのときに、クレイを元の姿に戻すために魔女から出された条件が・・・忘れられた村の忘れられたスープだった。
そのスープの材料として必要だったのが、ブラックドラゴンの額の毛10本だったのよね。
それを手に入れるために、ブラックドラゴンに挑んだわたしたちだったんだけど・・・凶悪無比と思っていた彼は、ただの(!?)ゲーム好きのおじさんで。しかも、のちのち、戦うのは苦手であることまで判明しちゃったんだ。
会うたびに、わたしたちをゲームに付き合わせる・・・負けず嫌いで短気だけど、決して憎めないブラックドラゴン・・・
そんな彼が、おかしくなった!?
 
この・・・ジョンと名乗ったコボルドくんが言うには。
何日か前に、JBの元を尋ねて、いろいろモノを売っていった行商人がいたんだそうな。
その行商人が売っていった、運のよくなる薬というのを飲んでから・・・
JBの様子が、おかしくなってしまったというの。
「おかしくなったって・・・いったい、どんなふうに?」
腕組みをしたクレイがジョンに尋ねると、ジョンは耳を伏せて、うつむいてしまった。
「あれほど大好きだったゲームをなさらず、毎日ドラゴンのお姿に戻られては、あちこち飛び回っておられるのです。どうも、近くの村や町の上を飛んでは、脅かしておられるようで・・・」
「あのオッサンがゲームしなくなったってのは、確かにおかしいな」
トラップぅ、本人の前じゃ、オッサンとか言っちゃだめよ。
でも、でも、そんなことより・・・
「その、行商人って言うのが怪しいですね」
キットンの、前髪に隠れた目がキラリと光ったような気がした。
「うん、わたしもそう思う」
「ああ、嫌な予感がするな」
「もしかすると・・・もしかしちゃうわけ?」
顔を見合わせるわたしたち。
間違いないと思う。
謎の行商人・・・城のタネをサバドの村長さんに売ったり、クレイの元許婚サラにヨウグス蛾の燐粉を送りつけたり、ノルの生まれ故郷ではギャミラ像によって妹メルが行方不明になったし・・・
わたしたちのまわりで、いろいろとメンドクサイことを引き起こしてる、謎の人物だ。
ジョンは、不安そうにわたしたちを見ている。
「・・・その行商人って、どんなヤツだったか覚えてるか?」
ノルが、つぶらな瞳をいっぱいに見開いて聞くと、ジョンはきっぱりとうなずいたのだった。
「覚えてますです! 黒いフードを目深に被った、怪しいヤツでした!」
 
 
わたしたちは、取るものも取りあえず、ホーキンス山にあるJBのダンジョンへと向かった。
だってだって・・・どう考えても、わたしたちを付け狙っている、謎の行商人の仕業としか思えないんだもの。
JB・・・まさか、彼まで!
しかし、原因が“運のよくなる薬”っていうのが、情けないけど。
ジョンも一緒に、シロちゃんの背中に乗って・・・ダンジョンの入り口近くに到着した。
「あれ?」
目のいいノルが、下を見下ろして、首をかしげる。
そこでわたしたちを見上げていたのは、思いもしない人たちだった。
う、うそ、うそでしょ!?
弁髪に結った、異国風の格好の戦士、ダンシング・シミターと・・・
黒ずくめで、長めの黒髪を風になびかせるその人は・・・
ギア・・・ギア・リンゼイだ。
「なんでこんなとこで、あいつに会わなきゃなんねぇんだ?」
ギアの姿を認めたとたんに、ぶすっとしてしまったトラップが呟く。
一緒に冒険してたときもそうだし、ついこないだ、エベリンの火祭りで会ったときもそうだったけど・・・トラップは、ギアのことがあまり好きじゃないみたい。
わたし? わたしは・・・複雑かな。
プロポーズされたときは、どきどきもしたし、優しく守ってくれるギアをかっこいいとは思ったけど。断った以上、どう接したらいいのかわからないっていうのが、正直なところかも。
でも、シロちゃんから降りたわたしたちに駆け寄ってきたギアは、なんの屈託もなさそうだった。
「久しぶりだな、どうしたんだい、パステル」
「どうしたもこうしたも・・・ギアこそ、どうしてこんなところに?」
親しげにわたしの肩に手を置くギアから、一歩体を引く。
ギアは、一瞬ふっと笑うと、ダンシング・シミターを振り返った。
「おれたちが、エベリンで特別警備隊をやってる話は知ってるね?」
「ええ、ジュン・ケイから聞いたわ」
「ちょっと、そこに通報が入ったんだよ。このあたりで、ブラックドラゴンが暴れてるって」
わたしたちは、そのギアの言葉に、思わず顔を見合わせた。
「わたしたちも、このジョンからそれを聞いて・・・慌てて来たのよ」
「お前らが? お前らが、ブラックドラゴンをどうこうしようっていうのか?」
ダンシング・シミターが話に割り込んできた。
最初はわたしたちと敵対していたシミター使いの傭兵、ダンシング・シミター。でも、キスキンでのクエストを終えて以来、ギアとコンビを組んで、エベリンの特別警備隊に加わっている。
「ちげぇよ! おめぇらが言ってるブラックドラゴンってのはな、JBつって・・・おれらの、知りあいっつぅか、馴染みなんだよ」
「そうだお、じぇいびー、いっしょにゲームすうんだお! おともらちだお!」
憤然と抗議するトラップに、ルーミィが加勢する。
「ブラックドラゴンが、馴染み・・・」
「ゲーム・・・?」
ギアとダンシング・シミターはキョトンと顔を見合わせた。
ははは、そりゃ、信じられないよね!
当のわたしたちだって、まさかブラックドラゴンとゲーム友達だなんて、未だにおかしいと思うもん。
「そうなんですよ。それで、JBのところでお手伝いをしてるこのコボルドが、JBがおかしくなったから助けてくれって、わたしたちのところに、言いにきてくれたんです」
キットンが、わたしたちの後ろで縮こまっていたジョンを前に押し出して、言う。
わたしも、ギアを見上げて言った。
「JBは、人を襲ったり、暴れたりするようなドラゴンじゃないんです! 謎の行商人に変な薬を盛られて・・・ちょっとおかしくなってるだけなんだと思うの」
「しかし、実際通報があったわけだしな」
ダンシング・シミターが、剃りあげた頭を撫でながら、困ったように呟く。
それを聞いて、トラップがさっと顔色を変えた。
「もしかして、おめぇら、JBを・・・」
「いや、今回はとりあえず様子見のつもりだが・・・怪我人もまだ出ていないみたいだし」
慌てて弁解するギア。
でも、それって・・・とりあえず、なわけでしょ?
「ま、状況によっちゃあ、エベリンの本部から討伐隊が出されるわな」
「そ、そんなぁ!」
ダンシング・シミターの言葉に、わたしは思わず叫んだ。
討伐隊!?
わたしの頭に、ギアやダンシング・シミター、ジュン・ケイみたいな強そうなファイターがJBを取り囲んでいる図が浮かぶ。
息を飲んだクレイが、さっと前に出た。背が高いから、ギアたちと向き合っても、迫力は劣らない。
「待ってください。ひとまずは、おれたちに任せてもらえませんか?」
「それは・・・危険すぎる。そのコボルドも言ってるんだろう? 様子がおかしいって」
「仮にもブラックドラゴンだ、お前たちみたいなガキじゃ、どうにもならんだろ」
「だめよ! JBは、大事な友達なのよ! もし、もしギアが・・・JBをどうこうするっていうなら、わたし、あなたと戦うわ!」
クレイの隣で、わたしがショートソードの柄に手をかけて叫ぶと、ギアは目を丸くした。
たはは、そりゃそうだよね!
思わず言っちゃったけど、ギアと戦って、勝てるわけもないし。
言ってしまってから赤面するわたしの肩に、ぽんと手を置いたのは、トラップだった。
「ま、それくらいの気持ちだってことだよ、おれらは」
「そうですそうです。とりあえず様子を見に行くだけなら、我々に任せてもらえませんかね?」
ギアとダンシング・シミターは、そんなわたしたちを不思議そうに見ていたけど・・・やがて、仕方なさそうにうなずいた。
「わかった。ただ、君たちだけじゃ、心配だからね。同行はさせてもらう」
 
ジョンの案内で、JBの部屋への抜け道を辿る。
真っ暗なダンジョンの中を、ポタカンの明かりだけで歩きながら・・・わたしは、JBのことを考えていた。
ゲーム好きで、負けず嫌いで、でも寂しがりやなブラックドラゴン・・・
ゲーム中はもちろん人の姿だけど、最初に会ったときは、ドラゴンの姿で。ものすごく迫力があって、恐かった。
そんな彼が、本気でわたしたちと戦おうと思ったら・・・たぶん、わたしたちなんて、ひとたまりもないだろう。
どうすればいいの!?
JBを傷つけるわけにもいかないし、かといって何か方法があるわけじゃないし・・・
考え考えしながら、歩いていると。
「う、うわわわっ!」
不安定な地面に、つまづいてしまった。
「パステル、大丈夫か?」
さっとギアがわたしを支えてくれた。
しっかりとした腕に抱かれるように支えられて、思わずドキドキする。
「だ、大丈夫!」
ぱっと離れると、おかしそうに口元をゆるめるギアの向こうに、不機嫌そうなトラップが見えた。
そうだったそうだった、火祭りのときにも、あまりギアに気をもたせるなってことを、言われたんだよね。
「ほら、おれに掴まって歩くといい」
「ううん、平気。怪我してるわけじゃないもの、ひとりで歩くわ」
わたしがきっぱりと断ると、ちょっと驚いたようにわたしを見つめていたギア。
優しく笑って、こう言った。
「パステル、さっきも思ったんだけど。しばらく会わないうちに、ずいぶんと強くなったね」
「ええ? 強くなった?」
「うん、強くなったっていうか・・・しっかりしてきたな。おれが一緒にいたときは、守ってあげなくちゃって感じだったから」
「そ、そうかな・・・?」
「おれは、甘やかしすぎてたのかもしれないな」
そう言って、ギアは意味ありげに、トラップのほうをチラッと見た。
トラップが、どうかしたのかな?
わたしもトラップのほうに目を向けたけど・・・彼は、そっぽを向いたまま、何も言わずに歩き続けていた。
 
重々しい、大きな両開きの扉。
「・・・行くぞ」
ゴクリと喉を鳴らして、ロングソードを構えたクレイがわたしたちに言う。
わたしもショートソードを抜いてはいたけど、もちろんJBを傷つけるわけにはいかない・・・
わたしたちと話をすれば、もしかしたらJBが正気に戻ってくれるかもしれない、その可能性にかけて、とりあえず会ってみることにしたんだ。
緊張してるのか、さっきから耳もシッポもショボンと垂れ下がりっぱなしのジョンが、恐る恐る扉を開ける。
ぎぃぃぃ・・・
きしみながら開く扉の向こうには、黒々とした大きな大きな、ブラックドラゴンとしてのJBが、寝そべっていた。
『なんだ、お前たちは』
ビリビリと部屋に響く、その、低い声の迫力と言ったら!
わたしたちは、きゅーっと縮こまってしまった。
『わしの邪魔をしにきたのか』
いやいや、恐がってる場合じゃないんだよね。
「JB! わたしです、パステル・G・キングです!」
勇気を出して叫ぶけど、JBの表情(?)に変化は見られない。
ググッと長い首をもたげて、わたしたちを見下ろしている。
そして・・・その首を、ぶんっと振った!
「きゃぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!」
ものすごい圧力!
わたしたちは、ばらばらに散って逃げ回る!
『ふふ・・・ふははははは!』
首を振ったり、体を揺すってみたりしながら、JBは笑っている。
しかし、どうも・・・直接毒のブレスで攻撃しようとか、その鋭いツメをふるおうとか、そういうつもりはないみたいに見えるのよね。
少しでも、JBの意識が、残ってるんじゃないかな・・・?
わたしは、その思い付きを、キットンに話した。
もちろん、必死で逃げ回りながらね。
すると、キットンもやっぱりそう思ってたみたいで。
「はいはい、そうだと思いますよ。仮にも、名高いブラックドラゴンですからね。そんなにやすやすと、そこいらの薬で操りきれるとは思えませんし」
「じゃあ・・・例えば、ショックを与えるとか!」
「そうですねぇ、でも、我々が与えられるショックって言っても、たかが知れてますし・・・」
わたしたちが顔を寄せ合って相談をしていると、急にどんと突き飛ばされた。
「きゃぁぁ!」
「うぎゃぁぁあ!」
そして、そのままの勢いで床を転がり、何かにぶつかって止まった。
はっとしてみると、JBの大きなツメを剣で支える、ギアとダンシング・シミターの背中があった。
「ギアー!」
向こう側では、クレイとノルが、牽制するように武器を振り回している。
うそ、やっぱり、攻撃する気になっちゃったの!?
思わず叫んで起き上がろうとすると、後ろから羽交い絞めにされた。
「ばかか、おめぇ!」
ばしっと頭を叩かれて振り返ると、トラップが。
何かにぶつかったと思ってたんだけど。そっか、トラップが抱きとめてくれたみたい。
「キットン、おめぇもだ! なにぼけっとしてたんだよ!」
「違うの、JBを、元に戻す方法を考えてたのよ。傷つけずに、ショックを与える方法を!」
わたしが、トラップの腕を振り払いながら言うと、トラップはぽかんと口を開けた。
「ショックだぁ? 悪口言うとか?」
「そうじゃなくて・・・」
「いやいやパステル、そういうことでもいいと思うんですよ。奥のほうにしまいこまれてしまっている、JBの素の感情を呼び戻せば、いいんですからね」
わたしとトラップが言っていると、向こうのほうに転がっていたキットンが這ってやってきた。
「素の感情を、呼び戻す・・・?」
呟いたわたしの横で、トラップがはっとしたように懐に手を入れた。
「わかった! これでいこうぜ!」
「あれ、それ・・・割れたんじゃなかったの?」
「こんな大事なもん、そのままにしておけるかよ。くっつけといたんだよ!」
トラップのその手にあったのは、ここに来る前に割れたはずの、サイコロだった・・・!
 
 
いったん、コボルドたちが隠れているという小部屋に避難したわたしたち。
トラップの案を、みんなに話した。
「なるほど、ルーミィのストップで、JBの動きをとめて、そこをぐるぐる巻きにして動けないようにするんだな」
「そそ、んで、ヤツの目の前で、おれらはゲームで盛り上がるんだよ! そしたらヤツのことだ、絶対わしも混ぜろーとかなんとか言って、目ぇ覚ますに決まってる!」
「そうよ、ブラックドラゴンって言ったって、あのJBだもん! 目の前でゲームしてたら、きっと自分を取り戻してくれるわ!」
目を閉じて、しばらく考えていたクレイ。
やがて、ぱっと目を開くと、ニヤリと笑ってリーダーらしく宣言した。
「よし、じゃあ、それでいこう! 何か・・・ロープやヒモでもなんでもいい、縛れるものを用意しないとな」
クレイの言葉に、コボルドたちが一斉に部屋中に散っていき、シーツやタオルを引っ張り出してきた。
ノルがそれを裂くと、裂いた布地を縒り合わせて、手際よくヒモを作っていく。
キットンも、フォローアップドリンク(キットン族のダンジョンで使ったこともある、魔力を増幅させるマジックアイテムなんだ)を用意してたし、ルーミィもメモを出してやる気満々だ。シロちゃんが、そんなルーミィを励ましている。
「んじゃ、おれたちは、ゲームのルールでも考えるか」
床に座り込んだトラップが、わたしを手招きした。
トラップの前に座ろうとすると・・・ギアに、腕をつかまれた。
中腰のまま、ギアを見上げる。
彼と、ダンシング・シミターは・・・呆れたような、でもとても厳しい顔をしていた。
「きみたちは、そんな方法で、うまくいくと思ってるのか?」
トラップが、色めきたって立ち上がる。
「そんな方法って、なんだよ! 文句あんのか?」
「文句とか、そういう問題じゃない。命がかかってるんだ。そんな急ごしらえのヒモで、ブラックドラゴンの動きをとめておけるのか? ルーミィちゃんのストップが、あんな大きなドラゴンに効くのか? そもそも、そんな方法で、本当にドラゴンの意識が戻るのか?」
一気にまくしたてるギアを、わたしとトラップは呆然と見つめてしまった。
いやまぁ、そりゃそうなんですけど。
そんな当たり前のことを、今さら言われるとは思ってなかったんだな!
真剣なギアとダンシング・シミターがおかしくて、思わずトラップと顔を見合わせて、吹きだしてしまった。
 「初めっからわかってるっつーの、そんなこと!」
 「そうそう、でもほら、やってみないとわかんないしね!」
 笑い出したわたしたちを、今度はギアたちが呆然と見つめる。
 わたしは、ふたりに笑いかけた。
「でも、わたしたち、いっつもこんな感じでやってるんです」
トラップも、ニヤリと笑って言った。
「そそ、冒険者らしくなくて悪りーけどよ!」
「頼りなくてカッコ悪いかもしれないけど・・・これが、わたしたちパーティのやりかたなんだ!」
 
さて、いよいよ実行に移すとき!
「いーい、ルーミィ。扉を開けたら、すぐストップかけるのよ。相手の名前は、JBだからね」
念を押すわたしの肩を、ノルがぽんぽんと叩いた。
「パステル、JBは、呼び名。本当の名前は、ジェローム・ブリリアント・3世」
「・・・ああ~、そうだっけ」
「じぇおーむ・ぶいいあんと・さんしぇー?」
ルーミィは、眉毛をぽよんと下げると、首をかしげてわたしたちを見上げる。
その頼りない復唱に、どっと不安が押し寄せる。
うう・・・いつかも似たようなこと、あったよなぁ。
がっくり肩を落としたクレイが、ルーミィのシルバーブロンドを撫でて、言った。
「・・・ルーミィ、ブラックドラゴンにしよう。相手の名前は、ブラックドラゴンだ」
「わかったお! ぶあっくどあごーん!」
扉に手をかけたトラップが、あきれたようにわたしたちを振り返っている。
「おい、大丈夫かよ? 開けるぞ!」
「オッケー!」
ぎぎぃ・・・と扉が開く。
その向こうにうずくまっているJBは、まるでわたしたちが出てくるのを待っていたかのように、大きく口を開いて構えていた。
そこに、フォローアップドリンクでパワーアップした、ルーミィのストップが炸裂する!
「ヨメダヤチイ・ゴウモテシ・タイタイ・デンロコガン・サマルーダ・・・ブラックドラゴン!!」
ぷわぁーっとキラキラしたものがロッドからほとばしって・・・ブラックドラゴンを覆う。
そのキラキラがおさまった後には・・・カッと口を開けたまま、大きな大きなドラゴンの彫像になっていた。
やったやった、大成功!
「いまだっ、ものども、かかれー!」
トラップの号令で、わたしたちとコボルドたちは、一斉にJBの体に急ごしらえのロープを巻きつけていく。
もちろん、ギアとダンシング・シミターも一緒だ。
「なぁ、おい、この鱗って、高く売れるんだよな」
ダンシング・シミターがぼそっと呟くので、わたしは睨みつけてやった。
まったく、トラップみたいなこと言うんだから!
と思ってみると、せっせとロープを巻きつけるコボルドたちの向こうで、トラップが一生懸命ウロコに爪を立てている。
「こら、トラップ! あなた何してるのよ!」
「ひぇー、パステルちゃん、千里眼!」
「ばかものぉー! あんたの考えてることくらい、お見通しよ!」
そんなこんなしながら、ようやくがんじがらめにし終わったところで・・・JBの巨体が、ぶるぶるっと震えた。
ストップが解けたんだ!
あわてて飛び降りるわたしたち。
『むむ! むーむむむ、うむむむー!』
へへ、ブレスだって噴けないように、口も縛っちゃったもんねー!
ゆさゆさと巨体を揺すってはいるけど、つなぎ合わせたロープをほどけないでいる。
うなるJBを放っておいて、わたしたちは車座になって座り込む。
念のため、ギアとダンシング・シミターは、剣を構えたまま、わたしたちのそばに立ってくれた。
トラップが取り出したサイコロ・・・これを順番に振っていって、その数字を足していく。21に一番近づけた人が、勝ちっていう、単純なゲームだ。
ほら、カードで、ブラックジャックってあるでしょ? あれのサイコロ版だと思ってもらえば、いいと思う。
「よっしゃ、どうせゲームすんなら、罰ゲーム有りにしようぜ!」
「えええ!?」
「一番21に近いやつが、一番遠いやつに何でも命令していいってのは、どうだ!?」
「そんなこと言ってトラップ、イカサマはなしですよ?」
「こんな単純なゲームで、イカサマができるかよ! いくぜ、それっ!」
トラップが出したのは、5!
「なかなかいい数字だな。じゃ、おれは・・・げげ、1か・・・」
あはは、さすが不幸のクレイ!
「ルーミィ、4!」
「ボク、6デシ!」
「おれも、6だ」
「わたしは5ですねぇ」
みんなが次々とサイコロを振っていくのを、わたしは、マッピングのノートにそれを書きとめていった。
「じゃ、わたしは・・・えーん、2!」
そんなこんなで、ついに4周目にさしかかった。
今のところ、トラップとシロちゃんが20でトップ。このふたりは、もうこれ以上サイコロを振るつもりはないらしい。
そのあとをノル、ルーミィ、キットンが追い・・・あとは、わたしとクレイ!!
うう、今わたしが17だから・・・4を出せばジャストで勝ちなんだけどなぁ。
5や6だったら、アウトだ。
「へっへっへっ・・・さあて、どちらさまが罰ゲームかなぁ~」
ヨダレを垂らさんばかりのニヤニヤ顔で、トラップが揉み手をする。
ううう・・・シロちゃんならともかく、トラップの命令となると・・・何言われるかわかんないぞ!
これは、負けられない!
そう思ったのは、クレイも同じようで。
「くっそぉぉぉ、ここで、負けるわけには!」
「わたしだって!」
サイコロをはさんで、クレイと睨みあう。
「よし、じゃ、おれから!」
意を決したクレイがそう言って、サイコロを取り上げようとしたときだった!
ぶちぶちぶちっと、ロープが切れる音とともに・・・JBの物凄い叫び声が、部屋にこだました!
「ま、ま、ま、待ちたまい! わしも、混ぜんか! わしも!」
 
いやー、ビックリしたのなんの。
ゲームに夢中になるあまり、ここがどこかっていうのも、なんのためにゲームしてるのかも、すっかり忘れちゃってたのよね!
みんなして、5センチは飛び上がった。
「なんでわしだけ仲間はずれにするんだ! おい、わしの順番はどこだ! 早くそのサイコロをよこさんか!」
おおお、大成功!
これがいつものJBじゃないはずがない!
でも、ブラックドラゴン姿のままで、まるで駄々っ子のように足踏みを始めたからかなわない。
ずしんずしんと部屋が揺れる!
「うわわわ、JB! 落ち着いてください!」
「とりあえず、人の形に戻ってぇ」
わたしたちの叫びに、動きを止めたJB。自分のブラックドラゴン姿を不思議そうに見ると、スルスルッと見慣れた人型に戻った。
すかさずジョンが駆け寄ってきて、派手派手マントをさっと掛ける。その様子は、とても嬉しそう!
マントを羽織ったJBは、嬉々としてわたしたちの輪に割り込んでくる。
「さあさあ、ルールをわしにも教えたまい。六面ダイスを振るのか、どれどれ?」
ニコニコと満面の笑み(それはそれで・・・恐いんだけど)でわたしたちの顔を見渡すJB。
「JB・・・何も、覚えてないんですか?」
恐る恐るわたしが尋ねると、さっそくサイコロに手を出していたJBは、首をかしげた。
「なんのことだ? おお、そういえば・・・お前たち、いつ来たんだ?」
「えーと、それはですね・・・かくかくしかじかでして」
クレイが、代表してJBに説明をする。
それを聞いたJBは、真っ黒い額にみるみるうちに太いスジを立てて、怒り出した!
ひえー、こ、恐い!
「なんと! このわしが、本来の姿で暴れまわっておったというのか!」
「そうなんです。ジョンの話だと・・・運のよくなる薬を飲んでからだという話でしたが」
「ウ、ウム。黒いフードを被った男がやってきてだな、これはオススメだからと置いていったのだ」
恥ずかしそうに咳払いをして、JBが言う。
「いや、すっかりだまされた! そうか、悪い薬だったのだな・・・」
すっかり落ち込んでしまったJB。
「いえ、JBが悪いのではなく・・・」
「ま、ともかくこれで一件落着だな」
JBを慰めているクレイそっちのけで、トラップが、大きくあくびをした。
「うん・・・でも、あの行商人は、一体わたしたちをどうしようっていうんだろうね」
「まだ、何かありそうだ」
「トラップ、やっぱりあなたのせいなんじゃないですか?」
「だぁぁ、ちげぇって!」
わたしたちが腕組みをして考え込んでいると・・・
「なんだなんだ、おい、ゲームの続きはやらんのか!?」
しびれを切らしたように、JBが叫んだ。
 
 
結局、その日は帰らせてくれるはずもなく。
・・・ギアたちも含め、夜通しゲームに付き合わされることになったのだった。
 
そして次の朝。
シロちゃんで帰ろうとするわたしたちを、ギアとダンシング・シミターが見送ってくれた。
「エベリンまでくらいだったら、シロちゃんに乗って行ったほうが早いのに」
「いや、おれたちは遠慮しておくよ」
「空飛んでくなんて、冗談じゃない!」
肩をすくめるふたり。
「そう・・・」
呟くと、ギアはわたしの肩にそっと手を置いた。
そして、わたしの顔を覗き込む。
「パステルは、会うたびに成長していくね。おれにはそれが・・・眩しいよ」
ギアの顔が近くて、どきどきする。
キスされたときの記憶がよみがえって・・・
や、だめだめ!
わたしの顔に血がのぼる。
そんなわたしをじっと見つめて、ギアは囁くように言う。
「あきらめるとか、あきらめないとか、言いたくはないけど・・・」
「おーい、パステルー! とっとと乗れよ! おいてくぞ!」
トラップに呼ばれて振り返ると。
もうみんなシートベルト代わりのシロちゃんの毛を巻きつけて、スタンバイしている。
「ひどーい、ちょっと待ってよー!」
もう、ギアと話をしてるのに!
でも彼は、そんなわたしの様子を見て、優しく笑った。
「きみに必要なのは、ボディガードじゃないみたいだからね」
え? 
どういう意味?
きょとんとしたわたしを、ギアはぐいと半回転させた。
「さ、また会える日を楽しみにしてるよ」
言って、背中をぽんと押される。
??? なんだったんだろ?
でも、ま、いっか!
わたしは、一瞬だけギアを振り返って。
笑って手を振った。
「うん、またね!」
にっこりと手を振り返してくれるギア。
軽く手を挙げてニヒルに笑うダンシング・シミター。
何人か、コボルドたちも見送りに出てくれて、一生懸命手を振ってくれる。
 
シロちゃんの足元に駆け寄ったわたしを、トラップが引っ張り上げてくれた。
「なんの話してたんだよ?」
「ん? なんでもないよ? またねって、言ってただけ」
シロちゃんの毛を結んで、みんなに合図する。
「おまたせ!」
 
そして、わたしたちパーティは、シロちゃんと共に大空へ飛び立った。
我が家のある、シルバーリーブを目指して・・・


 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



あとがき
 
 くろまるさん、お待たせしてほんとうにすみません!
 13000のキリリクでございます。
 ギアと再会して・・・さてどうなるかといえば、こうなってみました。
 トラパス要素があまりないですねぇ。罰ゲームまでさせると、本筋から離れすぎてしまうので、自重しました。
 パステルの成長イコール、トラップのおかげということで、お許しください。
 あまり必要のなかったダンシング・シミターですが・・・彼を、DSと呼ぶか呼ばないかで迷いました(笑) 

 あまりまとまりのない話になってしまった、と反省。
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公式各所とは一切関係ございません。

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性別:
女性
自己紹介:
中学生の時にフォーチュンクエストにはまり、一時期手放していたものの、最近になって改めて全巻買い揃え・・・ついには二次創作まで始めてしまいました。まだ未熟ですが、自分の妄想を補完するためにも、がんがん書いていきたいと思ってます。
温かく見守ってくださる読者様募集中です。

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